とある3年4組の卑怯者
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150 下克上
前書き
小学生スケート全国大会の日が訪れた。藤木は大串に心をかき乱されながらも瓜原や美葡、黄花らと健闘を祈り、大会に臨む。そして開会式が行われた!!
みどりはある準備をしていた。準備とは堀と共に入院している藤木の友人の見舞いに行く準備だった。みどりは藤木の事を考えていた。
(そういえば今日、全国大会の日ですね・・・。藤木さん、頑張ってください・・・)
みどりは藤木は絶対に負けはしないと信じていた。地区大会で藤木の演技を見た時、素晴らしいものだったのだから。
(それにしても、藤木のお友達ってどんな方なのかしら・・・?まる子さんもたまえさんでもなかったし・・・。そういえば堀さんへの手紙に名前があったわね・・・。何て名前だったっかしら?)
みどりは名前を忘れてしまったため、改めて堀に名前を聞く事にした。
大会の開会式を終え、藤木は控室に戻った。大会は開会式の後、15分の休憩を経て男子の部から行われることになっていた。藤木は退場中、古宮と顔を合わせた。
「藤木君」
「古宮さん・・・」
「頑張ってな。おりはリハーサルの時に見たあの演技もう一度見たいんだ」
「はい、頑張ります!!」
リリィの頭の中は藤木の勝利を願う事ばかりだった。その時、花輪が話しかけた。
「Hey、君はそれほど藤木クンを応援してるんだね、baby」
「うん・・・。だって藤木君の氷滑りしてる姿、カッコいいし、それに藤木君に目標達成してほしいからね・・・。あ、で、でも・・・」
リリィは顔を赤くした。
「花輪クンの事も好きよ・・・」
「え・・・、ああ、thank you」
その時、みぎわが話に入り込んできた。
「ちょっと、花輪クンは渡さないっていってるでしょ!!フンッ!!」
「う・・・」
「花輪クンと結ばれるのは私って決まってるのよ!!フンッ!!そうよね、花輪くう~ん」
「み、みぎわクン、離れたまえ・・・」
花輪はみぎわから遠ざかろうとした。しかし、みぎわはそれでも花輪から離れようとはしなかった。
「あ、待ってえ~、花輪くう~ん」
男子の部が始まった。藤木は最後から二番目のため、しばらくは控室で出番を待っていた。しかし、これまでと異なり、一人の出場者の演技が終わる毎に得点が表示されるのだ。つまり、演技を終えた時点で一喜一憂しやすいのである。最初に演技をする関東大会の銅賞の男子が呼ばれてリンクに向かった。その男子が滑り出す。その男子が滑り終わると、今度は九州の銅賞者、北海道の銅賞者と続いた。
そして次は吉岡の番となった。藤木は誘導係によってリンクへと向かう吉岡の顔を見た。吉岡には自分や佐野を超えるという眼差しが藤木には感じられた。
(吉岡君・・・。リベンジに溢れた顔をしている・・・)
そうだろう。誰だって地方の大会で上位の得点だった者に対してさらなる高得点の結果で終わらせたいという気持ちはあるだろう。近畿大会で瓜原に負けて悔しがっていた住吉も超えようとするだろうし、黄花も関東大会で自分より評価が高かった美葡にここで今度こそ彼女に勝つという気持ちがあるのだから。
アナウンス係が吉岡の番を告げた。
『新潟県中之島小学校、吉岡肇君、中部大会銅賞』
吉岡が演技を始めた。ステップシークエンスを始め、序盤で見せるトリプルルッツを披露した。そして今度はダブルフリップ、ダブルトウループ、そして足換えのシットスピンを行った。藤木は中部大会の時の吉岡とは異なっていることに気付いた。吉岡は以前はジャンプ不足で最初のトリプルルッツがシングルになってしまうという失敗を犯していた。しかし、今度は成功させたのだ。そして次にダブルループ、シングルサルコウを見せ、コンビネーションスピンは12回転だった。
(よし、後半だ!)
そしてフライングキャメルスピン。これは10回転で決めた。後半にはトリプルフリップ、トリプルアクセルにフライングシットスピンそしてトリのトリプルルッツ。
(どうか、失敗するなよ!)
吉岡は三回転を跳んだ。しかし、バランスを崩しそうになった。だが転ばなかった。何とか上手くできたと吉岡は実感していた。吉岡が滑り終わり、吉岡の得点が出るのを待つだけだった。今現在で最高得点は北海道の銅賞者の107.15だった。得点が出される。吉岡の得点は109.92だった。前の三人よりも高い。
そして、近畿大会の銅賞者、中国大会の銅賞者、東北大会の銅賞者、そして四国大会の銅賞者の番が続いたが、吉岡の得点を超える者はいなかった。
(流石吉岡君。下剋上したい気持ちはわかるけど僕だって高得点獲る自信はあるんだ!!)
藤木には吉岡の気持ちが伝わっていた。そして銀賞者の番が訪れた。
九州大会の銀賞者が滑る。しかし、トリプルアクセルで転倒した事が致命的になり、吉岡の得点より下回った。次に中部大会の銀賞者、佐野の出番となった。
『富山県安塚小学校、佐野武政君、中部大会銀賞』
(よし、絶対に今の吉岡よりももっと高い得点を出す!!藤木が届かないような点をつけてやるぞ!!)
佐野が滑り出す。まずはダブルトウループとダブルループの連続を披露した。そして足換えのコンビネーションスピンを決めた。レベル4に判定されると藤木はモニターから見て感じた。そしてトリプルサルコウ。これも上手く決まった。次にトリプルルッツにレイバックスピン。しかし、まだ佐野は自信の武器・高速シットスピンを見せなかった。そしてダブルループにトリプルフリップ。そしてステップシークエンスして、遂にその必殺技を見せた。列車の車輪のような速さでスピンした。規定の6回はもちろん、その倍の12回転を決めた。
(佐野君、す、凄い・・・!!)
藤木は佐野の演技が自分以上の出来のように思えた。そして佐野は締めのトリプルアクセルを出そうとした。これを決めればかなりの高評価が出る。しかし、佐野はそこで上手くできずに転倒しそうになって手をついてしまった。佐野は必殺技は成功できたが、最後の最後の所で失敗を犯したことが悔しかった。これで藤木を超える事ができるのかと心配になり、リンクから引き上げた。佐野の得点が出される。113.86。吉岡よりは超えた。ただ佐野にとってこの得点が後の出場者に越えられない事を祈るしかなかった。
そして関東大会の銀賞者、中国大会の銀賞者が続いた。中国大会の銀賞者の得点が115.04で佐野を超えた。そして、四国大会の銀賞者、東北大会の銀賞者、北海道大会の銀賞者と続いた。そしてまだ演技を披露していない銀賞の者は近畿大会の銀賞者で瓜原に因縁を持つ住吉のみだった。
『滋賀県番場小学校、住吉重彦君、近畿大会銀賞』
住吉が滑り出した。彼がまず見せたものは何と四回転トウループ。そしてシングルアクセルだった。本人はトリプルのつもりだったが、ジャンプ不足でシングルになってしまった。そして次にステップシークエンスをしていく。そしてダブルフリップ、シットスピンを行っていく。そしてトリプルサルコウ、フライングコンビネーションスピン。シングルアクセル以外は上手くできていると藤木には感じていた。そしてトリプルフリップ、シングルループ、次に二度目の四回転トウループを見せようとしたのだが、三回転になってしまった。そして最後にコンビネーションスピンだった。
「それでも凄いやろ、あの人・・・」
「うん・・・。確かな実力をもっているね・・・」
藤木も瓜原も感心してしまった。住吉の得点が出された。116.6。トップだった中国大会の銅賞者の得点を超え、佐野は3位に下がった。
「今までよりも高い得点やな」
「うん、僕らもあれくらいの点が出せるといいんだけど・・・」
そして銀賞者が滑り終え、今度は金賞者が滑る番となったのだった。
後書き
次回:「金賞者」
四国大会の金賞者で藤木にやけに口出しした大串の番が来る。大串の演技に改めて唖然とする藤木。そして今度は瓜原の番が訪れる・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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