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ソードアート・オンライン〜Another story〜

作者:じーくw
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マザーズ・ロザリオ編
  第259話 森の家でバーベキュー大会を

 
前書き
~一言~

遅れてしまってすみませんっっ! でも何とか一話分出来ましたので投稿を……。次の話で バーベキューの話やら フロアボスの話、乗り込んでやっつける話やちょっとしたやり取りなどを出して、旅行の話、学校の話、トーナメントの話、と続けていこうと思ってます!


……なので、劇場版のオーディナルスケールはまだなので……、すみませんっっ! 何とかやってみます。

最後にこの小説を読んでくださってありがとうございますっ!! これからも、ガンバリマス!



                                 じーくw 

 

 翌朝。
 朝食のテーブルについた京子は、すっかりいつも通りの様子で、タブレット端末のニュースに眼を落としていた。おはよう、のあいさつの後は無言のまま食事が終わり、暫くして、唐突に京子は言った。

「明日奈、……それに玲奈も。誰かを一生支えていくだけの覚悟があるのね?」

 その言葉に、明日奈も玲奈も同じく頷いた。

「うん」
「いつまでも。……だって ずっと、ずっと一緒にいたいから。傍でずっと」

 その答えが訊けて満足……とまでは言えないかもしれないが、いつもよりも、ずっと柔らかい表情で京子は続けて言った。

「そう。――でもね。人を支えるには、まず自分が強くないとダメなのよ。大学にはキチンと行きなさい。……そのためにも、三学期と来年度はこれまで以上の成績をとる事ね。……玲奈。あなたも同じ。共に歩く伴侶が凄ければ凄い程、隣に立つ者の資質を必要以上に見られる事になる。問われる事になってくる。貴女が訊いて、傷ついてしまった声を また、訊いてしまうかもしれない。そんな時だってまたくるかもしれない。……いつも一緒に隣で進んでいきたいのなら、貴女も誰よりも強く、そして頑張らないとダメ。――2人とも、判った?」

 京子の言葉が全ての答えだった。全ての答えが詰まっていた。


 玲奈は、姉、明日奈の編入の件が白紙である事を示してくれた以上に想う所があった。
 あの時の玲奈の嗚咽を……、罵倒をしてしまったが、それでも母はしっかりと聞いてくれていたんだと言う事に。

 そう、どうすれば解決するのかも ちゃんと考えてくれていた。

 きっと何を言っても、どう答えたとしても、どれだけ上手くまとめられたとしても、人の粗を見る人は、それに悪態をつく様に言ってくる人は、大小なり必ずいる。言葉にしなかったとしても、視線が仕草が、全ての行動のベクトルが嫉妬と言う形になって向かってくる事だってある。

 どれだけ内面を知っていても、外面を見れば、向けられても仕方ない、妬み、嫉妬とは 0にする事は出来ない。何処かで思ってしまう程に、凄い人だから。


 その解決法は――自分も、そんな凄い人に負けないくらい強くなると言う事。


 そう、初めから何ら変わらない。

 あのSAO時代の頃から何も変わらない。彼の傍でいる為に SAO時代(あの時)だってがむしゃらに強くなろうと頑張ってきたのだから。笑顔でいつも傍にいる為に。1人にさせない為に……ずっと頑張ってきたのだから。


 この時、玲奈は全てを認めてくれたんだと思えた。姉の事も、そして あの世界の事も―――。


「お、お母さん――……っ!」

 全てを認めてくれた。判ってくれたと感じた瞬間、自然と身体は動いた。母の元へと。

「っ、ちょ……れ、れい…………っ」

 玲奈は、京子に駆け寄って座ったままの母に抱き着いた。
 明日奈よりも先に玲奈が行くと言うのは少々 あれ? と思ってしまうかもしれないが、玲奈もずっとずっと姉の事を考えていたから。その想いが 直ぐに現れてしまったのだろう。
 
 京子はタブレット端末を下へ落としそうになったが、そこは何とか落す事なくキープできた。
 だが、直ぐに抱き着かれた玲奈の事を抱きしめ返す――なんてことには現実ではならなかった様だ。ため息交じりに京子は言う。

「……玲奈。貴女も もう子供じゃないんだから。もう少し落ち着きを持った方が、良いんじゃないかしら? 彼はとても礼儀正しくて、とても好青年でしょう? 見習いなさい」
「っ…… ごめんなさいっ。でも、今……今だけで、今日だけは。それだけで、良いから……っ」
「もう…… 本当に仕様のない子ね。……今だけよ」

 背をぽんっ、と数度叩く京子。それを見た明日奈は少なからず母に抱き留められている姿を見て羨ましくも感じたが、それ以上に それを遥かに上回る気持ちがあった。長年ずっと閉ざしてきた母への想い。それを姉妹で開く事が出来たと思ったから。
 それに、昨日の出来事。
 玲奈以上に自分は母と沢山語らう事が出来たのだから。


「明日奈はしないわよね? 玲奈の姉なんだし」
「っっ……、も、もう お母さんってば…………っ」


 明日奈もウズウズさせていたみたいだが、それを察した京子が 少し笑いながらそう返していた。抱き着く……までは 指摘された通りしなかったが 明日奈は京子の傍へと頭を下げた。



――ありがとう、母さん。



 本当は妹の玲奈のように母の胸に抱き着きたい。感謝の気持ちを身体全体で伝えたい。
 それと どれだけ記憶を遡っても、そこまで甘えれた記憶が見つからないのが少し寂しいから、少しだけ玲奈に嫉妬もしてしまったのは別の話だった。





 そして――軽い足取りで家を出た。昨日までの重たかった身体が本当に嘘のようだった。




 移動するときに確認するのは肩に乗っているプローブ。バッテリ残量だ。間違いなく満タンの表示になっている。それを念のため再確認した後に、携帯端末に接続。起動音が短く小さく肩の上で響くのを感じる。ユウキやラン達が走ってきてくれてる……様に感じられる音、だったりもした。実際には機械の音だから そうでもないんだけれど、そこは勢いだ。

『おはようございます。明日奈さん、玲奈さん』
『おっはよー、2人ともーっ!』

 その勢いのままに、2人の声がスピーカー越しに聴こえてくる。
 昨日と今日では、聞こえ方がまるで違う様に感じるのは、ここまで心穏やかになれた母のおかげだと2人は実感していた。

「あはは! ランさんっ、ユウキさんっ おはよーっ!」
「おはよう、2人とも。ふふ。約束通り遅刻、しなかったね?」

 朝の挨拶を終えた明日奈と玲奈は、駅に向かう。人波を縫って、軽い足取りで走る2人。駅につくまでにずっと、こみ上げてくる微笑みを抑える事が出来なかった。

 勿論、ユウキやランには判ったらしく、『何だか2人、すっごく良い笑顔だねー』とユウキの言葉。そしてランも大体の事情を察していて『ふふふ。……とても、良かったです』と微笑んでくれた。

 上手くぶつかる事が出来たんだ、と。そして判り合える事が出来たんだと思ったんだ。

 その返答の為、明日奈と玲奈は 恥ずかしそうにしながらも笑顔で2人に見える様にVサインを送るのだった。
 






 そして 学校に到着。


 午前の授業を終えて、恒例の屋上での昼食。

『あの――――私は、席を外した方が良いのではないでしょうか? お2人の邪魔になりそう、なのですが』

 と昼食に向かう前にランに気を使われた玲奈だったが、笑顔で首を振った。

「大丈夫っ。一緒に行こう! ほら、今日の事、もうちょっと詳しくさ。ランさんとリュウキ君に伝えたいから。……ね? 2人にも沢山力を貰ったから。改めてのお礼だよ」
『……ふふ。了解しました。玲奈さんがそう言うなら、お邪魔でなければ、よろしくお願いします』

 と言う訳で、笑顔で2人はそのまま屋上へと向かっていった。
 大好きな人(リュウキ)の待つ屋上へ。





 因みに明日奈は キリトの待つ庭園へと向かっていた。


 ユウキはと言うと、最初はキリトはカンが良すぎるなぁ、とやや警戒気味だったと告白していたりする。でも、日を重ねて何度か交流を持って あっという間に打ち明けたらしい。

 元々和人は隼人の親友である、と言う事もあって、やや警戒気味……とは言ったのだが、その事実を知った途端に、殆ど無いも同然になった、と言うのが正しかったりする。

 それに、いや それ以上に片手直剣の話、ソードスキルの話、プロ―ブの発展形など話など、盛り上がる話題が多数あって、どんどん発展していき、最終的にはアスナをやきもきさせてたりもしている程だった。 一気に盛り上がったのは午前中だけだったから更に驚きで、アスナがやきもきしてしまったのも無理はないだろう。


 ……レイナだって、同じ様に自分そっちのけで ランとリュウキが盛り上がってしまったら……言うまでもない。
 


 レイナはいつも通り、隼人と昼食を共にする。レイナの肩にランもいるから3人で楽しい昼食会だ。
 3人だけで、と言うのは実は初めてだった。想像以上に盛り上がったと思う。いつも賑やかなユウキと違い、ランは一歩下がって微笑ましく見ている、と言う印象があったのが正直な気持ちだったが、一番話をしていたと思う。

 ランのユウキに対する想い、姉としての考えと気持ちを打ち明けてもらったりして、レイナにとっても『とっても勉強になるなぁ』と真剣に訊いたり、レイナのアスナに対する想いはランにとっても『勉強になります』と言う感じでお互い様だった。

 そして 勿論メインはリュウキの話。

 それはキリトとユウキの話と似ている。

 メカトロニクス・コースでの勉強会を隼人が講師で行っている、と言うのをランは聞いていたから、最初から興味津々だった様だ。

 その結果、ランがリュウキの教え方が凄く上手だと絶賛したり、色々と質疑応答が続き、会話が弾んでいく。レイナも最初は 理解してふんふん、と頷いていたのだが、更に深く、深く、コアの話になっていくと……なかなかついていくのが難しくなっている。多少齧った程度では、まだまだ難しい、と言う事だ。今後とも頑張ろう! と気合を入れるとともに、ランと楽しそうに話す隼人を見て、やっぱり姉の様にやきもきさせてしまう。そんな所は本当に似た者姉妹だと言える。

 何よりレイナが一番嬉しくて、そして 申し訳なさもあったのが隼人の


『レイナは笑顔が良い。笑顔が一番だ。…………うん。良かった』


 と言う言葉だった。

 最近沈んでいた事。結城本家との絡みや母とのやり取りで悩んでいた事。やはり隼人には見抜かれていた様だった。それでも安易に踏み込めない。踏み込んではいけない領域と言うのがある、とずっと待っていたらしい。綺堂さんや時折家に訪れる渚さんからのアドバイスもいただいたとの事。



――恋仲であれば 悩みを打ち明けてもらい、共に悩み、解決へと導く事も大切ですが、時には見守る事も大切。傍で笑顔でいてあげる事。いつでも傍にいる、と安心させてあげる事が何よりの励みになります。



 と最後には渚さんに諭された様だった。

 玲奈はやっぱり、大人の人にはまだまだ敵わないなぁ、と実感しつつ 改めて心配をかけた事を謝り、そして 改めて皆に感謝をするのだった。
 

















 更に3日後。

 AM10:00



~ 新生アインクラッド 第1層 はじまりの平原 ~


 何故、この場所に来ているのかと言うと、本日開催される催し、盛大なバーベキュー大会の準備の為だ。
 集まる予定のメンバーはリュウキ、キリト、アスナ、レイナ、リズベット、シリカ、クライン、リーファ、シノン、エギルと言ったいつものメンバーに加えて、ユウキやランのスリーピングナイツのメンバー。更に風妖精族(シルフ)のサクヤ、リタ。猫妖精族(ケットシ―)のアリシャ、果ては火妖精族(サラマンダー)のユージーンなどの領主たちとその側近。合計すると30人を超す大集団。

 そんな人たちをもてなす為には、当然ながら食材狩りを行わなければならない。

 そして、新生アインクラッドの最下層である第1層では、その手のイベントやクエストは多数揃っている。経験値や金銭(コル)を稼いだり、武器素材を狙ったりには宜しくないのだが、こういった面、娯楽に関しては有数の層だ。幾ら食べても太らないある種夢の様な娯楽を満たすためには、この場所は、特に優秀だと言っても良いかもしれない。稀ではあるが、S級食材も出たりするから。
 S級ではなくとも、一度にたくさん沸くフレンジー・ボアからとれる ボア・ステーキ肉は 一流の料理人(シェフ)であるアスナとレイナもばっちりグーとお墨付き。

 と言う訳で、今日は午前中に空いているメンバーで食材狩りスタートである。

「うん。この場所なら効率良いな。敵も強くなく、ドロップ率も悪くない。直ぐに集まりそうだ」

 リュウキは取得アイテムを確認して倉庫に転送しながらそう言う。

「だね。ほら見てっ。コレでお肉だけでも30人分は超えたよー! そろそろ、場所移動する? 皆。お肉だけじゃないしさー」

 レイナも満足、と言わんばかりにそう言うのだが、頷くどころか、首を振る者がいた。

「いやいや、まだ全然足りないと思うよー?」
「そうですね。少ないと思います」

 ユウキとランの2人だ。
 そして、ぎょっ と顔を顰めながら 2人の顔を覗き込む様に見るのはアスナ。

「え、ええ? ほんと? だって 30人分だし、結構な量だよ? これ。一週間分は十分もちそうなんだけど」
「全然だよー。だって言ったでしょ? ジュンもタルケンもメッチャ食べるんだって」
「……マジですか?」
「はい。マジですよ。保証します」

 ユウキの説明にあっけらかんとするアスナ。そして ふふふ、と笑いながら 肯定するラン。その話を訊いてたリュウキは自然と話題に挙がった2人の方を見た。
 食べるのが楽しみで仕方がない、と言わんばかりに一心不乱にMob狩りをまだ続けている。時折笑顔で談笑しつつも狩りの手は緩めない。

 自然とリュウキの《眼》発動。
 ジュンとタルケンをその眼で視つつ……首を傾げた。

「………だがしかし、あのアバターの何処に入るのか判らないな」

 現実じゃないから、此処。と味気ない事は言わないが、それでも中々納得しかねる。食事、食欲と言うのはある程度、アバターの大きさに依存する部分があるからだ。

「リューキ君でも判んないのかぁ……。あ、あはは。これは頑張らないとー、だね?」

 レイナも笑っているけれど、リュウキの様に2人を見て、やっぱり首を傾げる。

「だな。盛大にすると言った手前だ。皆には大満足して貰いたい……が、別のも採りに行かないと。少々足りない」

 入手したアイテム整理をしていたリュウキは、大体の全体的な数を把握。それなりには揃っているのだが、大人数での盛大なバーベキュー大会ともなれば、正直心許ない。

「あー 確かに、今日はお肉しかとってないからね? ストックもそんなにある訳じゃないし……。よし お姉ちゃん、どうする?」
「んー。お肉の方はスリーピングナイツの皆がすっごく食べるのなら、もっと確保しておきたいから、此処を重点的にいた方が良いと思うんだよね……。お昼からだし」
「ああ。その辺りは大丈夫だ。アスナ達はここで宜しく頼むよ。オレが行ってくるから」
「え? リュウキ君1人で大丈夫なの?」

 レイナがきょとん、とさせながら首を傾げていると、『待ってました!』と言わんばかりに、木の上からジャンプして降りてくる者がいた。


「にゃははは。レーちゃん。ここはオレッちに任セテクレ。バッチリ採ってクルからサ。リューの依頼トモなれば、気合も入るしネ」


 ぱちんっ、とウインクをさせて降りてきたのは、いつの間にかやってきていた鼠のアルゴ。今回のバーベキュー大会にも勿論呼んでいる。色々と面倒を起こされている要注意人物であるのだが、それ以上に世話になってる面もあるから。
 そして、更にもう1人。


「ん……。バックアップは任せて。ちゃんとフォローはするから」


 ひょいひょい、と木の上から降りてきて、最後は華麗に着地を決めるのは、猫妖精族(ケットシ―)の凄腕弓兵(スナイパー)シノン。


「……えー、リューキくん。朝頼んでた人って、アルゴさんとシノンさんだったんだ? でも、どうして? その……私も行くのに」


 突然の登場に驚くレイナだったが、直ぐにぷくっ と頬を膨らませる。
 何だか一緒に行こう、と誘われなかったのが不服であり、更に言えばこんな些細な事ではあるが、単純にヤキモチを妬いてしまっているのだ。

「ああ。今回は準備する時間が思ったよりも少かったからな。隠蔽(ハイド)スキルが高く、下見を終えてる2人が適任、と思ったんだ」
「……ええ。行く場所はヨツンヘイムでしょ? 以前、光弓シェキナーのクエでリュウキに付き合ってもらったし、地理関係はよく覚えてるから。道にも迷う事なく行けるわ」
「ニッシシ~ オレッチはリューと一緒に邪神狩りをネ~。だから、任せてクレ。レーちゃん。リューのメンドーは、オレっち達にサ」

 腕をするっと組んでニヤニヤと笑うアルゴ。どうみても楽しんでる風にしか見えず、その意図が分かっているのにも関わらず、レイナは頬を膨らませるのを止められなかった。

「むーー! あ、アルゴさんっっ! ちょっとくっつき過ぎだよーーっ!」

 当然それを見せつけられて怒るレイナ。
 それと同時に、リュウキからはゲンコツがアルゴに飛んだ。

「……誰の面倒を見る、だ。それにどちらかと言えば、面倒なのはオレの方だろ……。色々と注文付けてくるんだから、アルゴは。……あーそう言えば、貸し借り面で言えば アルゴの貸しはもう無いし、別にシノンと2人でも十分……か? キャンセル料払うって言ったらどうする?」

 意味深に笑うリュウキ。レイナに怒られたから……ではなく、リュウキの言葉とゲンコツにびくんっ! と身体を猫の様に震わせたアルゴは。

「ニャーーーっっ!! そ、ソンナ殺生な! 意地悪言わなイデクレってば。オレっちはレーちゃんとは違っテ、イジメられて嬉し~は ないんだゾ! リューとの時間は超が沢山つく程希少なんだゾ!?」
「な、なな、なにそれーー! わ、私だってイジメられるの好きじゃないよアルゴさんっ!! 変に言わないでよーーー!」

 レイナとアルゴがきゃいきゃいと言い争っている? 所でシノンがレイナを見て ぼそりと一言。


「……どっちかと言うと、レイナ 喜んでそうな気がするけど。うん。何度か見た事あるけど……」


 どっちかと言えば、いや ほぼ間違いなくレイナはM。
 勿論、レイナはシノンのつぶやきをバッチリ聞いていたので。

「むーーっ! シノンさんっっ!! そんな事無いもんっ! 喜んでなんかないもんっ!」

 ぶんぶん、と拳を振るってくるレイナを笑顔で抑えるシノン。

「ふふ、冗談よ。それに 冗談抜きでもここは まだ大変でしょ? 時間もあまり無いし、少数精鋭で行ってくる方が効率的だと思うわ」
「むー……、ま、まぁシノンさんがそう言うなら……。それにこっちの準備もまだあるし……」

 なかなか本心を隠す事が上手なシノン。本音と立前を使いこなすクールなシノンは ちゃっかりとリュウキとパーティを組む事に成功させた。レイナをちゃんと見送り、早速出発だ。

 ……アルゴが邪魔、と視線を鋭くさせたりもしていたが。








 そして、ヨツンヘイムの大冒険。





 霜巨人族が去り緑豊かになったヨツンヘイムだが、洞窟等のダンジョンには凶悪な邪神が大量に生息している為、難易度的には全く下がってない。そして 難易度の割には報酬が割に合わないのもあまり人気がない所以だ。
 でも、3人は超がつく程のパーティ。

 気配を殺して息を潜め続け、狙撃(スナイプ)してきたシノン。隠蔽(ハイド)スキルも中々高い。
 更にこれまたSAO時代から続いてきて現在のALOも同じ。様々な情報を集め続けてきたアルゴ。隠密性に関しては 全プレイヤーでも指折りの実力者。

 それらを纏めるリュウキは もう説明するまでもない。

 高難易度エリアでもあっという間に攻略していっていた。
 そんな道中の会話。

「たまにはクラインに礼もしとかないと、な……」
「最奥でドロップするお酒、ね。確かに割に合わないわ」
「ニヒヒ。リューに飲まスと、面白イと訊イタからナ。オレっちとしては楽しミだ」
 
 アルゴの一言にピクリと反応するのはリュウキ。

「………それ、何故知ってる?」

 それ(・・)とは、リュウキの中でもトップクラスの黒歴史。
 リズにある事無い事を誇張して教えられた事もあって、何が本当で何が嘘なのか、さしの眼を持つリュウキでもそこは視抜く事が出来ず、である。
 だから、アルゴの言葉に反応しても当然の一言。

「もっちろん! キー坊ダ」
「……そうか。(覚えとけよ……キリト)」
「リュー。顔が怖いヨ。マァマァ良いじゃナイか。ブレイコーってヤツだ。仲間内のお酒の席は楽しイって言うシさ! 今度はオレっちも呼んでクレヨ」
「オレは別に良いが。……飲まないし」
「エ――。お酌サセテくれよー」
「……アルゴ。そもそもお酒は無理でしょ。未成年だし」
「ムフフ~ おねーさんはどうでショー? まっリアルの情報はご法度(タブー)ダシ。女のコに歳訊くのはデリカシーに欠けるゾ? シノノン。と言う訳で、歳はトップシークレット」
「別にいい。そもそも興味ない」
「……うゥ それはそれでショックだヨ(あぅ リューにこの話題フッタの失敗だったヨ……)」

 色々喋りながらも要所要所できっちり、ばっちり結果を残す3人。
 問題なく最奥まで到達し――無事、ヨツンヘイムで採れる高級酒を数十本ゲットしたのだった。















 
 

 そして その日の午後。


 PM 1:00

 
~ 新生アインクラッド 第22層 アスナとキリトの家 ~






 スリーピングナイツの皆に加えて、各種族の領主たちとその側近、つまりこの世界の重鎮と言って良いメンバーも集まってなかなか普段では見られない光景となっていた。
 いち早く、絶剣と剣聖の名をよく聞いている、と言う理由で 風妖精族(シルフ)のサクヤと猫妖精族(ケットシ―)のアリシャが興味津々に話しかけていた。

「君たちが《絶剣》と《剣聖》の2人か。噂には聞いていたが………」
「だよねだよねー。思ってたよりもずっとずっと可愛いネ~~。その可愛さ、アスナちゃんやレイナちゃんの2人に匹敵するヨ。うん、可愛い~♪」

 流石にストレートに可愛い、と言われたから、ユウキは照れてしまった様で顔を赤く染めた。ランは少し余裕はある様だ。ぺこりと頭を下げた。

「あはは……。あ、ボクも領主さんが来るって聞いてたからさ。とても楽しみだったんだー」
「ほう? そうか。ご期待に応える事は出来ていたかな?」
「勿論ですよ。あ、でも……とても綺麗な方々でしたので。私の方も少し想像と違って 驚いてるかもです」
「にゃははは~! 綺麗なーんて、照れちゃうヨ。あ、ひょっとして 想像してたのって、いかついイメージかなっ? ほら、こんな感じの」
「ああ、確かにコレならイメージに合うかもしれんな」
「……おい」

 サクヤとアリシャが指さす先にいたのは、火妖精族(サラマンダー)のユージーン。
 突然話を振られたユージーンは、何処か納得のいかない顔をさせていた。そんな顔もまた、領主にぴったりだと思ったユウキは 反応お構いなく返事を返す。

「あ! うんっ! すっごくイメージ通りだね! ねー、姉ちゃん」
「あ、あははは……」

 ランだけは多少空気を呼んで苦笑いをするだけだ。
 だが、そんな空気はお構いなくサクヤもアリシャも続く。

「あー、でもこの人は領主じゃないんだよネ~。しょーぐん、って言われてるしサ」
「うむ。そうだったな。すまない。期待外れだった。あと、ゴツくて、デカくて、ムサくて、赤くて」
「…………おい」

 ユージーンの頭に四つ角が多数出来上がっているだろう事を察したのは丁度傍にいたリュウキ。

「はは……。サクヤたちは 多分、以前の火妖精族(サラマンダー)風妖精族(シルフ)猫妖精族(ケットシ―)の調印式で襲おうとした事、結構根にもってるんじゃないか?」
「む……。だが、あの時は……。それに今は……。いや、言い訳は止そう。不意打ちをしようとした事には変わりない」
「ああ、そうだな。だが、そう言うあの時は今と違う。……そう言うゲーム(・・・)だった。恥じる事はしてないとオレは思うぞ」
「……ふむ」

 思い出した様で、また渋い顔をするユージーン。だが、ゲームに従っただけ。更にあの当初はガチなPK推奨ゲームだった事と、競争心を煽り、更にプレイヤーの欲を試す様な形式にしてた、と言う事もあった。その元凶の妖精王(オベイロン)を討伐してからは、ガラッと変わったと言える。


「ほんっと、真面目だよネー。リューキ君はさ。まっ、そこが良いんだけどネ♪」
「ふふ……同感だ。まだ、風妖精族(シルフ)は彼を諦めてないからな? ルー」
「にゃははは。そりゃ、猫妖精族(ウチ)もそうだヨ。こっちには色々凄腕のシノンちゃんがいてくれてるからネ。虎視眈々だヨ」


 領主の2人にも慕われている(狙われている?)リュウキを見て、ユウキはニヤッと笑いながらランを見た。

「色々大変だよー? 姉ちゃん。レイナも大変そうだしさー」
「……ユウ? 余計な事言わないの」
「じょ、じょーだんだからね? 怒っちゃヤダよっ!」

 何が大変なのかは言われるまでもなく、ランは判っているから、一睨みでユウキを黙らせながら、リュウキを改めて見た。

 自然と皆が彼に集まる。リュウキが……なんだか 彼女に……、サニーと重なって見えた。光には、自然と皆が寄り添うから。リュウキを中心に、沢山の輪が出来ているから。

「私も、今は………。今くらいは………」
「ふふ、ボクも行くっ!」

 ランはそっと笑みをこぼすと、ユウキと共に、楽しそうに話しをしている皆の方へと向かうのだった。



 
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