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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と明かされる秘密編
  NO.047 かっちゃんとの話+α。

 
前書き
更新します。 

 



今日の授業が終わるなり、出久は前の席の爆豪に話しかける。

「それじゃ、かっちゃん……ちょっと静かに話せるところに行こうか……」
「ああ、わかった……」

小声でそんなやり取りをしているのだが、当然聞く耳を立てている生徒達。
普段の爆豪なら出久からの言葉だったら軽くあしらうものなのだが、今回に限ってはぶっきらぼうに、だが素直に返事をしているところから重要な会話がされる事は想像するに難しくない。
学校生活では気兼ねなく爆豪と接している切島なんかは『あの爆豪が素直だな、おい!?』と感じていたり。
そんな感じで出久と爆豪が二人で歩幅は合わないものの歩いていくという珍しい光景に出歯亀根性丸出しの一同が出久の猫耳に悟られない程度に二人を追跡しだした。
いざとなれば障子が複製碗で耳を作り出して遠くから聞けばいいと言う感じである。
それに実は八百万がすでに出久のカバンに盗聴器と言う仕込みをしていたりしていた。

「八百万も乗り気だな!」
「え、ええ……気になってしまっては仕方がありませんから」
「そこまでして聞くものでもないと思うがな……」
「とかいいつつ轟ちゃんもついてくるのよね?」
「うぐっ……」




出久と爆豪の二人は雄英高校近くの静かな公園に入っていった。
ぶらんこに腰掛ける出久。
爆豪も座りはしなかったが背もたれに体を預けて、

「……それじゃデク。話してくれるんだな? お前のその猫の個性の件について……」
「うん。ところでかっちゃんは僕とフォウ……猫の事はどこまで知っているの?」
「あー……そういえば知らなかったのか。お前がヴィランに襲われて重傷を負った後、俺がすぐに警察と救急に連絡してなんとかなったんだよ」
「そっか……かっちゃんが助けてくれたんだね」
「助けれてねーよ……俺はあの時、てめぇがヴィランに襲われそうになっていた時……普通なら助けていただろう時に足が震えちまって出て行けなかった……てめぇを助けられなかった……病院でてめぇが死ぬかもしれないと聞いた時に……俺の心に後悔とトラウマが出来ちまった……」

そういって爆豪は手で顔を覆う。
普段、勝気な爆豪がここまで弱気な態度を表に出しているのは珍しい事で、出久も言葉を一時失っていた。
だが、

「それは仕方なかったんだよ……かっちゃんもあの時のヴィランの個性は聞いたんでしょ? 『範囲内にいる者の恐怖心を増幅させる』……だから、かっちゃんは気に病むことは無いんだよ」
「だけどよ! それでも俺は、俺は!!……チッ……」

熱くなってしまったと感じた爆豪は一旦舌打ちをして冷静さを取り戻す。
それを見て安心した出久はポツリポツリと話し出す。

「僕ね……あのままだったら本当に死ぬところだったんだ……僕を治療してくれたリカバリーガールでもお手上げだったらしくて……だけどね。その時にフォウが自らを犠牲にして僕を生かしてくれたんだ」
「どうやってだ……?」
「その説明をするのにはフォウの過去も話さないといけないんだけど、しっかり聞いてね? あと、他言無用で頼みたいの……この事を知っているのはオールマイトに相澤先生、根津校長にリカバリーガールだけだから」

そして出久は一つ一つ丁寧にフォウの事を説明していく。
フォウの原点から、人生の歩み、縛られてしまった人生の重み、出久と出会うまでの短い自由、そして己の全てを捧げて出久を助けたが、己の呪いまで受け継がせてしまった事……。
全部を話し終えて出久は爆豪へと視線を向けるとそこには茫然としている爆豪の姿があった。
当然であった。
まだ15歳の出久が背負うには重すぎる運命。

「……これが僕とフォウの全部……だから僕はフォウの償いの手伝いをするために必ずヒーローになろうと思っているんだ」
「…………けるな」
「え? かっちゃん?」
「ふざけるな!! そんな重荷をてめぇが背負う必要がどこにあんだよ!? それじゃなにか!? デク、てめぇは俺……いや、それだけじゃねぇ! てめぇの母親、それにクラスの連中も置き去りにしていくつもりかよ!?」
「か、かっちゃん……怒らないで……しょうがなかったんだよ。フォウは僕を助ける一心で力の暴走まで把握できなかったんだから……」
「だとしてもだ!! それになんでてめぇはもう平然と受け入れとるんじゃ!? もっと悲観的になってもいいもんだろうがよ!!」
「そ、それは……」

出久はもう爆豪に反論できる言葉が出てこなかった。
フォウの過去を追体験した事によって精神的に大人になったとはいえ、それでもまだ学生の年齢なのだ。

「俺の……俺の気持ちまで置き去りにするつもりかよ!? 俺は……お前が傷つく光景をもう見たくねぇんだよ!! だからてめぇは無個性のままで良かったんだ! そうすりゃ俺も気楽でいられた! 何の迷いも抱かずにヒーローを目指せた!! なのにてめぇは雄英までのこのこと来ちまった……訳わかんなかった……」
「かっちゃん……」

掛ける言葉が見つからずにただ沈黙だけが場を支配した。
息苦しい空気で、それでもなんとか出久は口を開いて、

「…………僕の『与える』個性ね。オールマイト達と話し合った結果、表向きは『他人を治癒できる』個性として登録してもらうつもりなんだ……。だから、もしかっちゃん達が傷を負ったら僕に相談して? すぐに治してあげるから!」
「言いたい事はそれだけかよ……?」
「うん……いつ生命力のストックが終わるか分からないけど、僕もみんなと同じ時間を生きていきたい……だから、お願い……」

出久なりの必死の懇願であった。
“みんなと同じ時間を生きたい”。
それが出久の今の望みである。
その為にはたくさんの人の命を救う事もやっていかないといけない。
もとよりそのつもりであるために後は有言実行するだけの段階なのだ。
出久のその言葉に爆豪は何を思ったか、

「…………わかった。だが、代わりと言っちゃなんだが、ぜってぇ今後一切『生命力を奪う』個性は使うな! ただでさえもう途方もないくらいに山積みにされてんのにこれ以上増やしても話になんねぇからな!?」
「うん! 約束する!!」

爆豪に了承を得られてようやく出久も笑顔を浮かべる。

「それに、もとより僕の中のフォウが使用制限を掛けてくれているから使いたくても使えないしね……」
「そうかよ……まぁいいか。話してくれてありがとよ」
「うん!」
「ところでまだ隠し事とかはねぇよな? あぁ?」
「う、うん……ナイヨ?」
「嘘だな……言え! 白状しやがれ!!」
「ごめん! これ以上はもうかっちゃんでもー!!」

二人はそれで久しぶりにこじれる前の昔の様な関係に戻れたような気がした瞬間だった。
正面切って話し合える出久と爆豪……これだけで尊いものを感じさせられるというものだ。
ここまで来ればいい話で終わったのだが、ふと爆豪はすすり泣く声を耳にして聞こえてきた方を振り向く。
そこにはなんとほとんどのクラスのみんなが大なり小なり涙を浮かべていたのだ。

「ええ!? みんないつから!?」
「て、てめぇら!? いつから聞いてやがった!?」
「うぅ……す、すまねぇ緑谷に爆豪……」
「実は最初から聞いてたんだぜ……」

切島と瀬呂の二人がそう白状した。

「な、なんで!?」
「ごめん、デクちゃん! でも気になっちゃって!」
「緑谷さん……すみません。わたくしの好奇心でこんなものを仕掛けてしまいました。後悔先に立たずですわ……」
「出久ちゃん……辛かったら泣いてもいいのよ?」
「うわーん! 緑谷ばっかり辛い思いしてあたし哀しいよ!」

女子陣がそれで涙ぐみながらも出久に駆け寄っていた。
他にも男子連中がそれぞれ慰めの言葉を掛けていってもう出久はいっぱいいっぱいであった。
こうしてクラスのみんなには出久の秘密がばれてしまったのであった。

その後に全員にはほかの誰にも話さない事を誓ってもらった。
他にも爆豪は意外な一面を見せていたためにからかわれる事もしばしばあったとか……。
それで当然キレていつも通りに戻っていた事を出久は安心して見ていられた。



そして出久の今回の収穫は爆豪との和解と仲の修復が出来た事であるだろう。
良きかな良きかな。


 
 

 
後書き
こんな感じでクラスの全員にはばれてしまいました。
果たして今後、是がどういう影響を及ぼすかは私も把握できていません。 
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