スキヤキ
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第三章
「楽しみにしていてね」
「あれか?うどんか?」
トーマスは笑って言った。
「智一が好きだっていう」
「うちの大学の食堂でもあるけれどな」
ホセもうどんと聞いて言った。
「あれか」
「何か俺達には味薄いな」
「ああ、日本の味を忠実に再現したらしいけれどな」
「どうもアメリカだとな」
「味が薄いな」
「うどんじゃないよ」
それは違うとだ、智一は二人に笑って話した。
「僕が今回考えている料理は」
「じゃあ丼ものか?」
「あれか?」
「日本で言うと丼ものもだしな」
「だからか」
「いや、違うよ」
寿司でもないとだ、智一は笑って否定した。
「それともね」
「じゃあ何だ?」
「お握りか?」
「御飯を手で丸めたな」
「日本人皆大好きっていう」
トーマスとホセは今度はそれかと思った。
「他の日本から来てる奴も好きだしな」
「お握りっていうとな」
「じゃあそれか」
「お握りか」
「違うよ」
それでもとないとだ、また笑って否定した智一だった。
「あと天婦羅やお刺身でもないよ」
「そうした和食の有名どころでもないか」
「じゃあ何だ?」
「あと有名な日本の料理ってすき焼きか?」
「それか?」
「うん、それだよ」
その通りだと言ったのだった。
「それを考えているんだ」
「ああ、すき焼きな」
「それか」
「ビーフを薄く切って鍋に入れて煮るな」
「野菜や茸や豆腐も入れてな」
「煮るのはソイソースや砂糖で味付けしてな」
「鍋に水は入れないんだったな」
二人はそれぞれ言った。
「それか」
「すき焼きにするか」
「うん、幸いアメリカは牛肉安いしね」
まずはこのことをよしとする智一だった。
「もっといいことに他の食材も揃ってるし」
「大学の近くのスーパーにか」
「全部あったんだな」
「麩もね」
これもというのだ。
「あったしね、糸蒟蒻も。それにどっちも安く」
「麩?糸蒟蒻?」
「あそこのスーパーそんな食材もあったんだな」
「俺達そういうのは見てないけれどな」
「そういうのもあったのか」
「あったよ、和食の食材のコーナーにね」
そこにというのだ。
「勿論ソイソース、お醤油もあったし」
「それじゃあな」
「今度のパーティーはすき焼きパーティーか」
「それをしてくれるのか」
「そうするよ」
こう言ってだ、そしてだった。
智一はパーティーの時に実際にすき焼きを出した。それを見てトーマスとホセだけでなく他の学生達も言った。
「すき焼きは結構店で出るけれどな」
「日本色のレストランでな」
「何か違うな」
「ああ、微妙にな」
「これが日本のね」
まさにと言う智一だった。
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