スキヤキ
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第一章
スキヤキ
エンゼルスの大谷翔平をカレッジの寮にあるテレビで観てだった、フィラデルフィアにいるトーマス=ルースは思わずこう言った。
「化けものだな」
「その言葉に同意するぜ」
一緒に観ているホセ=リベラが答えた。見ればトーマスはダークブラウンとアメリカのアフリカ系の中ではかなり濃い色の肌のアフリカ系で背は一八〇位だ。短く刈った髪と明るい顔立ちですらりとした身体つきをしている。対するリベラはラテン系の顔に浅黒い肌と癖のある黒髪で背は一七五位でやや太っている。顔立ちは白い歯が光る愛嬌のあるものだ。
「大谷って奴はな」
「化けものだろ」
「打つだけじゃないからな」
「投げてな」
こちらもだった。
「凄いからな」
「一六五キロか」
トーマスは大谷の急速について述べた。
「メジャーでもそんな速度はな」
「ああ、出せないからな」
もうそれこそだ。
「他の奴にはな」
「しかも打つ方もな」
こちらもだった。
「凄いからな」
「こんな化けものがいるなんてな」
それこそだ。
「日本はとんでもない国だな」
「全くだな」
「流石に日本でもこいつ一人らしいけれどな」
ホセはこうも言った。
「こんなに凄い奴はな」
「まあ流石にそうだよな」
「敵だったチームは地獄見たらしいぜ」
「勝てなくてか」
「ああ、こいつ一人に勝てなかったとかな」
それこそというのだ。
「そうした話がある位だよ」
「それは本当の話だよな」
「日本のネットでソフトバンクとかいうチームのファンが言ってたらしいぜ」
「そのチームが負けたのかよ」
「十一ゲーム以上開いててひっくり返されたらしいぜ」
「おお、それは凄いな」
「けれど大谷だったらわかるだろ」
ホセはトーマスに問い返した。
「一六五キロ出してこれだけ打つんだからな」
「ベーブ=ルース以来の化けものだからな」
「そうなるのも当然だろ。まあそんな化けものも出たのがな」
「日本って国だな」
「色々聞くがこんな奴がいるとかな」
「本当に凄い国だぜ」
二人でこんな話をしていた、だが。
二人がいるカレッジに留学してきているその日本からの留学生青山智一は謙遜して言うばかりだった。アメリカ人から見れば一七〇の背は小柄でひょろっとしている。しかし学業は優秀であることで知られている。
「大谷は本当に例外だよ」
「例外中に凄いのか」
「そうなんだな」
「そうだよ、大谷とかマー君とかイチローはね」
彼等はというのだ。
「日本でも規格外で」
「凄いと言われてもか」
「それでもか」
「うん、出来ればね」
智一は少し苦笑いになってトーマスとホセに話した。
「阪神に来て欲しかったけれどね」
「阪神?」
「日本のプロチームの一つだよ」
ホセは阪神と聞いていぶかしんだトーマスに答えた。
「智一のいる関西のチームだよ」
「そうなのか」
「何でもいつも凄いネタ振りしてるらしいぜ」
「ネタ振り?」
「ここぞって時に有り得ない負け方したりしてな」
「カブスみたいなものか?」
「もっと凄いらしいな」
こうトーマスに話した。
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