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レーヴァティン

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第五十五話 歌での戦いその九

「どうかしら」
「味付けが違うな」
「そうでしょ、お塩のかけ方もね」
「工夫するとか」
「同じ焼き魚にしてもね」
「味が違うんだな」
「そうよ、塩加減一つでね」 
 それだけでというのだ。
「味が違うのよ、それがお料理なのよ」
「あんた料理好きか」
「好きよ、食べるのも作るのも」
「そうか、じゃあな」
「これからはっていうのね」
「作ってくれていいか」
「ええ、出来たらね」
 清音もこう答えた。
「そうさせてもらうわ」
「悪いな、何しろ俺達はな」
「皆なの」
「あまり料理ってのにはな」
「慣れていないのね」
「俺もだよ」
 かく言う自分もとだ、久志は清音に苦笑いをして答えた。
「そういうのは疎くてな」
「皆なのね」
「少なくともあんた位には上手くないさ」
 清音にこの事実を話した。
「実際な」
「だからなのね」
「ああ、本当にあんたがよかったらな」
「わかったわ、私としても美味しいものを食べたいし」
 自分の好みのままにとだ、清音は久志に答えた。
「それではね」
「ああ、これから頼むな」
「作らせてもらうわね、ただお料理といっても」
「街に入ったら店で食うしな」
「旅の間だけでしかも」 
 その旅の間の料理もというのだ。
「こうした簡単なお料理しかないから」
「ああ、それでもいいさ」
「それならね」
「頼むな」
 久志は清音に笑顔で応えた、一行は歌い手だけでなく料理番も手に入れることになった。それは一行にとって実にいいことだった。


第五十五話   完


                  2018・2・21 
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