とある3年4組の卑怯者
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147 意地
前書き
全国大会のリハーサルが始まり、藤木は応援してくれる皆に感謝の意を表す演技を披露し、片山に印象付けさせる。そんな中、藤木や瓜原をも凌ぐと思われる豆尾亮吾という男子の技術にも驚かされる。そして3年4組のクラスメイト達は藤木の応援のために花輪の自家用飛行機に搭乗し、出発した!!
スケートのリハーサルの男子の部は全て終了した。藤木と瓜原は豆尾の技術の美しさに驚き続けていた。
(はあ、手強い相手がどんどん増えていく・・・)
藤木はやや怖じ気づいた。そして控室を出たその時、藤木は後ろから声を掛けられた。
「藤木君」
藤木は振り向くと、古宮がいた。
「古宮さん・・・」
「君のスケート、すごくよかったよ。君は絶対に賞を獲るとおりは思うよ」
「あ、ありがとうございます!!」
「それじゃあ、休憩後は女子の番だから、おりのも見ててな」
「は、はい!」
藤木は古宮の演技を楽しみにしていた。また、美匍や黄花の演技も楽しみにしていた。
(古宮さん、君も賞を獲れたらいいね・・・。美匍ちゃんや黄花さんと一緒に世界大会に行けたら・・・)
昼食は出場者には弁当が支給された。そして藤木はそれを食べ終えた後、女子のリハーサルの様子を客席から見ることにした。各地方の大会において賞を獲った者達が本気を出そうとしていた。
(女子の皆も凄いな・・・)
藤木は女子達の演技にも驚いていた。そして黄花の番が訪れた。
「それじゃあ、行ってくる・・・」
「うん、頑張って・・・」
黄花はリンクに向かった。美葡は黄花にもやる気が背中に表れている事に感じた。
(黄花さん・・・。そういえば、私に勝とうと努力してたんだったワね・・・)
美葡は黄花もライバルの一人である事を思い出した。
藤木は客席から黄花がリンクに入る様子を見た。
(今度は黄花さんの番か・・・。応援してるよ!)
黄花が滑り出す。そして鮮やかにステップし、足換えのキャメルスピンやダブルアクセルを行った。そしてコレオステップシークエンス。そして彼女は己の必殺技を見せた。
(まずは一つ目の必殺技!)
黄花はストロークの状態でルッツの準備を行った。まずは反時計回りでのトリプルルッツ。そして今度は時計回りでのトリプルルッツを行った。
(凄いな、両回転のルッツなんて、目が回るよ・・・)
藤木は黄花のルッツに自分にはできないと思った。そして黄花は滑り続ける。そしてキャメルからレイバックへのコンビネーションスピンを披露した。
(よし二つ目の必殺技!コンビネーションスピンからのトリプルトウループ!)
そしてすぐさまトリプルトウループを狙う。しかし、計画通りのジャンプとはいかず、シングルとなってしまった。そして他にも華麗なスピンやジャンプを見せる。そして締めに入った。
(三つ目の必殺技!!)
黄花はステップシークエンスからのトリプルアクセルを決めた。ここまで見せなかったアクセルジャンプをこのトリで見せたのだ。藤木は黄花はこの大会の優勝候補になると感じていた。一方、控室のモニターで見ていた美葡は黄花が関東大会の時よりも進化したと実感していた。
(す、凄い・・・。関東大会より凄い演技になってる・・・)
黄花はリンクを出た。ただ、第二の必殺技であるトリプルトウループが一回転になってしまった事がとても悔しく思っていた。
(くう~。あのトウループ、本番は絶対にトリプルで決めてやるわ!!)
黄花は控室に戻った。そして美葡は黄花に呼び掛ける。
「黄花さん、凄いワ。私も負けてられないワね・・・!!」
「桂川さん・・・」
美葡も黄花に対抗心を燃やした。
やがて美葡と黄花は自分達に敵と仲良くなるなんて腐っているとケチをつけた進藤幸子がリンクへ向かおうとする所を見ていた。彼女の練習の番が次だったためである。
「あの子の番ね」
「うん、どんな演技を見せるのかしら・・・?」
二人はモニターで進藤の演技を拝見した。進藤が滑り出す。そしてスケートが盛んな風土の人間に負けたくないという強気の性格から示すようにその実力は確かだった。スピンもスパイラルも素晴らしいものだ。そしてなんといっても二人を驚かせたのはフライングレイバックスピンだ。レベル4に評されてもおかしくない。
「この子、もしかしたら私達を差し置ゐて上位に行くかもしれなゐかも・・・」
「私もそう思ったワ・・・」
美葡と黄花は進藤に負けるかもしれないと嫌な予感がした。しかし、ここでひれ伏すわけにはいかないと思った。
今度は古宮が滑る番となった。
(今度は古宮さんか・・・)
藤木は美葡や黄花と同様、古宮も応援していた。古宮が滑る。前半のジャンプはフリップやトウループなど点数の低いものを中心に行っていた。しかし、その分、アップライトスピンや足換え̪シットスピンからのレイバックスピンはレベル4に入る凄さだった。
「流石古宮さん・・・。ジャンプをあんなにきれいに飛ぶ上にスピンも凄い正確だ・・・。特にジャンプは点数は低いものだけど、綺麗だから減点されることもないだろうな・・・」
そして古宮は後半に入り、前半まで見せなかったトリプルルッツやトリプルアクセルを成功させた。最後は何と4回転アクセルだった。
「これが古宮さんの実力・・・」
藤木は昨日の練習で見た時の彼女とはまさに違いすぎた。もっとも昨日の練習はこのようなリハーサルではなかったため、出場者各々の本領を発揮しやすいのかもしれない。
そして次は美葡の番となった。
「よし、私の番ね、行ってくるワ!」
「うん、頑張ってね!」
黄花は競い合うライバルとはいえ、美葡に声援を送らないわけにはいかなかった。
(今度は美葡ちゃんか・・・。昨日僕に見せてくれたあの技、もちろん見せるだろうな・・・!!)
美葡が滑り出す。トリプルサルコウを決め、片足で着地すると、今度はターンしてフライングシットスピンを見せた。他のスピンやジャンプも決めた後、ツイズルからのキャッチフットスピンを後半に決めたのだった。
(美葡ちゃんの構成もなかなか凄いなあ・・・)
藤木は美葡の演技も素晴らしいと思っていた。そしてその後も次々の出場者が現れた。そして最後は北海道の金賞者が演技を終えた所で全てのリハーサルが終了した。ただそのは特にこれといった凄い所がなく、誰が見ても地味だった。
「あの人、あれで北海道大会で金賞なの?」
「何か見るべき所がなかったわね」
美匍と黄花は肩透かしだと感じた。その時、進藤が話しかける。
「ふん、北海道のモンは調子に乗ってるとよ!あんなんで勝とうだなんて絶対に人馬鹿にしてると!!」
「うん、確かにね・・・」
「でも、何かありそうな気がするワ・・・」
「え?」
「もしかしたら、本番で本気を見せてそれまで隠してるのかも・・・」
「そうか・・・」
「でも私は絶対に誰にも負けんとよ!いつも本気でいくと!」
進藤は去った。
「そうゐゑばあの進藤さんってさあ・・・」
「・・・え?」
「ジャンプは大体ルッツとかアクセルとか点が高ゐものばかりを使ってゐたわよね」
「そういえばそうね。確かに他の誰よりも負けたくないから高得点を取りたい気持ちは分かるけど、難しいものばかりで失敗の恐れも高くなってしまうかもしれないもんね」
「うん・・・」
美葡と黄花は気の強くて強敵だ感じながらも進藤を不安視した。
リハーサル後、出場者は会議室に集合することになっていた。藤木もそこに向かっていた。その途中、瓜原と合流した。
「女子も凄かったな、藤木君」
「うん、特に黄花さんって人とか美葡ちゃんに頑張って欲しいな」
その時、後ろから大串が話に割り込んできた。
「ほう~、お前が好きなのはもしかして・・・!?」
「な、何だよ、しつこいぞ!行こう、瓜原君!!」
「お、おお・・・」
藤木は早歩きで大串から離れようとした。瓜原も藤木を追いかけた。
(全く、何だよ、あいつ・・・)
会議室に入ると、美葡と黄花の姿が見えた。
「やあ、美葡ちゃん、黄花さん」
「あ、藤木君、瓜原君、お疲れ様」
「君達の演技も凄く良かったよ」
「ありがとう。でも私、あのトウループのジャンプ失敗しちゃって・・・。本番は絶対成功して見せるわ!」
「うん、君なら絶対できるよ!!」
「藤木君、私の応援は?」
「もちろん、美葡ちゃんの応援だってするよ!」
「藤木君、顔赤くなっとるで!」
四人は笑いあった。
「そういえば君は・・・?」
黄花が瓜原の顔を見て気になった。
「わいは大阪の瓜原かけるや」
「そっか。私は黄花蜜代。君のジャンプも凄くかっこよかったよ」
「え?お、おおきに・・・」
「君も頑張ってね!!」
「おお!!」
「そうだ、皆、大会後の交友会に参加するの?」
美葡が聞いた。
「僕は出るよ」
藤木が答えた。
「私も行くわよ」
「わいもや。折角いろんな人と会えたんさかいな」
「そうよね。もちろん私も行くワよ!楽しみね!」
「うん!!」
皆は肯いた。
3年4組のクラスメイト達を乗せた花輪の自家用飛行機は東北の上空に入っていた。
「皆様、間もなく花巻空港の方に着陸いたしますので、シートベルトをお締めになって下さい」
ヒデじいが皆に促した。
「ついに東北に来たんだなブー!」
「おう、美味いもんいっぱい食ってやるぜ!!」
「お前はまた食いもんかよ・・・」
はまじは小杉に呆れた。そして飛行機は空港に着陸する。
(藤木君・・・。負けないで・・・。私、貴方に頑張って欲しいの・・・。どうか藤木君が世界大会に出られますように・・・)
リリィは藤木が世界大会への切符を手にできるよう祈っていた。
後書き
次回:「前夜」
クラスメイト達と合流した藤木。藤木は皆から健闘を祈られる。そして同じ頃、清水の方にいる藤木を応援しているある者もまた藤木の入賞を祈っており・・・。
一度消えた恋が蘇る時、物語は始まる・・・!!
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