ドリトル先生と和歌山の海と山
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第九幕その六
「密教の奥義にも近付けてね」
「悟りにもだね」
「解脱にも達せられるだね」
「こうした厳しい場所だからこそ」
「それ故に」
「そうだろうね、ここはね」
まさにというのでした。
「修行に最適の場所だよ、そもそも霊山だったというしね」
「最初から独自の神聖なものがあったんだね」
「空海さんが開く前から」
「じゃあ空海さんもそうした山だからこそ」
「それでここにお寺を開いたんだね」
「都の南西にもあってね」
「そうした全ての条件を考えてだろうね」
空海さんはというのです。
「この山を選んだんだよ」
「修行のことも考えて」
「何処までも考えてのことなんだ」
「ううん、そこも凄いね」
「空海さんの深謀にもね」
「そうだね、あらゆることを考えてね」
まさにというのです。
「空海さんはこの山を選んだんだよ」
「お寺に」
「そして今もあるんだね」
「真言宗の総本山として」
「凄い神聖な場所であり続けているんだね」
「そうだろうね、だからこそね」
ここであの人のお話も出した先生でした。
「ハウスホーファーさんも来たんだろうね」
「あの人もだね」
「地政学者で軍人で」
「しかも神秘主義者であったともいうし」
「あの人も来たんだね」
「当時は今よりずっと交通の便が悪かったけれどね」
今は南海電車を使えばすぐです、難波駅から直通のものもあります。それで高野山にはすぐに行けるのです。
ですが昔はといいますと。
「こんな深い場所にあるからね」
「今よりずっと苦労してだね」
「高野山に来てたんだね、ハウスホーファーさんも」
「僕達は車で楽しみながら来たけれど」
「それでもだね」
「そうだよ、だからね」
それでというのです。
「あの人は苦労してね」
「この高野山まで来て」
「そうして色々見ていたんだね」
「今の私達みたいに」
「そうしていたの」
「そうだろうね、調べれば調べる程変わった人だけれど」
ハウスホーファーという人はというのです。
「あえてそこまでしてね」
「この高野山まで来ていたんだ」
「不便な交通もものともしないで」
「今よりずっとそうだったのに」
「そうなんだ」
こう皆にお話しました。
「そしておそらくここにもね」
「来ていたんだね」
「金堂にも」
「そしておそらくお墓地にも」
「そうしていた筈だよ、しかしね」
ここでこのお話もした先生でした。
「あの人は何が目的で高野山まで来たかはね」
「わからないんだね」
「先生も」
「そうなのね」
「それはあの人だけが知っていることだよ」
ハウスホーファーさんだけがというのです。
「神秘的な理由であったと思うけれどね」
「オカルトとかそういうの?」
「ここは凄いパワースポットでもあるし」
「だからだね」
「来日したこともあって」
「それを機にして」
「そうだと思うんだけれどね」
確かなことはというのです。
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