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それを言っちゃあ

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第二章

「相手を探してその相手とね」
「幸せになるべきですね」
「そうだよ、僕だって奥さんと会ったのは」 
 若狭さんと、というのだ。
「岡山からこっちの大学に来てね」
「京都に住んで、ですか」
「このお店に入って店の娘さんだった奥さんと会って」
「そうしてですか」
「一目で好きになってアルバイトに入って」
「積極的だったんですね」
「そうだね、それでパン焼きと商売のことを覚えてね」
 そうしてというのだ。
「それで今に至るからね」
「結婚もされて」
「うん、奥さん一人っ娘だから婿養子になってね」
 そうしてというのだ。
「お店に入ったんだ、お義父さんとお義母さんは今は四条にもお店出してそこにいるけれど」
「ご主人は奥さんとですね」
「この千本北大路のお店でやってるよ」
 今の様にというのだ、智子は自分にそうしたことを話してくれながら店のことも教えてくれるご主人そして若狭さんと一緒に契約満了まで働くつもりだった、実際に仕事は順調だったが。
 その中でだった、この京都でもだった。
 智子は好きな相手が出来た、毎日朝にパンを買いに来るスーツ姿の細面で涼し気な顔立ちの人だ。その人を毎日見ているうちにだ。
 智子はその人が好きになっていた、この辺り実に惚れっぽい。それでだった。
 さりげなく名前を聞くとこう言われた。
「宮崎卓也といいます」
「宮崎さんですか」
「はい、区役所で働いています」
 つまり公務員だというのだ。
「今は」
「そうですか、区役所にお勤めですか」
「そうなんです」
「それで毎朝ですね」
「ここでパンを買って」
 それでと言うのだった。
「朝御飯にしています」
「そうですか、お仕事頑張って下さいね」
「有り難うございます」
 丁寧かつ温厚な口調でだった、宮崎さんは智子に応えた。この日から智子は毎朝宮崎さんとお店の経営の邪魔にならない範囲で会話もする様になった。
 そうしてだった、智子はこのお店での契約が満了したらまだ次の契約先が決まっていないこともあってだ。
 このまま京都に留まって宮崎さんに自分から、と思う様になった。そうしてさりげなく宮崎さんに誕生日や好きなものを聞いていった。
 プレゼントをしてそれから、と夢見る様に考えるようになっていた。それは彼女にとって実に楽しく一人で盛り上がってにこにことするものだった。
 それでだ、智子は若狭さんにこんなことを言ったりもした。 
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