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血の味

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第二章

「吸うからな」
「ああ、スッポンな」
「スッポンの血も飲むんだな」
「あれは有名だな」
「飲むと精がつくってな」
「そう言われてるな」
「だからな」
 それでと言うのだった。
「色々飲むな」
「一口に血といってもか」
「牛とか羊とか馬か」
「あとスッポンか」
「色々飲むんだな」
「そうしてるんだな」
「そうさ、ただな」
 ここでだ、パウロは彼等にこうも話した。
「豚の血は飲まないな」
「あれっ、豚は飲まないのか」
「それは何でだよ」
「豚の血は飲まないのか」
「それはどうしてなんだ?」
「豚には虫が多いだろ」
 それでというのだ。
「だからな」
「それでか」
「豚の血は飲まないのか」
「虫が多いからか」
「だからか」
「そうさ、飲む血は選ばないとな」
 例え好きにしてもというのだ。
「生でこうして飲むにはな」
「御前としては美味くて精がついてもか」
「それでもか」
「飲む生きものの血は選んでるか」
「そうしてるか」
「ちゃんとな」
 こう言ってだ、また血を飲むパウロだった。仲間達がその血は何の血かと聞くとそれは牛のものだった。
 だがその血を飲みつつだ、パウロはふと遠くを見る目になってだった。仲間達にこう言ったのだった。
「妹ゲテモノ好きでな」
「ああ、あの生き別れになったっていう」
「あの妹さんか」
「妹さんがか」
「料理好きでその中でもな」
 料理のその中でもというのだ。
「ゲテモノが好きで得意でな」
「それでか」
「血もか」
「料理に使ってたのか」
「ああ、まあゲテモノって言えないものもあるな」 
 一口に血の料理といってもとだ、パウロは述べた。
「肉料理のソースにしたりソーセージにしたりするしな」
「ああ、結構あるよな」
「血を使った料理もな」
「肉料理にも使うし」
「そういえばそうだな」
「それで俺にも血の料理を出してくれてな」
 その生き別れの妹がというのだ。
「生で飲むこともな」
「教えてくれたんだな」
「その妹さんが」
「そうだったんだな」
「ああ」
 そうだとだ、パウロは仲間達に答えた。
「あいつと一緒に住んでいた時にな」
「そんなことがあったんだな」
「御前も色々あったんだな」
「血を飲むことは妹さんとの絆か」
「それでもあるんだな」
「親父もお袋も死んだ」
 遠い目でだ、パウロは話した。
「それからは妹と二人だったがな」
「その妹さんが作ってくれてか」
「それで教えてくれたからか」
「今も飲んでか」
「味も楽しんで栄養も摂って」
「絆も確かめてるんだな」
「そうさ、再会したらな」
 若しそうなれば、その時のことも話したパウロだった。
「一緒に飲むな」
「そうか、そうしろよ」
「折角だからな」
「その時はな」
「一緒に飲めよ」
「そうするな」
 実際にとだ、こう言ってだった。
 パウロはまた血を飲んだ、飲むと妹の笑顔が頭の中に浮かんだ。今は生き分かれているたった一人の肉親と。


血の味   完


                     2018・5・20 
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