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イステ

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第一章

               イステ
 歌と平和を愛する時空の女神、人はイステをこう呼ぶ。
 世界を救いその世界を護る為に自らを時空の中に幽閉しその中からあらゆる世界を見守っている。その女神の名前はこの世界の人間なら誰でも知っている。しかしその力があまりにも強大であるが為にだった。
 人々はイステという女神への信仰は今一つ広く大きく持ってはいなかった、それでどうしてもであった。
 人々はイステについては漠然とした信仰しか持っていなかった、他の神々の方が信仰を集めているのは確かだった。それでイステに仕える若い神官であるミストは神官長に対して問うた。
「何故人々はイステを信じないのでしょうか」
「他の神々と比べてか」
「崇拝されるのは他の神々の方が大きく」
 そしてというのだ。
「イステについては」
「そのことを嘆いでいるのだな」
「御覧の通りです」
 イステは神官長に真剣な顔で答えた。
「私は常にそれは何故かと考えそして」
「イステへの信仰がより広まり深まることを望んでいるな」
「はい」
 その通りだとだ、ミストは神官長に答えた。
「世界を救いあらゆる時空を守護する偉大な女神だというのに」
「しかも歌と平和を愛する穏やか気質の女神だ」
「それで何故でしょうか」
「仕方がない、イステの力は時空だな」
「それが何か」
「時空というものはあまりにも大きくかつ漠然としたものだ」
 そうしたものだからだとだ、神官長はミストに話した。
「そこまで大きなものだからな」
「信仰を集めにくいのですか」
「そうだ、時空というものはあまりにも大きい」
「時の流れは」
「それ故にだ」
「人々はですか」
「イステへの信仰が弱いのだ。あまりにも大きなものである為に理解しにくいのだ」
 そして漠然としているというのだ。
「その為だ。しかもだ」
「しかも。何でしょうか」
「そのことを嘆く必要もない」
 神官長はミストに大成した落ち着いた声で答えた。
「時が来ればその時はだ」
「信仰がですか」
「そうだ、湧き上がる」
「泉の様にですか」
「時が来ればな。イステは時空の女神だ」
 それ故にというのだ。
「その時が来ればな」
「信仰も湧き上がりますが」
「そうだ、その時になってからでもいいではないか。むしろだ」
 神官長はここでその顔を険しくさせた、それと共にその顔に深い叡智を漂わせてミストに話をした。
「イステは世界を救った、あらゆる時空の世界をな」
「それが何か」
「神が信仰を集める時はその神が大きく動く時だ」
 その動きを見て人々はその神を信じるというのだ。
「それならばイステが動く時はだ」
「あらゆる時空の世界が危機に瀕した時ですか」
「そうなる、そう考えるとだ」
「イステが信仰を集めることはですか」
「よくないのではないのか」
 こう言うのだった。
「私はそう考える」
「そうなのでしょうか」
「この考えが正しいかどうかはわからないがな」
 こうミストに言うのだった、そしてミストは神官長の言葉を受けてからも考えた。そのうえでだった。
 イステへの信仰がより広まる深まるべきか、そしてその為に世界が危機に瀕する状況を望んでいいのか。そうしたことを考えていった。  
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