ロボスの娘で行ってみよう!
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第41話 ランボーなリーファ
襲撃事件の後編です。ヤンの走馬燈もあります。
襲撃の裏事情は次回以降です。
前話にボロディン中将の欠席理由とかを加筆しました。
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第41話 ランボーなリーファ
宇宙暦792年10月10日
■自由惑星同盟首都星ハイネセン ハイネセンポリス ホテル アヴィスタ
シトレ統合作戦本部長が狙撃された瞬間、ヤンとワイドボーンはシトレの元へと駆けだしていた。ヤンとしてもまさか自分が第三のターゲットになるとは思いも依らなかったからであるが、シトレを撃ちロボスが撃たれた後、自分に向いた銃口を見たときには既に銃口から真っ白な閃光が放たれた後であった。
左太股に鋭い痛みと共にカーッと熱くなり、足が縺れそのまま前のめりに倒れて頭を打って脳震盪状態になってしまったようであった。混濁する意識の中で、周りの悲鳴や怒声が遠くに聞こえ始めて、次第に無音の世界へと向かい。此までの人生が走馬燈の様に流れていった。
父さん・・・・母さん・・・・・ジェシカ・・・・ラップ・・・・アッテンボロー・・・・キャゼルヌ先輩・・・・リーファ・・・・校長・・・・ワイドボーン・・・・・フレデリカ????
ヤンの意識は混濁していたが、数時間前の事は確りと思い出していた。
そうだ、アッテンボローとリーファの結婚式に招待されて、外出許可を貰って来た、ラップと付き添いのジェシカと話したんだ。
「ヤン。久々だな」
「ラップ、元気そうだな、外出許可が下りたんだな」
「ああ、来月には現役復帰出来そうだよ」
「良かったな、此で又組めるな」
「ヤン。ジャンは未だ無理よ、いいとこ内勤が精々みたいな話が」
「おいおい、ジェシカ心配しすぎだよ」
仲のいい二人を見て、ヤンは寂し気持ちになった事を思い出した。
「それでな、ヤン。此処でハッキリさせておこうと思ってな」
「なんだい、急に畏まって」
ラップとジェシカが真剣な表情でヤンを見つめていた。
「俺達、親友だよな」
「なんだよ、改まりすぎだろう」
「ヤン。俺とジェシカ、結婚することにしたんだ」
やはりそうかと、ヤンは思った。ジェシカはやはりラップを選んだのだと、些か寂しかった、いや凄く寂しかった、そして、心の中で大泣きしていたが、余計に明るくお祝いを言った。
「そうか。ラップ、ジェシカ、おめでとう。私も凄く嬉しいよ。アッテンボローとリーファの結婚式で2重におめでたくなったよ」
「ヤン・・・ありがとう」
「ジェシカ。幸せにれよ」
「ヤン。済まんな」
「ラップ、何言ってるんだい。目出度い事じゃ無いか!」
「ありがとう」
違う、違う、ジェシカ・・・ジェシカ・・・ジェシカーーーーー!!!
ヤンの叫びに走馬燈の映像が変わる。
これは、さっきの。
ヤンがラップとジェシカの婚約を聞き、一人うらぶれていた時現れた。自然にウエーブのかかった金褐色の頭髪とヘイゼルの瞳を持つ、美しく可愛らしいお嬢さん。彼女が親しげに話しかけて来たが、ヤンは最初は誰だか判らなかった。
「ヤン・ウェンリー中佐殿でありますね」
「そうだけど、貴方は?」
「申し遅れました。小官はフレデリカ・グリーンヒル候補生であります」
「グリーンヒルというと、グリーンヒル総参謀長の」
「はい、娘です」
「それは又、どうも」
ヤンも男である、綺麗な美少女に話しかけられれば、嬉しくないと言うのは嘘になるし、それに以前キャゼルヌ先輩から美人で才媛と聞いていたから興味もある。
「ヤン大佐にお会いするのは此で二度目なんですよ」
「えーと、何処かでお会いしましたっけ?」
ヤンとしてはこんな美人に会っていれば忘れる事は少ないであろうが、記憶の片隅まで調べようとしたが、ゴチャゴチャと整理されていない部屋と同じで探しきれないので諦めた。
「中佐は4年前、エル・ファシルで一人の女の子の心に絶対的な信頼を植え付けることに成功なさいました」
「・・・・・?」
不審げなヤンにむかって、金褐色の頭髪の美しい少女は言った。
「私はその時母と一緒にエル・ファシルにいたのです。母の実家がそこにありましたから。食事する暇もろくに無くて、サンドイッチを囓りながら脱出行の指揮を取っていた若い中尉さんの姿を、私ははっきり覚えています。でも、そのサンドイッチを喉に詰まらせたとき、紙コップにコーヒーを入れて持ってきた14歳の女の子のことなど、中尉さんの方はとっくに忘れておいででしょうね」
「・・・・・・・・」
「そのコーヒーを飲んで生命が助かった後で何と言ったか、も」
「・・・・何と言った?」
「あー助かった。けどコーヒーよりも紅茶が良かったなーって」
「そんな失礼なことを言ったかな」
「ええ、仰りました。空の紙コップを握りつぶしながら」
「それは、済まなかった。しかし凄い記憶力だね」
「ええ、私にとって忘れられない出来事ですから」
「ありがとう、ミス・グリーンヒル」
「フレデリカって呼んで下さいって、あの時言いましたよ」
にこやかに話しかけてくるフレデリカの笑顔が凄く心に残っている。
やさぐれた心に染みいる一服の清涼剤の如くであった。
そしてヤンの意識は奈落へと落ちていった。
■自由惑星同盟首都星ハイネセン ハイネセンポリス ホテル アヴィスタ
シトレ統合作戦本部長が撃たれた直後、ヤンとワイドボーン以外は殆どが動けない状態で有ったが、リューネブルク准将とシェーンコップ中佐は素早く動き出していた。
一番遠い位置にいたためにロボス宇宙艦隊司令長官とヤン大佐の狙撃までは防げなかったが、その後の攻撃はほぼ防ぎ切ることになった。
リューネブルクとシェーンコップは阿吽の呼吸で果物用ナイフを持ち、更に銃撃を行うフォークへと投擲した。ナイフは見事に、ブラスターを持つ右手に突き刺さる。あまりの痛みにフォークはブラスターを落とした所へ、シェーンコップ素早く駆け込みながら叩き倒して腕を捻りあげ、リューネブルクが頸を絞めて気絶させた。
「旅団長、お見事」
「シェーンコップ、お前もな」
リューネブルクが呆然とする列席者や護衛に対してカツを入れる。
「総員、気を付け!!。慌てるな落ち着け!!。怪我人の手当が先だ!!」
その鮮やかな姿と言葉に、パニック状態だった列席者達も怪我人の手当のために動き出した。リーファも直ぐさま怪我人の数を把握し始める。
「怪我人は動かさずに、止血をしてください。怪我人の人数を把握して」
直接撃たれたのは、シトレ統合作戦本部長、ロボス宇宙艦隊司令長官とヤン中佐であり、この3人は予断を許さない場所に被弾していた。
その他、流れ弾で数人が怪我を負っていたが、命に別状がない状態で有った。
情けないことに、カスター国防委員長が、腰を抜かして大小両方を失禁していたのが目立ったぐらいであったが、それが知られてカスターはその後暫く恥ずかしい思いをするのであった。
リーファはてきぱきと指示をしている、直ぐさま護衛や副官が他の襲撃者が居ないかを確認しながら、連絡を入れている。携帯電話から救急ヘリを呼ぶ声も聞こえる。キャゼルヌやワイドボーンやアッテンボローがシトレ、ロボス、ヤンにかかり止血を試みている。リューネブルクとシェーンコップは陸戦の経験からロボス、シトレの止血を取り仕切っている。どうしてもヤンの方が後回しに成ってしまうのである。
「布が足りないぞ!!!」
「ガーデンじゃテーブルクロスもないぞ!!」
その言葉に数人の士官がホテル内へ布を取りに走って行く。
その時リーファがいきなり、ウエディングドレスを引き裂き始めた。驚く人々を尻目に引き裂いたドレスを包帯代わりに遣うように命じ始めた。
「此で止血を行って!」
「でも、ドレスが」
「そんなの関係ない!ドレスなんかより、止血よ!!」
「判ったわ」
リーファは次々にドレスを破っていく、あっという間にウエディングドレスは袖が無くなり、超ミニスカート状になり、下着が丸見え状態だが全く気にせずにテキパキと指示を行う。さらにストッキングを脱いで止血に使う。イブリンやフレデリカもストッキングを脱いで止血に使う。
ジェシカは真っ青な顔で震えていて今にも気絶しそうだ。それをラップが抱きかかえている。オルタンス、イブリン、フレデリカはリーファと共にテキパキと動いている。
「ブランディーを持ってきて!」
その声にブランディーが届けられると、リーファが3人の傷口に流し込む。
シトレ、ロボスはしみるらしくうめき声を上げながら顔を顰めるが、ヤンは意識がない状態でピクリともしない。どうやら大動脈が傷ついているのか、傷口からの出血が激しい。無理に止血すると足が壊死しかねない為にどうしても縛りが緩くなる。
リーファは動脈を抑えながら近くにいたアッテンボローに直ぐさま儀仗隊から銃剣と実包を持ってこいと命令した。
「ダスティー!!直ぐに儀仗隊から銃剣数本と実包数十発を貰って来て!!」
「なんで?」
「いいから急げ!!!!!!!!」
凄まじい剣幕にアッテンボローはすっ飛んで取りに行った。
僅かの時間で、銃剣5本と実包60発を持って来た。
銃剣を受け取ったリーファは乾いた布の上で銃剣を使い器用に実包を解体し発射薬を布のうえに集め出した。なにかと質問しようとアッテンボローが聞こうとするが、顔でそれを制して手伝わせながら黙々と発射薬を集める。火薬が集まると、リーファはヤンの止血を更に強くして一時的に出血を少なくした。
リーファは意を決して、ヤンの傷口に口を付けて血を啜る、そして吐き出すを繰り返す。顔が真っ赤に染まりまるで吸血鬼の様な姿になるが、気にせずに吸い出す。傷口が見えたところで、火を用意させて言い放った。
「誰か、ヤン大佐の口に猿ぐつわをして、舌噛みかねない!」
その声にフレデリカが、ハンカチで猿ぐつわを行う。
「行くわよ」
リーファが傷口に火薬を詰め込むと火を付けた。瞬時に傷口が焼かれて太股の裏側に火が噴き出した。余りの痛さにヤンが目をさます。そこには必死に自分を押さえ込む、フレデリカの姿が目に入った。この止血方法は、リーファがランボーを見たときにシルベスター・スタローンがやっていた方法を藁をも掴む気持ちで行ったのであるから、ある意味乱暴である。
シトレとロボスの出血自体がさほどでなかったために、ヤンに試したといって良いから、酷いモノであるが何とか成ったようである。
その後、医療ヘリによりシトレ、ロボス、ヤンは病院へと運ばれていった。
後に残った人々は、顔面血だらけのリーファを筆頭に気絶したままMPにより連行されるフォークを見ていた。
後の検査で、シトレ全治3ヶ月、ロボス全治4ヶ月、ヤン全治6か月であった。図らずもヤンは半年もの有給休暇を得ることになった。しかし命は助かったが、ヤンの左足は腱と神経の損傷が酷いため当分は車椅子生活になるのであった。別にリーファの火薬治療が悪かった訳ではなく、ビームの当たり所が悪かったと、医者は力説していた。
しかし、同盟軍は統合作戦本部長と宇宙艦隊司令長官、両名が負傷休養で混乱していた為、緊急に臨時代行を決めなければならなかった。
宇宙艦隊司令長官代行はあっさりと、総参謀長ドワイト・グリーンヒル中将を副艦隊司令長官兼任として決まったが、統合作戦本部次長もグリーンヒル中将が兼任していたために、一人では無理が生じるため、別の人材を充てることにした。またグリーンヒル中将が兼任していた幕僚総監には代理としてラムゼイ・ワーツ少将が就任する事に成った。
トリューニヒト派の国防委員会からはどさくさに紛れて、次長人事にジョージ・ドーソン中将を推してきたが、意識を取り戻したシトレ本部長が、第四艦隊司令官クブルスリー中将を後任の統合作戦本部次長に推薦したためにドーソンの人気の無さを鑑み、トリューニヒト派も仕方なくドーソン案を断念した。その結果クブルスリー中将が次長として暫く統合作戦本部を預かる事が決まった。
クブルスリーの統合作戦本部次長就任に伴って、第四艦隊司令官職が浮いたために、トリューニヒト派はそれの人事はごり押しして、トリューニヒト派のラウル・パストーレ中将が任命されてしまった。
リーファはその人事を聞いて、『パストーレかよ!』と叫んだそうだ。
更にあの大事件中に関わらず、不心得者が居たらしく、リーファの下着姿の写真が密かに流れた。
その話を聞いた、リューネブルク以下ローゼンリッター旅団の面々曰く、犯人をぶっ殺すだそうだ。無論リーファの考えも同じで、犯人覚えてろだった!
事件のあとヤンの病室に休みの度にお見舞いに来る、フレデリカの姿が見られたそうだ。
又、イブリンが、リューネブルクに惚れたそうで、ローゼンリッター旅団本部へ用も無いのにいって、怒られたが、気にせずにリューネブルクの家まで押しかける様になり、リューネブルクはリーファに相談したが、仕方ないと言われたために、シェーンコップが大笑いしたのである。
「ロボス中佐、ドールトン大尉をどうにかできないのか?」
「無理ですよ。准将閣下は女運が悪そうですから」
「アハハハ、旅団長、羨ましい限りですぞ」
「シェーンコップ、なら代われ」
「そうはいきません、小官に他の婦女子で手一杯ですからな」
「准将閣下、諦めて下さい」
ほとほと困った顔のリューネブルクは見物であった。
「リューネブルク准将〜♪ 今日はクックベリーパイですから、自信作ですよ〜♪」
それから昼時にバスケットを持った、イブリンが日参し続けたのであった。
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ヤンの治療法が酷ですが、ネタとして勘弁して下さい。
ヤンとワイドボーンの階級を間違えていました。
大佐→中佐
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