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真田十勇士

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巻ノ百三十六 堺の南でその三

「だからじゃ」
「辰千代は」
「わしも歳じゃ、長くはないがな」
「父上が世を去られたら」
「その時までにあの態度ならじゃ」
「改易ですか」
「そうせよ、一門こそ罰してこそじゃ」 
 そうしてこそというのだ。
「天下の法と裁きが成るからな」
「是非共ですか」
「辰千代は仕置きせよ」
「それでは」
「腹を切らせるには及ばぬが」
 そこまでの極刑はというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」
「これ以上は捨ておけぬ」
 決してというのだ。
「だからな」
「この度の戦の態度次第では」
「改易、そして辰千代自身は蟄居じゃ」
 そうせよというのだ。
「よいな」
「厳しい処罰ですな」
「それをあえてせよ、あの勘気は結局治らぬな」
「どうしてもですな」
「ずっと見ておったが治らぬからな」 
 忠輝の勘気、それがだ。
「あれをどうにかしてこそじゃ」
「幕府の法と裁きが成り立つので」
「必ずせよ、そして切支丹じゃが」
「それもですな」
「何としても認めるでない」
 この教えのことも話した家康だった。
「あの教え自体はどうでもよいがな」
「そこから南蛮の者達が入って来るので」
「国を掠め取りにな」
 そうしてくるからだというのだ。
「だからな」
「ですな、それがしもそう思いまする」
「あの者達は民を攫い売り飛ばし奴婢にさえする」
「恐ろしいことです」
 このことには秀忠も顔を青くさせていた、語る家康も思うだけで恐ろしいという感じであり顔に出ていた。
「まことに」
「そうなっては天下の政も成り立たぬ」
「だからですな」
「民を護ってこその政じゃな」
「よき民達を」
「だからじゃ」
「切支丹はですな」
「許すな」
 絶対にというのだ。
「よいな」
「肝に銘じておきます」
「そしてこの戦が終われば諸法度をじゃ」
「これまで定めてきたものを」
「天下に広く知らせてな」
「法としますな」
「そうする、それがわしの最後の仕事になるか」
 天下の政のというのだ。
「そうなるであろうか」
「そうですか」
「もう一年かのう」
 遠い目になってだ、家康はこうも言った。
「わしが生きられるのは」
「では」
「その一年の間にな」
「幕府の土台をですか」
「完全に固めておきたい、そしてな」
「幕府をですな」
「末永く栄えて続く様にしたい」
 その一年の間にというのだ。
「だから今もな」
「戦をしてですな」
「大坂を手に入れてな」
「そうしてそのうえで」
「諸法度も定め」
「辰千代も」
「あ奴のことも収めてな」
 そうしたことを全て整えてというのだ。 
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