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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と職場体験編
  NO.041 合同職場体験・三日目 決着

 
前書き
更新します。 

 


出久と轟の二人がステインと戦っている中で、一人地面に伏せている飯田は轟の言葉に気づかされて己の不甲斐なさに涙を流していた。
過去に出久達に話した言葉を思い出す。

『規律を重んじ、そして人を導く愛すべきヒーロー!! 俺はそんな兄に憧れ、ヒーローを志した』

だが、今の自分はどうだ?

『インゲニウム……貴様を倒すヒーローの名だ!!』

ステインに向けて言い放ったその言葉。
本当に自分はヒーローになれているのか?
答えは否だ。
憎しみだけを発散するために兄のヒーロー名を使ってしまった。
これでは兄に顔向けができないではないか。
見れば友の二人は、こんな自分を守り、ステインとの戦いで血を流している。出久に至ってはまた腕を切られて動けなくなってしまっていた。
飯田はその状況も鑑みて己がいかにばかな事をしていたのかを悟る。

過去の兄とのやり取りでも兄のヒーローとしての方針を汲むことが出来なかった。

「(お前のいう通りだ、ヒーロー殺し……僕は、緑谷君や轟君とは違い、どうしようもない未熟者だ! 今の僕では足元にも及ばないだろう……それでも!)」

飯田は身体に力が戻ってくる感覚を得る。
そしてステインはちょうど轟をその刀で切り伏せる直前であった。

「(今ここで立たなきゃ! 二度と!! もう二度と彼らに、兄さんに追いつけなくなってしまう!)」

レシプロバーストを発動した飯田が放った蹴撃がステインの刀を破壊した。
続けざまにステインへと蹴りを見舞うがガードされるに至る。
だが、それでも飯田は立ち上がった。

「飯田君!」
「ようやく解けたか……案外大したことねーんだな」

それで出久と轟は二人して安心した。

「轟君も……緑谷君も……関係ない事に巻き込んでしまい……申し訳ない……」
「飯田君! そんな悲しい事言わないでよ! そんな言葉、聞きたくない!」
「緑谷の言う通りだ。独りよがりが過ぎてるぞ」
「本当に、すまない……だからもう、君たち二人に血を流してほしくないんだ……」

飯田のその言葉に、しかしステインはこう答える。

「感化され取り繕おうとも無駄だ。人の本質はそう易々と変わらない……」

非情にも飯田の言葉を否定したステイン。
そう、私欲を優先させるものはいずれ偽物になり果てる。
ヒーローと言うものを歪ませる社会のガンになる。
今のうちに排除しておかないといけない……。

ステインのその精神の元、飯田を再度殺す気でいた。
飯田は、そのステインの言葉を、認めた……。

「貴様の言う通りだ。僕にヒーローを名乗る資格は……ない。それでも……ここで折れてしまったら、インゲニウムは本当の意味で死んでしまう!」
「論外」

その一言で飯田の言葉は完全に否定されてしまった。
後はもう煮るなり焼くなりしてしまわねば。
お互いに理解などする機会はとうの昔に失われているのだ。
ステインもいい加減時間を掛け過ぎたために焦っている。
攻撃が単調になってきていた。

轟と飯田の二人で奴に対抗するために、策を練ろうとしている一方で、出久もふらりと立ち上がる。
二回目の復帰。
されど、利き腕はナイフで切られている為に今は碌に使えないだろう。
ならば、今こそ使う時ではないか?
グラントリノとワイルドワイルドプッシーキャッツとの訓練で付け焼刃ではあるが身についた新たな戦術。

飯田と出久がステインに向けて飛び上がるのはほぼ同時だった。
ステインも出久の復帰の事を頭から抜けていたために反応が疎かになってしまっていた。
そして決まる。

「フルカウル! シュートスタイル!!」
「レシプロ・エクステンド!!」

クロスカウンターならぬ、クロス蹴りが炸裂してステインは空中で姿勢を崩す。

「たたみかけろ!!」
「飯田君、避けて!! 渾身の!!」

出久は飯田が再度ステインに蹴りをお見舞いした後に、今までで思いっきり空気を吸い込んで放つハウリング・インパクト。
もとよりもう反撃する力さえ残っていなかったステインはそれをもろに直撃を受けてそのまま壁に激突して気を失った。

「勝った、のか……?」
「なんとかなったの……?」
「気絶しているようだな……」

そして見ているだけであったネイティヴも含めて四人は安心のため息を吐いた。

「とりあえず、何か縛るもんでも持ってきて拘束するか」
「武器とか全部外しておこう……」
「だな。それより緑谷、腕や足は大丈夫か……?」
「うん。痛いけどこのくらいならまだ動かせるから。でも、初めて実戦で足の攻撃を使用したから加減が利かなくてシューズが破れちゃったし、足の方が少し痛い……」

そう、今出久はほぼ両足とも裸足の状態で少し痛々しかった。
もしかしたらぶっつけ本番のために足にひびが入ったかもしれない。

「それじゃ俺が君を運ぶよ……女の子をそのままにしておくわけにはいかないからね。後でコスチュームを修繕に出しておいた方がいいだろう。魔改造されない程度に……」
「あはは。はい……」

ネイティヴにそう言われて出久は素直に返事をした。
もとより出久はコスチュームを改善してもらうつもりだったので渡りに船であった。

「轟君、やはり俺が運ぼうか? 君も腕とか結構やばいだろう」
「お前ほどじゃないから安心しろ」

そんな感じでステインを引っ張る四人は表に出てきた。
するとそこに脳無(?)と戦っていたはずのグラントリノの姿があり、

「!? 小娘、なぜここにいる! 座ってろって言っただろう!?」
「す、すみませんグラントリノ……ところでもうそっちは解決したんですか?」
「概ねな」

それから他にもヒーロー達がやってきて、ステインを見て驚愕していたりしていた。
聞くところによるとエンデヴァーの使いの者達らしい。
一安心したのか、飯田は出久と轟に頭を下げてきた。

「二人とも……すまない。僕がもっとうまく立ち回っていれば君達にもケガを負わすことは無かっただろう。だから、すまなかった……何も、見えなくなって……しまっていた……」

飯田は心から自身の行いを恥てひたすら涙を流しながら謝罪をしていた。

「僕の方もごめんね……もっと強く話を聞いてあげられていたらよかったのに……友達失格だね」
「そんな事は……ッ!」
「緑谷に落ち度はないと思うがな。それよりしっかりしてくれよ、委員長」
「うん……」

こうして出久達の短いようで長く感じた戦いが終わろうとしていた矢先だった。
グラントリノが突然「伏せろ!!」と叫んだのだ。
何事かと思ったら出久達の方に向かって翼を生やした脳無が傷つきながらも飛翔して来ていた。
そしてなぜか出久を掴んでどこかへと連れ去ろうとしていた。

「緑谷君!!」
「緑谷!!」
「わああああ!!?」

現状で傷だらけであった出久には対抗する術がなく、万事休すかと思われたが、その脳無が流していた血を目を覚ましていたステインが縄から抜け出して舐めていたために脳無はその場で力を失い、さらにはステインがナイフで脳を突き刺して殺してしまっていた。


「偽物がはびこるこの社会も、徒に“力”を振りまく犯罪者も、……ハァ……粛清対象だ……すべては正しき社会のために……」

そう呟くようにステインは喋る。
迷うことなく脳無を殺したステインにヒーロー達も戦慄を感じながらも拘束しようと動き出そうとするが、出久が人質に取られるかもしれないために迂闊に動けない。
そこにエンデヴァーも遅れてやってきて、

「なにを一塊で突っ立っている! 動かんか!」
「エンデヴァーさん! ですが、女の子が人質に!」
「ぬっ!? あれは、緑谷! そしてヒーロー殺しか!」

それでエンデヴァーはすぐに出久を救おうと走り出そうとするが、次の瞬間。
圧倒的な殺意の波動が全員を襲う。

「偽物……正さねば……誰かが血に染まらねば!!“英雄(ヒーロー)”を取り戻さねば!!」

そのステインの殺意にさすがのエンデヴァーも動きを止めてしまう。
ステインが一歩足を踏み込む。

「来い……来てみろ! 偽物どもが!! 俺を本当の意味で殺していいのは……本物の英雄(オールマイト)だけだ!!!!」

その圧倒的な威圧感によって全員は汗を垂らし、腰を抜かすものも数名いた。
だが、ふとその威圧感は消え失せ、見ればステインは立ったまま気絶していた。
その拭いきれない殺意に全員はもうステインは気を失っているというのに嫌な汗を掻いてしまっていた。
その後にステインは逮捕されて補導されていって、出久達は三人とも病院送りとなった。
……こうして保須市での事件は幕を閉じていった。




それを高みの見物をしていた死柄木弔は、

「…………もういい。帰ろうか」
「いいのですか……?」
「ああ。どうせ奴は俺らとは馴染まない。なら助ける道理もないね。それに……今日の事で明日にはどうせ騒ぎになるだろうしな」
「脳無とステインが同時に暴れた事でヴィラン連合の関係が疑われるのは予想済みですからね」
「そうだ。だからせいぜい良いように使わせてもらうとするよ、先輩……」

そして死柄木弔は黒霧のワープでその場から消え去った。


 
 

 
後書き
次回、病院での話ですかね。
グラントリノとオールマイトの会話は重要な部分だけ抜き出してそこそこ流すかどうか考え中です。

出久のコスチュームもやっと修繕&改修できますね。 
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