レーヴァティン
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第五十三話 水の都にてその一
第五十三話 水の都にて
久志達は湖の幸とパスタ、それに酒を楽しんでから親父が紹介してくれたホテルに入ってその日は休んだ。翌朝は全員ホテルの近くにある風呂に入った、そこは彼等が起きている世界で言う古代ローマの趣がある大浴場だった。
その大浴場のプールの様な浴槽に入りつつだ、久志は言った。当然仲間達も彼等以外の客達もその中にいる。
「何か俺達はな」
「街で飲むとね」
「次の日は絶対に朝風呂だな」
「僕もそう思うよ」
剛はその久志に微笑んで応えた。
「どうもね」
「夜にしこたま飲んで食ってな」
「次の朝は二日酔いでね」
「それでな」
「二日酔いの解消と身体を奇麗にする為にもね」
「こうして風呂に入ってるな」
「そうだよね、けれどこれがね」
剛は自分の身体から酒の気が急に抜け出ていくのを感じながらこうも言った、湯で身体が温まり汗が出てそのせいで酒が抜けているのだ。
「一番いいよね」
「二日酔いにはな」
「二日酔いにはお風呂だよ」
「だよな、起きている世界でもな」
そちらでもと言う久志だった。
「二日酔いの時それが出来たらな」
「こうしてだね」
「風呂、せめてシャワーを浴びてな」
そうしてというのだ。
「酒抜いてるぜ」
「さもないと辛いからね」
「その一日がな」
「だからいいよ」
こうして朝風呂に入ることがというのだ。
「二日酔いの時はね」
「そうなんだよな、こうしてな」
「すっきりして」
「一日もはじめてな」
「今日にしてもね」
「そうしていったらいいな、昨日も飲んだしな」
「白ワインも美味しかったしね」
ヴェネツィア風、彼等が起きている世界で言うイタリア風にオリーブオイルにトマト、チーズにガーリックを利かせたこの料理に加えてだ。
「甘口でね」
「ごくごく飲んでな」
「全員ね」
「だからな」
「その結果だからね」
「恒例でこうなって」
その二日酔いにだ。
「それでだからな」
「そうだよね、けれどその朝風呂が」
「いいんだよな」
「堕落にも思えますが」
順一は聖職者としてこうも考えた、聖職者が禁欲的であれというのはどの宗教でも同じであろう。日本の学校の教師は宗教関係者以前に日教組という組織のせいで聖職者どころか腐敗しきった輩が多いが。
「しかしです」
「それでもな」
「朝のお風呂はまことにいいです」
「そうなんだよな」
「酔いが抜けて」
そしてだった。
「頭の痛みの身体のだるさも」
「それが全部抜けてな」
「気持ちいいものです」
「そうだよな、まあ旅に出ている時はな」
その時はというと。
「風呂なんて全然だからな」
「はい、水浴び位で」
「いつもじゃないならいいんじゃねえか?」
「こうして朝からお風呂に入ることもですね」
「時々ってことでな」
「そう考えればいいですか」
「ああ、しかも二日酔いのままだとな」
言いつつだ、久志は昨日の芳直の言葉も思い出した。
「吟遊詩人に会ってもな」
「断られますね」
「そうなるからな」
だからだというのだ。
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