麗しのヴァンパイア
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十一話
第三十一話 家の前を通られても
華奈子と美奈子はこの時間はもうぐっすりと寝ていた、それぞれの使い魔達は二人が一緒に寝ている二段ベットの傍で寝ている。
そこでだ、ふとだった。
ライゾウは家の前を通った気配に目を覚まして寝ているタロに囁いた。
「旦那起きたかい?」
「うん、今ね」
見ればタロも目を覚ましている、そのうえでの返事だ。
「起きたよ」
「今通ったよな」
「うん、確かにね」
「吸血鬼だよな」
ライゾウは丸まっているままだがその目を警戒させて言った。
「これは」
「巷で噂になってるね」
「オーストリアだったか?」
ライゾウは国の名前も出した。
「あの国から来たっていう」
「女吸血鬼だね」
「そいつだよな」
「多分そうだよ、血の匂いとね」
タロは鼻を利かせてライゾウに話した。
「薔薇と石鹸の匂いがするから」
「薔薇と石鹸かよ」
「どうも毎日お風呂に入って」
そうしてというのだ。
「薔薇の香水をかけてるらしくて」
「それでか」
「そう、その二つの匂いもするよ」
血のそれと合わせてというのだ。
「だからね」
「間違いないか、おいらは音でわかったよ」
「歩く音が人間の音じゃないんだね」
「ああ、あれが吸血鬼の歩く音か」
「どんな音だったのかな」
「少し浮いてる感じだよ」
ライゾウはタロに剣呑な顔で話した。
「そんな感じだよ」
「浮いてるんだ」
「何処かな、人間の足音とはまた違うんだよ」
「それは面白いね」
「ああ、けれどな」
「お家の前を通ってもね」
「家の中に入ろうとはしないな」
それはないと言うライゾウだった。
「気配はどっか行ったぜ」
「よかったね、じゃあね」
「ああ、寝るか」
「あらためてね」
二匹はこう話して再び寝た、そして夜を過ごして翌朝華奈子にこのことを話そうとしたがここで、であった。
第三十一話 完
2018・3・18
ページ上へ戻る