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レーヴァティン

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第五十二話 水の都その十一

「美味な」
「パンもだな」
 芳直はそれを食べていた。
「いいな」
「チーズもだよ」
 淳二はそれをワインと一緒に食べていた。
「美味しいよ」
「ワインだってな」
 正は白ワインを飲んでいた。
「いいな」
「海いや湖の幸には白だね」
 淳二も白ワインを飲んでいる、産地はどれも同じだ。
「やっぱり」
「そうだよな、その白ワインがな」
「美味しいね」
「これなら幾らでもいけるな」
「そうだよね」
「ああ、このワインも飲んで」
「今夜は楽しく過ごそうね」
 淳二は自分の杯にその白ワインを入れつつ飲んでいく、一行はそうしていたがふとだった。店の他の客の言葉が耳に入った。
「こっちに来てるのか?」
「そうらしいな」
「あの噂の女吟遊詩人がな」
「このヴェネツィアに来てるらしいな」
「吟遊詩人?」
 久志はその話を聞いてすぐに言った。
「こっちの世界じゃ結構いるな」
「そうそう、それでね」 
 源三はマカロニを食べつつ久志に応えた、マカロニの上に粉チーズもかけてよりよく美味くして食べている。
「こうしたお店とかね」
「貴族とか金持ちの前で歌うんだよな」
「それでね」
 さらに言う源三だった。
「この島ではね」
「術だって使えてな」
「戦うことだって出来るよ」
「というかあれだったな」
 こうも言った久志だった。
「吟遊詩人は騎士の場合もあるんだったな」
「ミンネジンガーですね」 
 順一が言ってきた、カルパッチョを美味く食べながら。この店のカルパッチョは刻んだ玉葱も一緒にあってその味もあってより美味い。
「騎士であり歌手でもある」
「そうそう、それな」
「私達の世界ではドイツで有名でした」
「あれだろ、ワーグナーのな」
 久志はスパゲティを食いつつ応えた、渡り蟹とトマトとクリームのソースのそれも実に美味いものだ。
「タンホイザーとかな」
「そうです、あの作品はです」
 ワーグナーの代表作の一つであるこの作品はというのだ。
「まさにです」
「ミンネジンガーを扱った作品だよな」
「そうです、作中に出て来る騎士達はです」 
「歌手だよな」
「吟遊詩人といえば」
「そうもなるか」
「はい、作中の騎士達はどの騎士も有名な歌手です」
 当時のドイツ、神聖ローマ帝国のだ。
「歴史に名を残す」
「全員そうか」
「はい、どの騎士達も」
 作中では脇役である彼等もだ。
「歴史に名を残すまでの」
「騎士ならな」
「武器を使え馬に乗れることも可能ですね」
「そうした鍛錬も受けているからな」
「そうしたものですから」
 だからだというのだ。
「吟遊詩人が戦えてもです」
「別におかしくないか」
「はい、ですから」
「この世界でもおかしくないか」
「はい、吟遊詩人が戦えても」
 彼等が起きている世界がそうであるのと同じくというのだ。 
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