レーヴァティン
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第五十二話 水の都その九
「偉大な神様だよ、あとこの街の守護神はな」
「エーギルか」
その神の名は芳直が出した。
「あの神様か」
「ああ、わかるか」
「ギリシアの海の神様はポセイドンでな」
「北欧の海の神様はエーギルだからか」
「それはわかったぜ」
「ヴェネツィアでも両方の神様が崇拝されてるんだよ」
「ギリシアも北欧もか」
芳直もポセイドンの神殿を見ていた、大理石の石柱が並ぶその奥にポセイドンの巨大な石像が僅かながら見えた。
「どっちの系列の神様もか」
「崇められていてな」
「この街は二柱の神様が守護神か」
「そうなんだよ」
まさにという返事だった。
「湖に浮かんでる街だからな」
「成程な」
「ああ、そしてな」
「そして?」
「この神殿の中に入ると凄いぜ」
「どんなのだよ」
「ああ、中に水が流れていてな」
そうしてというのだ。
「噴水とかが滝みたいに流れててな」
「湖の中にいるみたいか」
「そうなんだよ」
「へえ、そうか。それだったらな」
「中に入ってみたいだろ」
「そうなったぜ」
「じゃあ俺のガイドが終わったらな」
それからとだ、親父は芳直にも他の面々にも笑顔で話した。
「そうしてみな」
「あの神殿の中に入ってか」
「その目で確かめてみな」
「わかったぜ、それじゃあな」
久志が応えた。
「あんたのガイドの後でな」
「街の中を見回るついでにだな」
「あの神殿にも行くな」
「そうしな、あとここは湖の幸もいいからな」
親父は今度は料理の話もした。
「そっちも楽しみなよ」
「それは何よりだな」
「パスタもな」
この料理もというのだ。
「いいからな」
「それは何よりだ、じゃあな」
「食うな」
「ああ、そうしなよ」
親父は久志に応えてだ、彼等をゴンドラでの旅の終わりにだった。あるレストランの前で舟を停めてだった。
そのうえでだ、久志達に笑って話した。
「ここがな」
「その美味い店か」
「ああ、料理だけじゃなくてな」
それに加えてというのだ。
「ワインもな」
「いいんだな」
「いいのが揃ってるぜ」
そうだというのだ。
「だからな」
「料理もワインもか」
「楽しみな、やっぱりヴェネツィアにいたらな」
こうも言った親父だった。
「酒はワインだよ」
「そう言う理由は何だよ」
「貿易をしててワインもいいのが集まるからだよ」
このヴェネツィアにはというのだ。
「だからだよ」
「ビールとか蜜酒じゃなくてか」
「景色にも合わないだろ」
ヴェネツィアのそれにはというのだ。
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