ドリトル先生と和歌山の海と山
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第五幕その十三
「そこはわかっておいてね」
「くれぐれもだね」
「そう、本当に違うからね」
現実の吉宗さんと時代劇の吉宗さんはです。
「本当の吉宗さんは日本と日本の人達の為に正しい政をした人だよ」
「日本の財政を立て直してね」
「税制も変えてね」
「年貢の収め方だね」
「それまではお米の取れ高によって農民の人達が収める年貢は変わっていたんだ」
そうだったというのです。
「それを毎年一定の量のお米だけを収めてもらう方法にしたんだ」
「そうだったんだ」
「そうしてお米の取れ高によって経済の状況が上下して不安定になることを防いだんだ」
「お米の値段が変わるとね」
「当時の日本ではあらゆるものが変わったからね」
その値段がです、お米が主体の国だったので。
「お米が即ちお金と言ってよくて」
「それでだね」
「それで幕府も日本の人達もね」
「物価の上下に困らない様にしたんだ」
「経済の状況もね」
「経済安定政策だね」
「それも行ったんだ」
こう王子にお話するのでした。
「吉宗さんはね」
「あれっ、けれど先生」
先生のお話に最初に気付いたのはポリネシアでした。
「それだとね」
「うん、お米が不作ならね」
ダブダブも食いしん坊であることから気付きました。
「収めるお米が多くて」
「収める農民の人達は困るね」
「凶作の時はね」
チープサイドの家族も気付きました。
「豊作ならいいけれど」
「不作の時なんかはね」
「それってお百姓さんには辛くないかしら」
ガブガブもこう考えました。
「そのやり方だと」
「だよね、どうも」
「お百姓さんには辛い政策じゃないかな」
オシツオサレツも皆と同じ考えに至りました。
「豊作とは限らないから」
「どうしてもね」
「吉宗さんってお百姓さんに厳しい人だったの?」
ホワイティは先生に尋ねました。
「実は」
「じゃあ名君じゃないんじゃないかな」
トートーはこの結論に至りかけました。
「お百姓さんに厳しいなら」
「昔だとお百姓さんがかなり多いし」
ジップは昔の社会の仕組みから考えました。
「そのかなり多いお百姓さんが困るなら」
「吉宗さんは名君じゃなくて厳しい人だったんじゃないのかな」
チーチーもこの結論に至りました。
「そうならない?」
「国を立て直したこととかは立派でも」
それでもと言う老馬でした。
「ちょっと、とも思うよ」
「いやいや、収めるお米の量は低く定めたんだ」
先生はここで吉宗さんのこのこともお話しました。
「それでその分ね」
「お百姓さんを楽にしたんだ」
「豊作でも凶作でも収めるお米の量は少ないから」
「それじゃあね」
「かなり楽かも」
「しかも新田を開発したらその取り分は全部お百姓さんのものだったし」
幕府のものでなく、です。
「お米以外の農作物の売り上げは全部お百姓さんのものだから」
「あれっ、お米だけ!?」
「欧州や中国と随分違うね」
「お米だけでいいって」
「麦とか蕎麦とかお豆とかはね」
「あと綿とか絹とか菜種はいいんじゃ」
そうしたものでの利益が全部お百姓さんのものになるならというのです。
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