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初レギュラー

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第三章

「シャツにジーンズに」
「有紗ちゃんジーンズ派だしね」
「それがですか」
「そう、可愛い服を着てもらってメイクもね」
 今も薄いメイク、所謂すっぴんに近い有紗に言った。むしろ由美の方がメイクは凝っている感じである。
「凝るから」
「人の前に出るからですか」
「そうなるわ」
 まさにというのだ。
「このことも覚えておいてね」
「わかりました、ただ」
「ただ?」
「何か凄いことになってきましたね」
 初レギュラーの仕事からとだ、有紗は由美に驚きを隠せない顔で言うのだった。
「イベントとか歌とかメイクとか衣装とか」
「だからそうしたことも声優さんの仕事だから」
「それでなんですね」
「番組のラジオもはじまるし」
 放送と共にというのだ。
「有紗ちゃんのゲスト出演も決まってるわよ」
「ラジオもですか」
「そう、そっちのお仕事もね」
 決まっているというのだ。
「ゲストでもね」
「何か色々決まっていってますね」
「そうね、けれどそうしたこともね」
「声優さんのお仕事ですね」
「よく覚えておいてね」
 笑顔で言う由美だった、そして有紗は由美のその言葉に頷いて初レギュラーの仕事に向かった。出番が来るのは早くしかも台詞も多くてだ。
 有紗は脚本を必死に読んで覚えていった、それで脚本も原作も読んで他の声優達彼女にとっては先輩の演技も観つつ由美に第一話収録の後にラーメン屋に入ってそこでラーメンを食べながらこうしたことを言った。
「大変でした」
「これまでとは違ってでしょ」
「はい、台詞も多くて」
「先輩の人達との兼ね合いもね」
「これまでは本当にちょい役だったんで」
 名前があるかどうかもわからない役ばかりでというのだ。
「兼ね合いとかも」
「考えてなかったでしょ」
「はい、しかも気遣いもするキャラですから」
 高飛車お嬢様であってもだ。
「ライバルである筈の主人公にも」
「だから余計によ」
「他の人との兼ね合いも大事ですね」
「そうした役なのよ」
「正直難しい役ですよね」
「そうよ」
 その通りだとだ、由美はラーメンを食べつつ自分の横にいて同じラーメンを食べている有紗に応えた。
「特に若手の娘にはね」
「オーディションで選ばれてやったって思ったら」
「大変でしょ」
「はい、けれどですよね」
「そうした役だからこそね」
「演じればですね」
「演技力も上がるし」 
 演技者としての命であるそれがというのだ。
「そしてね」
「名前も売れるんですね」
「そうなるからね」 
 だからだというのだ。
「この役頑張ってね、演技力が上がって名前も売れたら」
「ここからですね」
「ステップアップになるから」
 声優としてのキャリアのというのだ。
「だから頑張るのよ」
「イベントに出たり歌も歌う時があれば」
「余計にね」
「そしてラジオもですよね」
「全部頑張るのよ、これからの為にも」
「わかりました」
 有紗はここでも由美に素直に答えた、そして二話の脚本も熟読し他のキャラとの兼ね合いまで学んでだった。
 仕事を続けた、そしてだった。
 イベントが決まってだ、こう由美に言われた。 
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