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レーヴァティン

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第五十一話 川旅その十三

「それが好きだね」
「河豚か。こっちの島じゃ食わないな」
「そもそもいるのかな」
「いないんじゃないか?見たことないぞ」
 この島で河豚はとだ、久志は疑問の声で剛に述べた。
「あの魚は。あと鮟鱇もな」
「鮟鱇は深海魚だしね」
「ああ、だからか」
「獲り方がわかっていないと」
 日本の様にだ。
「獲りにくいし獲ってもあの外見だし」
「まずそうだしな、ぱっと見」
「だからね、こっちの島じゃ」
「食わないか」
「西洋では食べないじゃない、どっちも」
 河豚にしろ鮟鱇にしろというのだ。
「そうじゃない」
「というかどっちも日本以外じゃ食わないか」
「中国では昔は河豚を食べていたけれど」
「それでもか」
「うん、今はね」
 河豚、それに鮟鱇を食べる国はだ。
「日本位だよ」
「そんな風か」
「だから河豚を食べたいなら」
「この島じゃないか」
「釣れても」
 例えいてそれが出来てもだった。
「調理がね」
「毒あるからな、河豚は」
「鉄砲だよ」
 当たると死ぬことからこうした名前になった、関西では河豚はこう呼びその刺身も鉄砲の刺身ということで『てっさ』と呼ぶ。
「だからね」
「毒に当たってか」
「死ぬよ」
「捌き方がわかっていないとな」
「絶対に知ってる人いないから」
 この島にはというのだ。
「河豚の捌き方なんてね」
「そうだろうな、そもそもいるかどうか疑問だしな」
「それでいても食べられる魚とは思わないで」
 それでだった。
「例え食べてもね」
「捌ける人もいなくて」
「死ぬから」
 毒にあたってだ。
「普通に肝出されるかもね」
「河豚の中でも一番毒が強いんだったな」
「そう言われてるね、僕も食べたことないし」
「俺もだ、美味いっていうけれどな」
 これはあくまで噂だ、そしてその噂を確かめる為にあえて食べて命を落とす者が日本ではたまにいる。
「河豚の肝はな」
「食べたことはないね」
「というか店に出てないだろ」
 河豚料理店にもスーパーにも魚屋にもだ。
「河豚の肝はな」
「毒があるのは有名だし」
 それこそ日本では誰でも知っていることだ。
「もうそれこそね」
「出せるものじゃないな」
「とてもね」
 河豚は出せても肝だけはというのだ。
「出せないよ」
「そういうことだな、まあ肝はな」
 カルパッチョを食べつつ言う久志だった。
「起きた時に鮟鱇のをな」
「そっちをだね」
「食うさ、あん肝も美味いしな」
 それでと言うのだった。
「そっち食うさ、こっちの世界ではないけれどな」
「そういえばこっちの島ではお魚の内臓食べないね」
「だよな、あそこも美味いのにな」
 カルパッチョも普通の肉の部分だ、内臓はない。 
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