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転生×魔弾の王×萌えもん=カオス

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十二本目

 
前書き
人化個体
1U以上の個体は人の姿になれる。
理由は不明。
なお伝説、準伝説は皆6Vかつ人化個体。
なお完全に人と同じ姿の者もいればポケモンの特徴を残していたり、下半身がポケモンのままの個体もいる。
完全人化 エレン、リム。
不完全人化 ティッタ(耳、尻尾あり)。
半人化 例ハブネーク(ラミア)。
 

 
マサラタウンからは、少しずつ人影が消えていった。

体力のある若者達は森の中へ。

そうでない子供や老人はポケモンセンターへ。

誘導は、オーキド博士や町の自警隊が行っていたが、避難は遅々として進まない。

「ティッタは、町の外へ避難しないのか?」

自警隊の一人がティッタに問い掛けた。

「あたしは屋敷に居ます。
ティグル様がお帰りになられた時、屋敷を無人にしておきたくはないですし、真っ先にお迎えしたいのです」

隊員は、説得しようとしたが、ティッタの瞳を見て止めた。

「わかった。だが避難したくなったら何時でも言ってくれ」

「ありがとうございます」













ティッタは、ティグルの屋敷にいた。

外では喧騒が聞こえる。

自警隊と進攻してきたロケット団が衝突しているのだ。

しかし、自警隊は劣勢。

守備線にも綻びができていた。

ティッタは、屋敷の二階から、その様子を見ていた。

何かしなければ、自分も戦わなければ。

そう思っても、戦った事などない彼女では、恐怖で動くことも叶わない。

唐突に、バン! と扉が開いた音が響く。

「一階…? 誰か入ってきたの…?」

この状況で入ってくるのは…

「ティグル様。あたしに勇気をください」

彼女が階下に降りると、一人の男が屋敷を物色していた。

「どなたですか」

震える声に、男が振り替える。

黒ずくめ、胸にはRの文字…

そして、男の視線は、ティッタの耳と尻尾に向けられた。

「なかなかいい娘だな。頭の下げかた次第では、俺の物にしてやってもいいぞ」

傲慢な、ポケモンを『物』として扱う者の言い様。

「お帰りください」

男は、聞こえなかったふりをして、首を傾げた。

「よく聞こえなかったぞ。田舎者は畜生の躾もへたくそと見える。
そら、もういいど言ってみろ」

「…出ていって」

「なんだと?」

「出て行けって言ってるのよ!」

ティッタは、勇気を振り絞って、叫んだ。

「このお屋敷は、ティグル様の物よ!
貴方みたいな人は指一本触れないで!
それがわかったら出ていって!出てけ!」

「人様に向かって、よく言った物だな畜生風情が」

男が、腰に着けたボールを投げる。

出てきたのは一振りの剣。

男はその柄を握り、強引に引き抜いた。

「この俺に対する暴言が、どれ程重い罪なのか、身をもって知るがいい」

男が踏み込み、白刃が煌めいた。

ティッタのスカートが切り裂かれる。

「どうした?早く逃げないと今度は足を切り裂くぞ?」

ティッタは階段を駆け上がり、ティグルの部屋に飛び込んだ。

震える手で、閂をかける。

「(閂だけじゃ、直ぐに入られる…)」

ティッタは、クローゼットを開き、その一番下の戸棚を開けた。

そこから、大振りのナイフを取り出す。

辺りを見回し、壁に架かった弓を握る。

バルコニーへ出ようとした時。

扉が蹴破られた。

「もう追いかけっこは終わりか?」

男は部屋に踏み込みティッタが持っていたナイフを弾き飛ばした。

そうして、一閃。

鋒は、今度はティッタの胸元をかすった。

彼女は弓を抱き込み、胸元を隠す。

「ティグル様…」

「なんだ?お前畜生の分際で飼い主に想いをよせてでもいるのか?」

男が剣を…剣のようなポケモンをティッタに突きつける。

「こんな時に居ない主など、何になる?
お前は捨てられたんだよ」

ティッタは、男を真っ直ぐに睨み付ける。

「ティグル様は、ティグル様は…きっと来る!」

「勇ましい事だ。精々俺の下で喘ぎながら主人の名を呼ぶがいい」

男は、ティッタの肩を掴んだ。

彼女は、泣きそうになりながら、心の中で、ティグルの名を呼んだ。

唐突に、風が裂かれた。

続いて、鈍い音。

そして…

「っアアアアアァァァァァァァァ!?」

悲鳴。

ティッタが目を開けると、黒ずくめの男の手に矢が突き刺さっていた。

「ティッタ!」

そうして聞こえてきたのは愛しい主の声。

「ティグル様!」

ティグルは、オレンジの体に白い鬣の獣を走らせ、向かってくる。

「飛べ!ティッタ!」

彼女は、その言葉に従い、バルコニーの柵を飛び越えた。

だが、そこで、少年の駆る獣が、躓いた。

少年は、己の身を省みず、その小さな体躯を跳躍させた。

空中で、ティッタの体を抱き抱え、直ぐ様自分を下にする。

二人が、来る衝撃に強張らせるが、来たのは、優しく包み込む風だった。

「娘一人の為に無茶をするものだ全く」

辺りに響く凛とした声。

放ったのは、白銀の髪をなびかせる、戦乙女だった。
 
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