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蒼穹のカンヘル

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十四枚目

 
前書き
セルピヌスのCVは特に決めていませんが一応女性です。 

 
3:00a.m.

「ん…ああ、遂に来たか…セルピヌス」

『ああ、解っているとも』

「う、うぅん…かがりぃ?」

「おっと…起こして悪いな、ヴァーリ。まだ暗い、寝とけ」

「んー、わかったー…」

これでいい、ヴァーリは関係無いからな。

「セルピヌス…時間を考えずに訪問してきた礼儀知らず共を、文字通りぶっ飛ばしに行くぞ」



グルン、と視界が周り、境内に立つ。

目の前には白装束の男達。

「やぁやぁ、姫島本家と分家の主力の皆々様。
こんな夜更け…じゃないか、こんなにお早く何の御用で?」

「貴様が篝か」「穢れた者め」
「フンッ、所詮は姫島の面汚しの子よ」
「お前に罪は無い、母を恨むのだな」

あー…ヤッチャッテイイヨネェ…

『抑えろ、当初の目的はどうした』

「なぁ、あんた等」

「なんて口のききかただ」
「育てた者の未熟さが見えるようだ」

はぁ…

「もういいや、いくよセルピヌス」

ガラスにヒビが入るような音を発てながら、俺の体が淡く光る結晶に覆われていく。

最後に、ガラスが割れるような甲高い音がして結晶が弾ける。

「な、なんだ!?」「ええい!妖しき技を使いおって」「こけおどしか!?」

アポートを使いローブを纏う、ジュスヘルがくれた物で補助具の役割がある。

「大八島を創りし大和の神々よ
幽冥に住まう明王よ
大地を走る龍脈よ
自然の権現たる精霊よ
世界を廻る七曜よ
そして我等と在る山川草木よ
我に力を
我等を侵す者を排せよ
クー・リ・アンセ!」

神社から光が溢れ出した。

「貴様!何をした!?」

「うるさいよ、黙れ有象無象」

「なにぃ?貴様!我等を愚弄するか!」

「ああ、もう、いいから…吹っ飛べ」

そして銃声のような音が鳴り響き…

姫島の主力は吹き飛ばされた。

「おぉ…凄いなコレ…教わっといてよかった」

クー・リ・アンセ。

彼の世界に於ける<新たなる神話>の主神。

その従者の使う業から名を取った。

ジュスヘルの結界を俺でも扱えるよう再編した物だ。

『それは人間相手だからだ。
お前の父やアザゼル、サハリエルのような者なら拳一つで容易く破るだろう』

「わかってるよ」

『三大勢力の上級以上の存在や多神教の神々には恐らく破られるだろう。
この結界も万全ではない、事実アザゼルに破られた。
その事を、忘れるなよ篝』

とジュスヘルも言ってたからな。

「さぁ、セルピヌス。あの馬鹿者共とOHANASIしにいこうか」

『殺してはならんぞ。その年で手を汚す事はない、それもあの様な者の血で』

「ありがとう、セルピヌス」

俺は結界の外へ向かった。










ザクザクザクザク…

「いよぅ…姫島本家当主殿」

「貴様ぁ…」

「アンタ等は母さんと姉さんと俺を殺しに来たんだろう?」

「……………」

「沈黙は是と取るぞ」

「ああ、そうだ」

「俺達から手を引け、クー…あの結界がある限り、お前達は俺達に手を出せない」

突然、鈍い音が鳴り響いた。

「あ…れ?」

視線を下げると、俺の心臓を白刃が貫いていた。

「はは、はははは!殺ったぞ!穢れた血め!」

背後から別の声が響いた。

ああ、成る程、刺されたのか。

だが、それがどうかしたのか?

「何かしたか?」

白刃が結晶に覆われていく。

「な、な、何が!?」

結晶が砕けた後には何もなかった。

そう、何も。

俺の心臓を刺した刀も。

俺の胸の傷さえも。

「ば、化物めぇ!」

「なぁ当主殿、コレはそういう事で良いんだな?
いや、そもそもそちらは此方を殺しに来てたのだから当たり前か…
遠慮無くやらせてもらおうか」

俺の背後の男の両腕が結晶に侵される。

「ヒ、ヒィィィィィ!?」

「殺って良いのは、殺られる覚悟が有る奴と、逃げ切れる自信が有る奴と、やられない自信が有る奴の三者のみ…と、俺は考えるが…
アンタはどれだ?」

そして結晶が男の腕もろとも砕け散った。

「ギィィィヤァァァァァァァァァァ!!」

男の両肩、先程まで腕が繋がっていた部分から、噴水の如く血が吹き出す。

『おい!篝!』

「安心しろ…殺しはせんよ…と、言ってもこのままじゃ失血死確実か…」

男に手を向け、指を弾く。

「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!……あぁ…」

男が気絶し肉が焦げるような匂いが立ち込める。

「さぁ、次はアンタの番だ。当主殿」

そう言って当主の方を向いた時だ。

何かを叩いたような鈍く大きな音が響いた。

「なんだ!?新手か!?」

「くく、くははははは!」

「おい!テメェ!何をしたんだ!」

「利害の一致だよ」

「利害だと!?」

いったい誰と、そう聞こうとしたができなかった。

何故ならクー・リ・アンセが、硝子の如く破られたのだから。
 
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