ランス ~another story~ IF
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第8話 初めての魔人戦
前書き
~一言~
少々 修正しました!
最初の方に、五十六さんとユーリさんの子供の名を原作のまま 乱義としてましたが…… それを勇義に変えました! 流石にランスの子じゃないのに、その名は………と思いましたので。しつれいしましたーー!
じーくw
ホーネットと別れた(逃げた?)ゾロは 透明化魔法を改めてかけ、そのまま山道を引き返していた。
『傍から見れば結構薄情だよな……。今のは』
それは一体何のことか? と聞かれれば当然ながらホーネットの事だろう。信頼し笑顔を浮かべ、傍にいると安心する……とまで言っていた彼女に黙ってきたのだから。……そのまま置いてきたのだから。見られていたらまず間違いなく『この甲斐性無し』と罵られること間違いなしだ。
「確かにな。だが 判っているだろう? ……ホーネットは間違いなく気付いている。ミラクルや魔想志津香、ヒトミたちと同等かそれ以上に。ある程度気付いているが それでもそれ以上追及はしてこない。あのまま一緒にいるのは 彼女にとっても悪い。……まだ、言えないのは違いないのだから」
『それは判ってる。……心苦しさを言えばオレも判ってるつもりだ』
「……くく。鈍感だ鈍感だと言われていたあの頃が本当に懐かしいな、主よ」
『やかましい! 変な事言うな!』
山道中。誰もいない(見えない)場所に声が聞こえてくる……ちょっとしたホラーになっているが、此処には誰もいないので良しである。
「まぁ…… ホーネットの元から去った理由は他にもある」
『ん……。 感じたか?』
「ああ。中々厄介なものと一緒にな」
少しばかり表情を険しくさせたゾロは 音も無く足早に下山していくのだった。
~ 翔竜山 中腹 ~
場面はエールたち。
エールたちは 魔王ランスのいるアメージング城へと続く山道が巨大な門によって塞がれているのを発見した。押しても引いても攻撃してもビクともしない巨大な門。その傍には5つの穴が開いた巨大な石碑があった。ご丁寧に説明文も添えてあり、簡単に言えばこの門は 5つのオーブを揃えてはめ込まないと開かない。つまり先へと進めない……と言うものだった。
オーブは母クルック―に指示されていたものだから 大体理解できたのだが 勿論今持ってる訳がない。
諦めて帰ろうか? と頭に過ったのだが 長田君が先へと敢行。此処まで来る間生きた伝説と称されるアームズ・アークと出会い、更にはドラゴンを倒し、竜殺しと長田君が興奮し…… 諦めきれない、との事で周囲に抜け道がないかどうかの確認に向かったのだ。
でも行けども行けども抜け道の類はない。ただただ険しい山道だけだ。門の先の道へと行こうものなら、下に降りて 断崖絶壁をロッククライミングしないといけないだろう。そんな事、標高を考えたら出来る訳もないし、翼をもたない人間ではどうする事も出来ない……と結論付ける事が出来たのも遅く無かった。
「うぅーん……、こりゃ 抜け道とかなさそうじゃね?」
「………門がある以上きっと抜け道はないと思うよ。だって、あったら門の意味ないし」
「うっ…… 言われてみればそりゃそうだよな……。わざわざあそこに門つくるくらいだし、抜け道のありそうな場所じゃない……よなぁ」
エールの説得力ある言葉に、うんうん頷きながら納得する長田君。
でも、冷静に考えたら思うところが長田君にはあった様だ。
「って! 判ってたなら言えよ! 最初から!」
「……と言うかさ。ボクやロッキーさん。アームズさんよりも先々に行ったの長田君なんだけど」
「ぅ……。でもよぉ! それを止めんのがエールなのっ! ソウルフレンドとして当然なのっ!」
エールは理不尽な事を言われている……と思い抗議するよりも先に手が出た。
勿論、暴力の類ではない。ただ、なみなみ注がれている味噌汁を長田君の頭の上に置くだけだ。
「ふぉぉぉ!! うわわ、あ、あちっ、あちちっ!! ちょっ、あぶなっ! ば、バランス……むずっっ!❓ わ、わるかった、オレがわるかったー、これ退けてーーーっ!」
なみなみと注がれている味噌汁に加えて、非常に足場の悪い山道。零さずにキープしきる事など出来る筈もなく、長田君のヘアーが味噌汁で濡れる事になってしまって、早々にギブアップした。
ある程度したら満足したのか、エールはそれを退けてあげた。
「あちち……、酷い目にあった。偏にオレが結構理不尽なこと言ったのは判るけど、エールの方がひどくね?? あー、オレのナイスヘアーがぁぁ……」
さっさっと、髪を整える長田君。
その時だった。
「ふむ……。マズイな。もっと酷い目に合う事になる。これなら清十郎と共に来ていれば良かったか」
「……へ?」
「ど、どうしただすか?」
「?」
アームズの不吉な発言に皆の視線が集中する。
その時だった。
「全員! 後ろへ跳べっっ!!」
アームズは後方の坂道を指さし、指示を出した。
「うわわわわァァぁ!!」
「なななな、なんだすかかぁぁぁぁぁ!」
「わーーーっ!」
勿論 アームズが指示出して、そして息の合った連携プレイの様にチームでバックステップ回避! と出来る筈もない。全員が動いても無かった為、少々強引にだが アームズが全員を思い切り突き飛ばした。
ゴロゴロゴロ~と転がり落ちていくが、そのおかげで回避できたのだ。
「がぁぁぁぁぁぁ!!! ここかぁ!! ここが魔王の城かぁぁああ!?」
突如 直ぐ横の岩山の中から突き出てきた巨大な拳を。
「きゃーーーー!?!? 痛いけどそれどころじゃねーー。なにあれーーー!」
長田君が悲鳴を上げる。
突如現れたそれは、パワーゴリラを更に改造した様な数メートルはある体躯を持つ巨体の化け物だった。
恐らくは今の今まで槌と岩の山の中を直接掘り進めてきたのだろう。その息は荒く、狂暴さを際立たせていた。
その真っ赤な女が周囲をぎょろぎょろと忙しなく動き、窺う。
「違ぇ……、全然違ぇじゃねぇかぁ……。ここは、どこだ…… どこなんだぁぁぁぁぁ!! ぐああああ、イライラするぜぇぇぇ!! あ゛あ゛あ゛!!! イライラするぜぇぇぇぇぇ!!」
巨大な拳は岩をあっさりと砕き、地震を引き起こすかの様に地を揺らせた。
そして、その化け物の瞳にエールたちが映る。
「……何見てんだよ。…………ア?」
「ひっ!?」
長田君のみ悲鳴を上げているが、他のロッキーもエールも平常心ではいられない。先程のドラゴンが霞む程の強さを内包するであろう化け物が突然現れたのだから。それも、アームズが庇ってくれなければ、あの拳でどうなってしまっていたか判らないのだから。
「今テメェだ! そこのテメェだよ! テメェテメェテメェテメェだよ!! 今見てただろうが、テメェぇえぇええ! テメェ、誰の許しを得てこのオレを見てやがった!!!」
「きゃあああーーーー!!!」
長田君はエールの影でガタガタと震えている。
長田君が恐怖で怖がってくれているおかげで、エール自身が少し落ち着く事が出来たのかもしれない。母の教えを思い出し、敵の出方を見極めようと集中する事が出来た。圧倒的な実力差がある事は判るが、何もしなかったら死ぬだけだから。
「ちっ……、やはりお前か。私のモンスター検知器の数値がでかすぎると思ったが」
アームズは手に持った丸い機械の様なものを見てそう言っていた。
どうやら、壊れてしまった様だ。先程の一撃で砕いた岩盤の破片が突き刺さり、小さな煙を上げていたのが分かったから。
「ここまで近づかないと反応しないとは、少々欠陥品だった様だ」
アームズは、未練はない、と言わんばかりに相応のアイテムであろうその機会をぽんっ、と放り捨てた。そして改めてこの化け物を見る。
「……魔人DD」
「……そ、それってランス様の……」
「ああ、鬼畜王戦争で魔王ランスが生んだ魔人の生き残り。最後の一体だ」
悠長に説明する暇はないのだがな、とアームズはその後付け加える。
「ひぃぃぃー! そ、その通りだすよぉぉ!! ヤバイだす!!」
「きゃーー、殺されるぅぅう!!」
両手を上げて怯えるロッキーと長田君。
「エール。今動けるのはキミだけの様だ。……出方を伺え。アイツは力こそは凶悪だが、いつも怒っているからか、単調だ。……一撃も喰らうなよ」
「……はいっ」
エールも腰を落とし、素早く動ける様に備える。アームズはそれを見て少しだけ安心出来た。他の2人は兎も角、エールは法王クルック―とユーリ・ローランドの息子。戦う術は持ち合わせている事をアームズも知っているし、ドラゴンを倒した所も見ている。ただ足手まといなだけ……ではないだろう。この窮地を脱する為には動ける者が1人でも多い方が良い。
それに、何よりアームズは 死なせる訳にはいかない……と思っている。あの男の息子なのであれば、猶更だ、と。
「コラァぁぁぁあ!! テメェら!!! ぜってえええそこ動くんじゃねぇぞぉぉお!! 頭から喰ってやるからよぉぉ!!」
魔人DDは 大口開けながら迫ってくる。
「っっきゃぁぁぁ!! くるくるくるくる-----!」
長田君は狂った様に回りだした。
くるくるくるー、とはどうやら回る事の様だ。『来る』ではなく。
「そんな訳あるかっ!! って、マジでやばいやばい! 魔人はやばいってぇえぇ。えーーるーーー、やばいってぇぇぇ!」
さっきまで、エールだったら魔王くらい~ と言っていた長田君だが アッという間の掌返しだった。 エールの影で震える長田君。ロッキーも震えているが、それでもランス達と形ばかりではあるが冒険をしてきた間柄。何度も死にかけたその経験を活かし、何とかせめて盾にでもある為に、と踏ん張った。
そんな時だ。新たな乱入者が来たのは。
「ふんっ!!」
ずどんっ! と言う衝撃音と共に煙が沸き起こる。
「きゃあ!今度は何何ーー!」
エールたちと魔人DDの間に割り込むように、空から何かが地面に激突して現れた。
「まったく、次から次へと。サイゼルと二手に分かれて良かった。戯骸の次はお前か、DD。どうして翔竜山には呼んでも無い客がこんなにも多いんだか……」
現れたのは新たな魔人。
「……今度は彼女か。益々清十郎を連れてくるべきだったな。ぬかった」
魔人の正体をいち早く確認したアームズ。
魔人が更に2体目。まさに絶望と言えるが、せめてもの救いは魔人DDと協力関係ではない、と言う事だろう。
「う、がっ……、お、まえ…… 魔人、サテラ……」
「控えろ、DD。これは魔王様の命でもある! 此処から先に進めば、お前の命の保証はないぞ!」
「……まじ、……魔人、サテラ……、サテラ…… サテラサテラサテラサテラサテラサテラサテラサテラサテラサテラ!!!!! がーーーーー!! なぜだ!? 何故俺が命令されなきゃならねぇんだ!! がーーーー、ただ! オレは!! 魔王をぶっ殺したいだけだぁぁぁ!!」
DDは新たに現れた魔人サテラの言葉にはち切れそうなまでの怒りをぶつける様に地面を殴りつけた。まさに震天動地。地を揺らせる程の衝撃により、傍にいたエールたちはたつ事すら出来ず、地に膝を付けた。
「オレのイライラはなぁぁ! あのくそったれの魔王を殺さねぇと消えねんだよぉぉお! 魔王の前菜だ! 先にテメェを噛み砕いてやらぁぁああ!」
地を更に大きく揺らしながらサテラに突撃する……が、サテラはさして慌てた様子は見せない。これが戦闘経験の差。如何に強大な力を持って生まれようが、サテラにとってはDDはまだまだ未熟。絶対的な余裕がそこにはあった。
「ったく、うるさいな……。だからサテラはお前が嫌いなんだ。やれやれ。ランスのヤツもなんでこうも……っとと。流石にこの山の中じゃ不味いか……」
サテラは口をふさぐ様に手を当てた。
魔王の名を呼び捨てで呼ぶ……と言うのは無礼極まりない行為。でも、元々サテラは今でこそ魔王に従う素振りを見せているが、実の所どうでも良くなってる部分もあったりする。……でも 魔王と魔人は絶対服従なので、命令された以上は働かなくてはならないのが辛い所だった。
「シーザー、イシス。そいつを落とせ。下山だ」
「ハ。サテラ様」
「………」
シーザーとイシス。サテラのガーディアン。
その戦闘力はサテラに匹敵する程のものであり、たとえ使途であっても魔人DD程度であれば遅れは取らない。
魔人DDの衝突を正面から受け止めた。
「がああああああああ!!! イライラする! そこをどけどけどぇええええ!!」
「サテラ様ノ命令ハ、絶対!!」
「………ッ!」
ましてや2対1。
魔人DDが抗える筈もなく、そのまま突き落とされた。
「じゃあな。二度とここへは来るんじゃないぞ」
落下しながらも魔人DDは叫ぶ。
「がああああ!! イライラすんぜぇぇぇ!! サテラぁぁぁぁ、テメェも絶対殺してやるからなぁぁぁぁぁ――――……………」
軈て、完全に声も姿も届かなくなった所でサテラはため息をついた。
「まったく……、イライラさせられるのは、こっちのセリフだ。お前なんかの為にどうしてサテラがこうも命令通り動かないといけないんだ。戯骸といい、お前と言い……。まぁ どっちもランス…… 魔王様が嫌いな奴らだから仕方ない、か。はぁ、メンドクサイ」
サテラがDDを落としてくれたおかげで、大きなプレッシャーの1つが消えた。
「……こ、これってもしかして…… オレたち、助かった……?」
長田君がそう思ってしまうのも無理はない。
好戦的で、狂暴なのはDDの方でサテラの方は自分達は眼中になさそうだったからだ。
でも、その期待は淡く消える。
「で、お前らはなんなんだ?」
「ひーーっ! こっち見たぁぁ!?」
しっかり見られてしまっていたのだ。
エールはサテラの眼を見て応える。
「魔王に会いに来た」
サテラはそれを一瞥しただけで、ふんっ と息を荒げた。
「別にどんな用だろうとどうでもいい。……一応、命令の1つだ。ここは魔王様の領地。無断で入る人間は理由の如何に関わらず、殺す」
やる気こそなさそうだが、その絶対的な殺気は健在。魔人の殺気をその身に浴びた。
「きゃーーー! 気のせいだったぁぁ、全然助かってないーーー!」
長田君は悲鳴を上げる。
それが始まりのゴングだった。サテラは鞭を自在に操り、エールたちに攻撃した。
ばちんっ!! と当たった場所の地面がまるで豆腐の様に潰れた。凄まじい威力だ。
「人間では魔人に敵わん。無駄に構えるな。とっとと死を受け入れろ」
「ふん。それはどうかな……?」
その間に立つのがアームズ。腰に刺した刀…… 日光を構えた。
「む、それは……」
「そうだ。聖刀日光。魔人の天敵だ。当てるだけで良い。……少しでも当てるだけで……」
サテラとの間にあった見えない壁が、ぱきゃっぁぁん! と言うガラスが砕ける様な音と共に砕け散った。
「魔人の無敵結界を無効化できる!」
「くっ、厄介な代物を……」
サテラは忌々しそうに日光をにらみつける。
「さぁ、ここからが本番だ。ぬかるなよ、お前達」
「はいっ!!」
「ひーーー 死ぬぅぅぅ!!」
「怖い怖い怖いだすーーーーっ」
エールは生まれて初めて魔人戦を体験する事になるのだった。
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