ヤクザ映画を観て
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第三章
「言うわ」
「やれやれ、本当に観るのね」
「今からね」
こう言ってだ、美紀は信義なき戦いのシリーズの視聴をはじめた。舞台は終戦直後の呉からはじまってだった。
広島を舞台にしたヤクザ者達の抗争が描かれていった、裏切り裏切られ信義も仁義も何もなかった。その中で多くの俳優達がそれぞれの演技を魅せていった。
美紀はすぐに真剣に観る様になりコーラもお菓子よりもそちらに熱中する様になっていた。そしてだった。
時間を見付けては観ていって休日も利用してマーシャルアーツのトレーニングも学業も欠かさなかったが熱心に視聴した、そうしてだった。
五作全部観終わってだ、美紀はクラスで友人達にこう言った。
「正直な感想言うわね」
「ええ、どうだったの?」
「面白かったの?」
「そうだったの?」
「名作って言われるだけあるわね」
美紀はまずはこう言った。
「演技も演出もストーリーも撮影も場面の細部の設定もね」
「全部なの」
「いいの」
「そうなの」
「確かにヤクザ映画だけれど」
そうした悪い世界を描いているがというのだ。
「そうしたもの全部しっかりしていて出ている役者さん達がよ」
「そっちはね、私も知ってるわ」
「私も」
「私もよ」
友人達もキャストについては口々に言えた。
「有名だからね」
「錚々たる顔触れだからね」
「もう伝説って言っていい位に」
「凄い人達出てるわよね」
「それだけのものはね」
そのレベルに至っている映画はというのだ。
「そうそうないから」
「レベル高いっていうのね」
「映画の出来は」
「そうだっていうの」
「そう、ヤクザ映画はこれまで観たことなかったけれど」
それでもというのだ。
「観てよかったわ」
「ヤクザ映画でもなのね」
「面白いものは面白い」
「そう言うのね」
「そうよ、面白かったわ」
笑顔で言う美紀だった、このことは事実だと。
「五作全部見ごたえがあったわ、じゃあ次はね」
「次は?」
「次はっていうと?」
「前から考えていたけれど」
こう前置きしての言葉だった。
「男は厳しいよのシリーズ観るわ」
「漢はなの」
「あれ観るの」
「マドンナに毎回振られるフーテンの人」
「あのシリーズ観るの」
「そう、観るわ」
美紀は友人達に笑顔で答えた。
「全作ね」
「頑張ってね」
「あのシリーズ凄い数になってるけれど」
「それでもね」
友人達は美紀に今度はすぐにエールを贈れた、ヤクザ映画の時とは違って。だがそえでも言うのだった。
「渋いけれどね」
「あのシリーズもね」
「女子高生が観るには」
「それでもね」
「ええ、面白かったらね」
ここでもこう言った美紀だった。
「観るわ」
「そうするのね」
「今回も」
「ええ、そうするわ」
美紀は笑顔で言ってだ、そしてだった。
美紀はそのシリーズも観るのだった、彼女にとって映画はまさにどんなジャンルでも面白ければいいのだった、大事なのはこのことだった。
ヤクザ映画を観て 完
2018・4・21
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