レーヴァティン
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第五十一話 川旅その一
第五十一話 川旅
久志達は海を行き来する様な大きな船に乗り込みそのうえでハンブルグからヴェネツィアに向かうことにした。
その船旅がはじまってだ、久志は船の外を甲板から見つつ言った。
「マジで海みたいだな」
「そうだな」
共にいる芳直が頷いて応えた、二人は共に川の方を見ているのだ。
「この川はな」
「相当な川幅だな」
「しかもな」
「ああ、地図を見ているとな」
「その距離もかなりだよ」
長居というのだ。
「これがな」
「そうだよな」
「この島で一番長い川だからな」
それだけにというのだ。
「相当に長くてな」
「その終点にヴェネツィアがあるか」
「ああ、そうなってるんだよ」
「そういうことだな、じゃあ長い旅になるか。いや」
自分で言った言葉をだ、久志はすぐに否定して言った。
「船だとな」
「ああ、むしろ馬で進むよりもな」
「速いからな」
「昼も夜も進むからな」
馬と違ってだ、夜は人は休むが人を乗せている馬も休む。そしてこのことが時間的にはかなり大きいのだ。
「船足も遅くないしな」
「これは普通か」
「魔力で動いているんだよ」
彼等が乗っているその船がというのだ。
「だからな」
「船足もあってか」
「ずっと進むからな」
「馬で進むよりも速いからな」
「結構早く着くぜ」
ヴェネツィアにとだ、芳直は久志に笑って話した。
「この話は船に乗る前にしたしな」
「そういえばそうだったな」
「だからな、ヴェネツィアには結構早く着くぜ」
「そして着いたらな」
「ああ、ミラノだ」
ヴェネツィアからその街に行くというのだ。
「そうしような」
「それじゃあな、しかしな」
「しかし?」
「いや、ミラノに行ったらな」
その時のこともだ、久志は芳直に話したのだ。そしてその話はどういったものであるかというと。
「八人目か」
「ああ、若ししたらな」
「どんどん仲間が揃ってくな」
「順調にか」
「そう言っていいか」
「そうだろうな、けれどな」
「ああ、十二人揃ってもな」
それでもとだ、久志はわかっていた。それでその十二人のうちの一人である芳直に対して言うのだった。
「それで終わりじゃねえな」
「むしろな」
「十二人揃ってからだよな」
「そこからはじまるんだよ」
「この島を統一してな」
「海の魔人を倒すことがな」
「そうだよな、海の魔人だな」
「まだ全然わかってないな」
「一体どんな奴なんだろうな」
彼等が今いる空に浮かぶ島の下に広がる広大な海を支配するこの魔神はというのだ。
「果たして」
「相当に強いのは間違いないな」
「それはな」
久志もわかっていた、このことは。
「魔神っていう位だからな」
「海の下に世界を眠らせていてな」
「相当な奴なのは間違いないな」
「そのことはな、しかしな」
「海の魔神自体のことはな」
デルフォイのどんな文献にも島に伝わる伝承でもだった。
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