歌集「冬寂月」
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三十六
春の夜の
夢も絶へなむ
暁の
想ひ侘しき
有明けの月
春の夜は想いを巡らせるには短すぎて…夢を見たかと思う間に夜が明けてしまう…。
痛む胸は寂しさを纏い…ため息をついて窓を開ければ、暁の空に月が残る…。
まるで想いが残り続けるかのように…。
有り明けに
目覚め飛びてや
鳴く鳥は
誰そ想ふや
追ふ影もなし
夜が白み始めれば、あちらこちらから鳥の囀ずる声が聞こえてくる…。
近く…遠く…一体、誰を想い鳴いているのだろうか…。
羨ましいものだ…私にはもう追い掛ける影もないのだから…。
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