FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
親子
前書き
この小説の投稿を初めて3年ほど経ちましたが、初めて一週間での投稿スパンが途切れてしまいましたorz。
ここからなんとか立て直していきたいけど・・・どうかな?
睨み合っているゼレフとメイビス。静寂な時が流れていたその空気を破ったのは、呪われた青年の方だった。
「君とこうして会うのは100年ぶりくらいかな」
「95年ぶりです」
「僕は君の声も存在もずっと感じていたよ」
「・・・」
感傷的なゼレフに対し、メイビスは頭の中にある考えを纏めるのに必死だった。
(私にはゼレフを倒すための最後の策がある。一つ目の条件は私の体・・・本体が必要なこと。
そしてもう一つの条件が・・・理屈はわかっているのに・・・難しい)
何かをしようとはしているがそれができずにいるメイビス。すると、突然ギルドの気温が下がり始め、彼女の体が凍り始める。
「体が・・・ああ・・・」
「やめるんだ、インベル」
ゼレフはその行動を起こしている人物が誰なのかすぐにわかった。ギルド内にはいつの間にかもう一人、銀髪の青年が入ってきていた。
「陛下・・・その娘との関係はお察ししますが、彼女は妖精の心臓そのもの。もし・・・その魔力を使われたら」
優勢であるはずの戦いが一気に負け戦へとなってしまう。それを危惧したインベルはそのような行動に出たのだが、ゼレフはそれをよしとしない。
「妖精の心臓が使ってはいけない魔法だということはメイビスが一番よくわかっている。たとえ僕を殺すためでも使うことはないよ」
「しかし・・・」
「メイビスは長い間・・・身動きのできない水晶の中にいたんだ。また体の自由を奪うなんて心が痛むよ」
「・・・」
自らの皇帝の甘さに厳しい顔つきのインベル。だが彼はゼレフのことを深く尊敬しているためか、彼に名前を呼ばれるとメイビスの体を元へと戻す。
息が大きく乱れているメイビス。落ち着きを取り戻そうと必死の彼女に、氷の首輪がかせられた。
「これは・・・」
「体は拘束しませんが心を拘束させていただきます」
インベルの魔法により持ち前の思考力が著しく低下し、フラフラとしているメイビス。それを見たゼレフはインベルの顔を見つめている。
「仕方ないな。君は本当に心配性だね」
「国の執政官として当然の判断です」
これによりメイビスは自らの意志で魔法を使うことはできない。メイビスはただグルグルと回っている自らの思考に目を回しているだけだ。
「メイビス、ついてきてくれるかい?」
ゼレフにそう言われると、体が勝手に彼の後についていってしまう。二人はギルドから出るとそこに広がっているのは、巨大な岩山にある妖精の尻尾のギルドと、それを守るべく四方八方を塞いでいるアルバレスの軍隊の姿だった。
「君の仲間たちはギルドと君を取り戻すためにここに向かってくる。果たして突破できるだろうか」
妖精の尻尾の魔導士・・・他のギルドを合わせても遠く及ばない敵の物量に目を見開いているメイビス。さらに彼女は、自らの回りにいる巨大な魔力の持ち主たちに背筋を凍らせていた。
「それは無理ね。下界の者がこの堕天使ヨザイネを倒すことなどできるはずがないわ」
「敵に大きな戦力は残っていないだろうし、私たちまで辿り着けないんじゃないかしら?」
灰色の髪をした少女と黒髪の少女がそう言う。二人とも勝ちを確信しているからなのか、イマイチやる気が見られない。
「ランディ」
「マリー」
そのすぐ隣では再会を果たしたディマリアとブランディッシュが言葉を交わしていた。
「捕まったんだって?ひどいことされなかった?」
「うん」
ブランディッシュに歩み寄るディマリア。普段は憎まれ口を叩いている彼女が突然、目の前の相手を抱き締めた。
「もうひどいこと言わない!!だから一緒にあいつらぶっ殺そう!!」
「・・・」
ディマリアは本当はブランディッシュのことを溺愛していた。ただ、素直になれない性格だからなのか彼女に厳しい言葉を投げ掛けていたが、命の危険に晒されてようやく素直になったらしい。
ただ、ブランディッシュはそれに困惑しており、言葉を失っている。
「陛下、16のうちこの場にいない8人は死亡が確認されました」
「うん。知ってるよ」
16を全員集めるようにとゼレフは指示を出していたようだが、それは叶うことはなかった。なぜなら半数がすでにこの世界にいないのだから。
「ティオス、君がやったんだね?」
「??それが?」
厳しい視線を向けてきたゼレフに対し飄々とした様子で答えるティオス。その彼の顔を見てメイビスは驚いていた。
(え・・・彼は・・・レオン?)
大魔闘演武で自らの予想を大幅に上回る実力を見せつけた少年と瓜二つな青年。それがどういうことなのかわからない彼女は呆然としている。
「ティオス、貴様には友という概念がないのか?」
真っ赤に変色した肌をしているオーガストの睨みはこれまでのそれとは比にならないほどに圧力を感じる。しかし、当のティオスはお構いなしだ。
「友?俺とお前らは利害が一致してるから手を組んでるだけなんだろ?そもそもお前らが俺らを仲間扱いしていないんだから、文句は言わせねぇぞ」
睨み合う二人の雰囲気はまさしく険悪。ピリつく空気だったが、オーガストがため息をついて視線を逸らしたためこの場は納まった。
「100万の兵、いつ見ても壮観ですわね」
「アイリーン」
ゼレフに歩み寄る一人の女性。彼女の魔力を感じ取ったメイビスは背筋を凍らせた。
「ユニバースワンの件は不問にしておく。むしろよくやってくれた」
「あら・・・お尻を叩かれるくらいの罰は覚悟していましたのに」
「君にやってほしいことは分離付加だ」
「わかってますわ。その娘の中にある妖精の心臓を取り出すのね」
その言葉にメイビスは驚愕した。そんなことができるわけがないと彼女は考えていたからだ。
「アイリーンは魔力を使われたら付ける、外すの天才なんだ」
彼女の思考を読みきったゼレフがそう言うと、メイビスは回らない頭の中がさらに焦りで思考が追い付かなくなる。
「さすがに時間がかかりそうね」
「うん・・・任せるよ」
アイリーンはメイビスを連れてギルドの中へと入っていく。それを見届けたゼレフは100万の兵たちを見下ろした。
「こっちは完璧な布陣だ。向かってこれるかい、妖精の尻尾。
君たちに明日は与えない」
メイビスがピンチに陥っているその頃、妖精の尻尾側にも動きが見えていた。
「シャルル!!大丈夫!?」
「ええ!!」
「セシリー!!もうすぐだから」
「任せてよ~」
最初にギルドの前にやって来たナツたちがアルバレスの兵たちの中に飛び込んだ頃、シリル、ウェンディもそちらに向かって全速前進していた。
「見えてきた!!」
「うわ~!!何あの敵の数~!?」
遠くから捉えられた彼らのギルド。しかしその前に広がる光景に思わずそんな声が漏れた。
ギルドの前に立ちはだかるのは人の川。まるで絨毯のように大地を黒くしている敵の軍団を見て、口を閉じる。
「シリル!!向こうにナツさんたちがいるよ!!」
「まだナツたちしか来てないのね」
藍色の髪をした少女が指差す先では無数の敵を凪ぎ払っている仲間の姿。それを見た彼らは思わず笑みを浮かべた。
「行こう!!ギルド目指して!!」
「うん!!」
ナツ、エルザ、ルーシィ、グレイ、ジュビアの元へと飛んでいく四人。その間にも彼らは前線を押し上げるべく奮闘している。
「お待たせしました!!」
「俺たちも参加します!!」
「ウェンディ!!」
「シリル!!」
二人合わせて頬を膨らませる。魔力を最大まで溜めた二人の竜はそれを地上にいる敵目掛けて放出した。
「水竜の・・・」
「天竜の・・・」
「「咆哮!!」」
水と風のブレスが突き刺さった地上からは悲鳴が聞こえてきた。どんどん戦力を削っていく妖精の尻尾。そこにさらなる増援が駆けつけてくる。
「ビーストソウル・エイプ!!」
「妖精の尻尾の皆様・・・!!加勢します!!」
「私も手伝ってあげるゾ」
エルフマン、ユキノ、ソラノも合流。その後ろからはマカロフを先頭とした妖精の尻尾の本陣が突撃してきた。
「押せ押せぇー!!」
「「「「「オォー!!」」」」」
気合い十分で押していく妖精の尻尾。その間にもアルバレス軍の戦力はみるみる削られているのだった。
「やっと来たか、シリル」
妖精の尻尾のギルドがある坂の上。そこから相手がギルドを奪い返すためにやってきた姿を見たティオスは、笑っていた。
「あなたも動いたらどうです。みんな行きましたよ?」
そう言ったのは冬将軍の異名を持つインベル。二人の回りには先程までいた仲間たちの姿はすでになくなっている。
「うるせぇな、お前らがどれだけ戦力を削れるのか、それぐらい確認させてもらいたかったんだがね」
動き出した16のメンバーを見てそう言った青年は、深いため息をついた。彼はようやく重たい腰を上げると、額に指を当てる。
「まずは・・・まだ死者の出てないあのギルドを狙うか」
不敵な笑みを浮かべたティオス。彼は意識を集中させたかと思うと、その場からどこかへと瞬間移動してしまった。
「オラァ!!」
「ハァッ!!」
勢い止まらず攻め続けている妖精の尻尾。すると、後ろから現れた無精髭の男が地面を思いきり殴り付けた。
ドゴォ
その瞬間地面が割れてアルバレスも妖精の尻尾も一斉に倒される。その魔法を使ったのは、妖精たちの誇る最強の男。
「待たせたな」
「オッサン!!」
意識を取り戻したギルダーツ。彼は有り余るその力をフルに使いギルドを取り戻すためにやって来た。
「良い魔力を持っておる」
「「「「「!!」」」」」
そこに現れたのはアルバレスの最強の魔導士の一人だった。真っ赤な肌をしたその異様な雰囲気を醸し出している老人に、押し進んでいたシリルたちの手が止まった。
「なんだこの魔力・・・」
「今まで感じたことがないくらいデケェぞ・・・」
他の16の魔力も確かに大きかった。しかし、この男の魔力はそれを遥かに凌駕している。
「スプリガン16筆頭魔導士として、敵を殲滅しよう」
その瞬間、大地が、空気が大きく振動し始める。
「まずい!!一気に来るつもりかよ!?」
「逃げ場がないですよ!!」
どこに逃げても確実に捉えられるであろう広範囲への魔法。だが、それを放とうとする老人に一人の男が飛びかかる。
ドカッ
それに気付いたオーガストはその拳を杖で受け止めた。しかし、勢いを吸収しきれなかったからなのか、彼の足場が大きく割れる。
「ほう」
「あんたの相手は俺がしてやる」
満身創痍の中強大な敵に立ち向かうことを決意したギルダーツ。それに対しオーガストは、魔法を放つが、間一髪のところで交わされる。
「なかなかの身のこなしだ」
「そいつはどうも」
上着を脱ぎ捨てたギルダーツはオーガスト目掛けて突進。その速度はあまりにも早く、オーガストは目の前にまで来ていた敵が視界から消えたことに驚かされた。
ビッ
目にも止まらぬ速さで背後へと回ったギルダーツ。彼は腕を振るって攻撃を仕掛けるが、難なく交わされてしまう。
「フン」
今度はオーガストの反撃。完璧に捉えたかに思われたそれは、手応えが全くなかった。
「ここだ」
「!!」
手応えがなかった理由、それは彼が捉えたのはギルダーツの残像でしかなかったからだ。完全に虚を付いたギルダーツ。彼は得意のクラッシュでオーガストを粉々にする。
「「「「「オオッ!!」」」」」
瞬殺劇に歓声が上がる。しかし、バラバラに落ちていたオーガストの体が、元に戻り始めたのだ。
「これはまた・・・面白い魔法を使う・・・」
「はぁ!?」
何が起きているのかわからない様子の妖精に対し、オーガストは体を再度バラバラにすると、そのまま敵に突進していき、元通りになるとその拳を彼の腹部へと叩き込んだ。
「がっ!!」
近くの岩山に叩きつけられたギルダーツ。彼を吹き飛ばしたオーガストの体に、傷は一つもない。
「私に勝つことなど不可能だ」
彼がそう言った瞬間、オーガスト目掛けて飛んでるカード。それにいち早く気が付いた彼は後方に飛んで回避した。
「不可能を可能にするのが私の親父なのさ」
そう言ったのはギルダーツの娘であるカナ。得意気な表情を浮かべる彼女は、二人の強者の戦いへと割って入った。
「よせ!!カナ!!来るんじゃねぇ!!」
「親子?ほう・・・親子か」
これまでとは格の違う敵との戦いに参戦しようとするカナを止めるギルダーツ。焦る彼とは正反対に、オーガストは不敵な笑みを浮かべていた。
「親子の絆とその絆をわからぬ魔導士・・・さぁ、どちらがこの戦いを制するのかな?」
岩山に登りある少女の動きを観察しているティオス。複雑な関係が織り成す戦いが、さらなる悲劇を生み出すことを、誰も想像していなかった。
後書き
いかがだったでしょうか。
ナインハルトが死んでいるので死者を復活させての16全員集合は叶いませんでした。
なのでオーガストvsギルダーツ&カナが早々に出てきました。次は誰が出てくるかな?
ページ上へ戻る