【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と雄英体育祭編
NO.027 衝突する出久と轟
前書き
更新します。
『さーて、お待ちかねだ! 本日の戦いで注目のカード! 素朴だけど可愛い猫娘、ヒーロー科、緑谷出久! VS その冷えた眼差しは何を映す?ヒーロー科、轟焦凍!!』
プレゼント・マイクの叫びによってまたしても観衆は大盛り上がりを見せている。
二人とも、今日の数々の種目で実力を見せつけてきたのだ。
この盛り上がりは当然の物である。
ただし、様々な力を見せてきた出久に対して轟はほぼ先制で凍り付けてきているだけなので見栄えはどちらがいいと言う疑問は、まぁ話さない方が吉である。
そんな中で出久と轟はお互いに目を合わせながら、
「轟君……この戦いで君に話したい事があるんだ。聞いてもらえるかな……?」
「なんだ……? また左の事か? その件はもう話したはずだが……」
「うん。でも、僕って自分で言うのもなんだけど結構お節介焼きなんだ。だから……轟君には出せる力の全力で挑んでほしい」
「親父に何か吹き込まれたか……? だが生憎とその手には乗らないぞ?」
「違うんだ! でも―――……」
二人が戦闘が始まる前からすでに白熱している様子にプレゼント・マイクも気づいたのだろう。声を上げてきた。
『すでに両雄ともなにかしらの話し合いモードだ! だけどもう始めさせてもらうぜ!?』
それでカウントに入るプレゼント・マイク。
「どう言われようが俺は使わない」
「意地でも使わせるよ!」
二人が構えた瞬間に、『スターーーーート!!』という叫びがなされた。
先に動いたのは……轟だった。
一回戦と同じく開幕でブッパをしてきたのだ。
『いきなりの開幕ブッパ! これにはさすがの緑谷も!?』
『いや、もうあいつはいないぞ』
そう、出久が立っていた場所にはすでに出久はおらず、気づけばステージ右側の方に移動しているのだ。
身体強化・怪力に脚力強化による瞬間移動、加えてワン・フォー・オール15%の三つの相乗効果によって出久はとてつもないスピードで回避を行ったのだ。
「早いな……炎は使わないみたいだが、だが次はねぇぞ?」
轟は次は左右に展開するように氷を展開した。
これなら逃げれる場所はないと普通は思うだろうが、出久はそこでさらに空へと飛び跳ねた。
空へと昇っていく出久はその両手に爪を展開させて、さらには、
「爪牙……炎熱!」
『おおっと!? 緑谷、轟対策なんだろうが爪の個性に炎の個性を上乗せして炎上させた!』
『普通の爪だったら凍らされちまうからな。咄嗟に思いついたんだろうな』
二人の解説とおり、出久の両爪は炎を纏ってそのまま轟君のところまで自然落下していく。
「くっ!」
轟は空に上がっちまえば後は重力によって落ちてくるだけだろうと出久にまるで突き出た氷山みたいな氷を展開した。
だが出久はそれも見越して燃える爪を構えて、
「そう上手くはさせないよ!」
押し迫って上昇してくる氷山を出久はそのまま爪を振り下ろして一爪のもとに溶かした。
一気に氷が溶かされた影響で蒸気が発生するステージ。
地面へと着地した出久は速攻で轟のもとへと駆けた。
ただでさえ狭いステージの中なのだから出久の足ならばすぐに詰めることは可能だ。
だが、それでも轟は氷を展開して出久の接近を拒んでいた。
だが、先ほどよりも氷の出力の展開が弱まっていることに出久は気づいて、出久は足を止めて言う。
「…………轟君。威力が弱まっているよ? それに体も震えているよ? 個性だって身体機能の一つだから使い過ぎれば体が冷えてしまっていってしまう。だけど、炎を使えばそれを解決できるんじゃないかな……?」
そう話す出久の目は轟ばりに少し冷えていた。
「うるせぇ……俺はそれでも親父の個性は使わねぇ……」
「轟君……君の気持ちは分かるよ。でも、エンデヴァーだけに視線を集中してしまって僕達の事を正面から見ていないでしょう……? 気づいてる?」
「そんな事は……」
「そうだよ。だって、今も視線はエンデヴァーの顔色を窺うように観客席に向いている……轟君、お願いだから本気で戦って。僕の事を真っすぐ見てよ!!」
そう大声を上げる出久。
それを観客席で見ていた1-A女子陣はというと、
「ひゃー……デクちゃん大胆だね」
「……? 麗日さん、緑谷さんは轟さんにただ本気で挑んでほしいだけなのでは……?」
「ヤオモモ、ピュアか……。だけど周りで見ていたら捉え方はまったく違って見えるもんなんだよ」
「出久ちゃん、それを自覚して言っているのかしら? やっぱり魔性なのかしら……」
「いや、あれは天然だね。間違いない」
「聞いてて恥ずかしくなるねー」
と、出久の天然トークに気持ち恥ずかしくなっていたり。
そんな少し空気が変わっている中で、
「…………俺の心にずかずかと入ってくるんじゃねぇ!」
まだ轟は氷を展開してきて出久に放ってくる。
だが、威力が弱まってきている状態での氷など今の出久には交わすのは容易い。
だが敢えて出久は真正面から炎を手に宿して特攻を仕掛ける。
氷を溶かしながら前進してくる出久は轟にとって脅威に映るだろう。
そしてついに出久が轟に肉薄する。
爪ではなく拳を握って思い切り轟のお腹にボディブローを見舞った。
「ぐあっ!?」
それでステージ外へと吹き飛ばされていく轟。
だが直前でなんとか氷の壁を展開してリングアウトは免れた。
「くっ……なんでそこまで俺に炎を使わせたがる」
「僕はね。ずっと強くなりたいって思ってきたけど無個性でその夢は絶たれていた。だけど、個性が出て僕は力を得た。
そしてそんな僕を鍛えてくれた人に……自慢できるように期待に応えたいんだ!
でも、轟君は半分の力で全力を出さないで一番になろうとしているのはダメだと思う。完全否定なんてしちゃダメなんだ!」
「うるせぇ! 俺は親父の個性なんて―――……!」
「違うよ! 確かに轟君の個性はエンデヴァーから引き継いだものなのかもしれない。それでも! もうその力は轟君自身の力じゃないか!!」
その出久の叫びに、込められた気持ちに……轟は今まで忘れてしまっていた過去のとある光景を思い出した。
何度もエンデヴァーに修行と称して無茶苦茶やらされて、鍛錬が終わればいつも母のもとへと泣きついていた頃だった。
その時、ちょうどオールマイトの特集がやっていた。
母は轟少年にこう言った。
『でも、ヒーローにはなりたいんでしょ? いいのよ、血に囚われることはなくなりたい自分になったって……』
さらには特番でオールマイトはこう言っていた。
『―――個性というものは親から子へと引き継がれていくものです。ですが大事なのは血ではなくその繋がり……自分の血肉であり、そして自分であるという照明の証……。ですから私は自分に言い聞かせるようにそういう意味も込めていつもこう言ってます。
私が来た!
てね』
轟がいつの間にか忘れてしまっていた情景、それがトリガーとなって、次の瞬間には吹き上がる炎。
そう、轟は左の炎を使っていたのだ。
「俺だって……ヒーローになりたいんだ!!」
そんな光景を目の当たりにした出久は笑みを浮かべながら、
「やっと、気づけたんだね……」
と、まるで慈愛の様な眼差しを自分の事のように嬉しそうに轟に向けていた。
その出久の表情に轟は内心で心動かされるものがあったが、もう今は感情に付き従うだけだ。
外野でなにかしらエンデヴァーが叫び声を上げているが二人には今は届いていないだろう。
「敵に塩を送ったんだから……お前も本気を出せよ?」
「うん!」
出久は全個性を総動員して力を溜める。
轟も全力で振るえるようになった氷を展開していき、左手には炎を宿す。
そして二人は同時にぶつかり合う!
轟の炎の波が迫ってくる中、出久は微かに聞いた。『緑谷、ありがとな』と……。
大量の氷の波が一気に熱で溶けてステージは爆発でも起きたかのように、いや、実際ステージは爆発して衝撃が爆風とともに会場中に広がっていった。
「きゃぁあああああああ!」
「どうなってますの!」
「なにこれぇえええええええ!」
と、ほとんどの人達がその爆風に晒されていたが、次第に収まっていく中で、
『なに、いまの……お前のクラスなんなの?』
『今までさんざんに冷やされた空気が二人の炎の力で熱せられて一気に膨張したんだ』
『それでこの爆風……………どんだけの熱量だよ!……ったく、なにも見えねぇぞ! 勝負はどうなった?』
果たして結果は、少し息切れを起こしているもののしっかりとした二の足で立っているのは出久であり、逆に地面にうつ伏せに倒れているのは轟という光景だった。
己も爆風によって吹き飛ばされていたがなんとか戻ってきていたミッドナイトが近づいていって確認をして、
「轟君、気絶によって……勝者、緑谷出久さん!」
それによって先ほどまでの空気が嘘のように会場が盛り上がりを見せて、こうして第二回戦第一試合は終わったのであった。
後書き
出久ママという概念は果たしてアリだろうか……?
さて、これで原作とは違った戦いが出来そうですね。
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