提督はBarにいる。
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春は〇〇〇の旬の季節です。その1
「しっかしまぁ……よくもこんなに買い込んだなぁ?」
「いや~……それほどでも」
「褒めてねぇよこの酔いどれ重巡が」
俺が叱っている相手はポーラ。そして俺とポーラの目の前には段ボール箱一杯に詰め込まれたパスタの山が鎮座している。しかもその箱の数、7箱。パスタの大山脈だ。パスタ連峰だ。
「この間飲みながらネットサーフィンしてたらですねぇ、スーツ着たおじさんが美味しそうにパスタ食べてるのを見てたら……つい」
「ア〇ゾンでパスタ注文してたと」
しかも深夜+酔っ払いのテンションでロクに数量も見ないで注文したらしく、届いて愕然としたらしい。
「何とかお金は足りたんですけどぉ……消費が追い付かなくて」
「他のイタリア艦の奴等には頼んだのか?」
「頼みましたよぅ……う~、でもでも皆さんお腹が気になるから遠慮するって。ザラ姉様まで」
「まぁパスタってカロリー高いしなぁ」
乾麺の状態のパスタ(スパゲッティ)100gのカロリーは、約378キロカロリーあるとされている。これは同じく茹でる前のうどんや蕎麦の約4倍近い。食べ過ぎるとバルジ増加(意味深)不可避だ。
「まだまだ日持ちはしますけど、私も3食パスタ生活なんていやですぅ~!マミーヤにも行きたいしぃ、ホーショーさんの所にも、提督さんのお店にも行きたいですぅ~!」
大泣きし始めたポーラ。理由は何とも自業自得な話だが、流石にこのままにしとく訳にもいかんしな。
「わかったわかった、このパスタは俺が引き取ってやるから。もう泣くな」
「……いいんですかぁ?」
「あぁ。丁度そろそろウチの店でもパスタを仕入れようと思ってたトコだ」
何せ、春はパスタの旬の時期だからな。
パスタに旬の時期なんてあるのか?なんて普通は思うだろう。が、春はパスタによく合う食材の宝庫なんだよコレが。だから、春はパスタの旬ってワケさ(俺命名)。だから春のパン祭りならぬ春のパスタ祭りを開催しようと思ってな。その為にパスタを大量に仕入れようと思っていた所にポーラからパスタを大量に引き取って欲しい、という申し出は正に渡りに船だったワケさ。さ~て、今晩から出す春パスタのメニュー、急いで考えなくちゃな!
そしてその日の晩。今宵の『Bar Admiral』は千客万来。パスタ祭りの噂を聞き付けた飲兵衛と食いしん坊達で溢れ返っている。俺も今日ばかりはシェイカーよりもフライパンを振るっている時間の方が長い。
「全くもう、ポーラったらホント無計画なんだから!」
ぷりぷり怒りながら、ザラが辛口の日本酒を煽る。銘柄は『酔鯨 特別純米酒』……蔵元が『究極の食中酒を目指して仕込んだ』と豪語するだけあって、味の濃い料理でも淡白な料理でも、スッと寄り添って男を引き立ててくれる、いいオンナの様な酒だ。『日本酒は吟醸酒ばかりじゃねぇぞ?』というのをまざまざと感じさせてくれる1本なので、興味が沸いた人は是非試して欲しい。
「まぁまぁ。お陰で美味しいパスタが安く食べられるんですから、そこには感謝しておきましょ?ね?」
若干荒れているザラを宥めているのは鳥海だ。個性的過ぎる姉が3人もいるせいか、最近長女が飲んだくれているせいか、ザラと気が合うらしい。……苦労性同士で気が合うのか?とか考えてしまうが、口には出さない。
「うっ……まぁ、それに関してはちょっとだけ感謝してますけど」
ちなみにだが、パスタがタダで手に入ったのでパスタ祭りに予定していた半額の値段で料理を提供できていたりする。
「さぁ、司令官さん。この日本酒に合うようなパスタ2人前お願いしますね?」
「あいよ」
日本酒に合わせるんだ、シンプルな味付けのパスタで行こう。
《シンプルな味付けで!ホタルイカとネギのパスタ》※分量2人前
・パスタ:160g
・塩:16g
・ホタルイカ(ボイル):100g
・青ネギ:2~3本
・ニンニク:1片
・白ワイン:大さじ1
・赤唐辛子:1本
・オリーブオイル:大さじ3
・塩コショウ:少々
さて、作っていこう。まずはホタルイカの下処理から。ホタルイカをザルに入れ、ぬめりや細かいゴミを落とす為にサッと水洗いする。水気を切ったらピンセット等を使い目やクチバシを取り除く。
ニンニクは芽を取り除いてみじん切りにし、唐辛子はヘタと種を取り除いて輪切りにする。ネギは斜め切りにする。
具材の下拵えが終わったら、パスタを茹でる。2リットルのお湯を沸かし、パスタの1/10の量の塩を入れて溶かし、パスタを茹でていく。茹で時間は袋の表示より1分短く茹でる。……あぁ、茹で上がってお湯を切る時に、お玉1杯分の茹で汁を取っておくのを忘れずにな。ソース作りにに使う。
フライパンにオリーブオイル、ニンニク、唐辛子を入れて弱火で焦げないように熱し、香りが立ってきたらホタルイカ、白ワイン、パスタの茹で汁を加えて炒めつつ、しっかりと混ぜて乳化させる。
青ネギ、パスタを加えてよく絡めて、塩コショウで味を整えれば完成だ。
「ハイよ、『ホタルイカとネギのオイルパスタ』だ」
ホタルイカとネギを一緒に巻き込みつつ口に頬張れば、ネギとニンニクの風味と共にホタルイカ独特のプチプチ・コリコリとした食感が襲いかかってくる。それにホタルイカを噛み締めてやれば、身が弾けて中から濃厚なワタの旨味が溢れ出す。それらを唐辛子が絶妙に引き立てる。それだけでも御馳走だが、酒呑みにとっちゃあその味がなんとも酒に合うような味になる。
「ん~!なんでこんなにイカとパスタって合うんですかねぇ!」
「ホント、お酒にも合うし最高ね!」
「喜んで貰えて何よりだ」
もののついでだ、ホタルイカを使ったパスタをもう1品。
《ピリッと旨い!ホタルイカのプッタネスカ風》※分量2人前
・パスタ:180g
・塩:18g
・ホタルイカ:100g
(ソース)
・ニンニク:1片
・赤唐辛子:1/2本
・オリーブオイル:大さじ3
・ケッパー:大さじ1
・ブラックオリーブ:10個(25gくらい)
・トマトピューレ:150g
・塩:少々
さぁ、作っていくぞ。まずはパスタを茹でる為のお湯を沸かしつつ、ホタルイカの下処理だ。……といっても、目とクチバシを取り除くので、さっきのオイルパスタの時と同様だな。
ニンニクも赤唐辛子も先程のオイルパスタ同様だな。ニンニクは芽を取り除いてみじん切り、赤唐辛子もヘタと種を取り除いて輪切りにしておく。ケッパーとブラックオリーブも刻んでおく。ケッパーは最近スーパーなんかで予め刻んである物が入った瓶詰めを見かけるようになったから、探したらラッキーと思って買っておくと、結構便利だぞ。
フライパンにオリーブオイル大さじ2とニンニク、赤唐辛子を入れて中火で熱し、香りが立ってきたらトマトピューレ、ケッパー、オリーブ、残しておいたオリーブオイル大さじ1を加えてよく混ぜる。煮立ってきたら弱火にし、蓋をして10分程煮込む。
その間にパスタを茹でる。パスタの1/10の量の塩を入れて、袋の表示より1分短く茹でるのもオイルパスタと同様だな。ただし、茹で汁は少し多めに取っておく。
パスタが茹で上がったらフライパンに移し、トマトソースとよく絡める。ソースが煮詰まりすぎて固く、絡まりにくい場合は、パスタの茹で汁を少しずつ加えて延ばし、好みの固さに調整する。味見をして塩で味を整えたら器に盛って完成。食べる際にタバスコと粉チーズで味を調整しても美味いぞ。
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