おぢばにおかえり
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66部分:第十話 登校その七
第十話 登校その七
「そういえばこのはっぴだけれどさ」
「ええ」
「何着持ってるの、ちっちは」
「私?」
「ちっちの家も教会じゃない」
それではっぴはお家にも随分あります。私も小さな頃から着ています。アルバムとかにはっぴを着て笑っている子供の頃の私の写真もあります。
「だからかなり持ってるんじゃないの?」
「今は四着かしら」
少し首を傾げて答えました。
「学校に二着でしょ」
「意外と少なくない?」
学校に二着と言ったらこう言われました。
「それって」
「そう?」
「だって外に出る時も寮の中でもいつも着るじゃない」
そういう決まりになっています。だから外に出ても何処の学校の子なのかすぐにわかるようになっています。これは所属の教会についても同じです。
「それで二着って」
「じゃあもう一着か二着か持っておこうかしら」
「それがいいわよ。それで実家にもう二着あるのね」
「そういうこと。家じゃおつとめとかひのきしんの時以外は着ないわよ」
「それはね」
彼女もそれには納得した顔で頷いてきました。
「わかるわ」
「ええ。やっぱり普段は着ないわよね」
「ここはまた特別なのよ」
そう言いながら自分の席に戻ってきます。そうして話に言ってきます。
「はっぴがメインだからね」
「天理教だってそれでわかるしね」
「けれどこれっておぢばとか教会だけなのよね」
彼女は少し困ったような顔でこう話すのでした。
「そこから離れたらもう」
「全然見ないわよね、ローカルって言えばローカルかしら」
「ローカルっていうかね」
首を傾げさせてまた言ってきます。
「独特よね。天理教独特」
「知らない人がおぢばに来て最初に驚くのそれらしいわよ」
真っ黒なはっぴを着た人が一杯いるんで驚くそうです。ここは一体何なんだと。これは教会も同じで私も子供の頃にそれを友達に言われたことがあります。
「私はそうは思わないけれど」
「それはやっぱり教会の子供だからよね」
「ええ、そうね」
これはわかります。
「結局のところ。だからおみちのことも」
「最初から頭に入ってるわよね」
「少しだけだけれど」
「少しでも最初からないのとは全然違うわよ」
こう答えたらこう言われました。
「天理教のこと何も知らないで入る子だって多いんだし」
「自宅の子とかそうよね」
「自宅生っていっても何か派閥っていうかそういう分かれるものはあるわよね」
彼女はふとした感じで話してきました。天理高校の生徒は大きく分けて自宅生と寮生っていう二つの系統があります。けれど自宅生の中でもさらに二つある感じなのです。
「天理中学からの子と」
「高校から入った子よね」
「その二つも全然雰囲気違うわよね」
「ええ、そうよね」
私はその言葉に頷きます。
「天理中学からの子もおみちのことは知ってるけれど」
「そうじゃない子は知らない子が多いわね」
「そういう違いってあるわよね、やっぱり」
「けれどあれ?」
ここで私はふとした感じで言いました。
「教義のテストじゃやっぱり」
「そうなのよ、何も知らないから必死に勉強するから」
ここが肝心です。努力ですね。
「成績は自宅生の子の何も知らない子の方がよかったりするのよね」
「そうなのよね」
「ちっちはそれでも教義の点数いいじゃない」
「そうかしら」
自分ではその自覚はあまりありません。何でこんなことわからなかったんだろう、ってテストの後で後悔することもあります。ちなみに東寮での勉強はその態度についてもかなり厳しいです。入る前はシャープペンシルの音でさえ注意されるって聞いていました。けれど長池先輩はそれについては何も言わない人で助かっています。
「だからそれはいいじゃない」
「自分では不満があるのだけれど」
「それでもよ。成績いいのってやっぱり」
悪いことではないのは言うまでもありません。それに私は天理高校から天理大学に進むように言われているので推薦もらえるだけの成績がないといけないのでそれなりに頑張らないといけないのです。それは私が一番よくわかっているつもりですけれど。
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