おぢばにおかえり
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62部分:第十話 登校その三
第十話 登校その三
「この人は普通の家の人だったんだけれど」
「それがまたどうしておじさんと結婚したの?」
「お見合いらしわ」
天理教の教会の家ではこれも結構多いそうです。
「お見合いなの」
「そうなの。それで一緒になったそうだけれど」
それで奥さんに頭が上がらなくなったって。何があったんでしょう。
「今じゃ完全に大人しくなって。お母さんも驚いているのよ」
「そうだったの」
「それ見てるとやっぱり思うのよ」
ここまで話してまた私に言ってきました。
「おみちってあれよね」
「うん」
「女の人が凄く大事よね」
「それはね。当たり前って言えば当たり前だけれど」
「ええ」
だって教祖が女の方なんですから。言うなら教祖は私達のお母さんに当たります。そうした方なんです。
「それでも教会なんか男の人が会長でも」
「結構奥さんが大変よね」
「そうなのよ。私お兄ちゃんがいるし弟もいるけれど」
「男兄弟なのね」
「私だけ女でね。それで教会継ぐことはないでしょうけれど」
女の子でも教会を継ぐことがあります。基本的には男の子が継ぐのですけれど天理教では女の人でもそうして教会長になったりします。
「やっぱりおみちの人と一緒になったら」
「話が随分早くない?」
それを聞いて思いました。
「それって」
「けれどもうそろそろ結婚できる歳だし」
「けれどね」
もうすぐ十六歳ですけれど。それでも高校生ですからそれは想像出来ません。
「やっぱりね。その可能性って高いじゃない」
「まあね。私だって」
ここで自分のことを考えます。
「教会継がないといけないし」
「それで天理高校に入ったんでしょ?」
「ええ、そうだけれど」
その為におぢばの学校に入りました。将来の為に。
「だったらちっちも。やっぱり」
「それはわからないわよ」
困った顔をして答えました。
「そりゃ結婚したら旦那様はおみちの人になってもらうしかないけれど」
「だったら最初からそうした人だと余計にいいじゃない」
「それとこれとは違うわよ」
それはそうじゃないんじゃないかな、と思いまして。それでこう言葉を返しました。
「恋愛結婚したいのよ、私」
「あら、ロマンチストなのね」
「そうじゃなくて」
もっと困った顔になったのが自分でもわかります。何かまた話が私にとってドツボになっていってるような。どうしてもこうした話だとそうなってしまう気がします。
「やっぱりそうした感情がないと上手くいかないものでしょ、夫婦って」
「ずっとないとね」
「だからよ。特に最初が大切だから」
これは子供の頃からお父さんとお母さんに言われてきました。立ち上がりの悪い人もいるけれど最初が肝心だって。だから私は最初に一番頑張ることにしています。
「結婚とか夫婦だってそうじゃないかしら」
「かもね。何かちっちらしい話ね」
「私らしいかしら」
「ええ、真面目だから」
私は真面目な女の子で通っています。自覚はまあ一応はあります。
「そうした考え持ってるんなら大丈夫だと思うわよ」
「だといいけれど」
「ちっちだといい奥さんになれそうだしね」
「そうかしら」
「特に旦那さんが年下とかそうした頼りないタイプとかだったら」
「またそれ!?」
その話になるとまたかと思いました。だから私は年下の子には興味ないのに。
「似合うからね」
「似合わないわよ、どうしてそうなるのよ」
溜息混じりに反論しました。もう学校に向かって歩いていて黒門を越えたところです。
「年下年下って。しかも皆で」
「何なら天理中学校の男の子に声かけてみたら?」
「それやったら一発で問題じゃないっ」
冗談じゃありません、誰がそんなこと。
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