おぢばにおかえり
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60部分:第十話 登校その一
第十話 登校その一
登校
座りづとめが終わるとやっと登校です。まずは神殿の前に皆で集まります。
「今日の授業だけれど」
「ああ、教義の時間があったわよね」
天理教の教義の時間です。天理高校は天理教の学校なのでそうした授業もあります。これは天理教学園高校も同じです。確か天理中学校や小学校でもこれは同じです。
「はっぴ、持ってる?」
「鞄の中にあるわよ」
私はそう答えました。ておどりだとはっぴを着ないと駄目なのです。天理教の人は大抵はっぴを着ています。黒くて背中に天理教と書いています。それで衿のところに何処の所属かを書いてあります。おぢばでは皆着ています。私も実家が教会なのでいつも着ていましたし今もです。
「そうなの。私は確か」
「忘れたとか?」
「多分学校にあるわ」
ちょっと心配な返事でした。
「多分ね」
「なかったらどうするの?」
「借りるわ」
皆忘れた時はそうします。忘れる人は忘れます。
「その時はね」
「そうなの」
「どうせ皆同じじゃない」
ここで出た言葉がまたその通りです。
「はっぴなんて。天理高校の」
「そうなのよね。男の子のも女の子のも」
これは天理高校のだけじゃなくてどこのはっぴも同じです。はっぴは誰もが同じものを着ます。それで天理教の人だってすぐにわかります。
「だったらいいじゃない。ただちっちは」
「何?」
「小学生用のにしたら?今のはっぴ大き過ぎるわよ」
「ほっといてよ」
またこの話です。今日は特に言われる感じです。
「大きくてもいいのよ。その分温かいし」
「そうなんだ」
「そうよ。それに大き過ぎるって程大きくないでしょ」
そう反論しました。
「だったらいいじゃない。そうでしょ」
「まあそうだけれどね」
彼女もそれに納得してくれました。
「それにしてもあれよね」
「今度は何?」
「ちっちってはっぴ似合うわよね」
そう私に言ってきました。
「正直言って。そうよね」
「そうかしら」
私にはそんな自覚はないです。それに自分がおしゃれだとか思ったこともないですし。
「似合ってるわよ。何か可愛らしくて」
「褒めても何も出ないわよ」
こう言葉を返しました。
「悪いけれど」
「悪いのは承知よ。そうじゃなくてね」
「ええ」
「黒が似合うってことよ。ほら、寮でも黒いジャージとかズボンじゃない」
実際に何となく黒は好きな色です。他には青とか白も好きですけれど。
「あれ似合ってるわよ、結構ね」
「そんなに?」
「ええ。何か黒は似合いそうにないんだけれど」
これは前にも言われたような。確かお母さんに意外と黒が似合うって言われたことがあったような気がします。はっきりとは覚えていないですけれど。
「それがね。どうしてだか」
「どうしてかしらね」
やっぱりこれも自分ではわかりません。何故でしょう。
「スタイルがいいから?」
「悪いけれど胸ないわよ」
これもコンプレックスになっています。特に高校に入ってから。先輩はおろか同級生の娘なんて皆かなり胸があります。それなのに私は小さくて。長池先輩なんか奇麗なだけじゃなく胸だって凄いんです。それで私はとても小さくて。それが気になって仕方ありません。
「そういう問題じゃないのよ」
「違うの?」
「そういうこと、スタイルは胸だけじゃないわ」
そうしてこう言われました。
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