【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と雄英体育祭編
NO.019 雄英体育祭開幕。そして全国へ……。
前書き
更新します。
二週間という短い期間を静かに時は過ぎて行って、そして雄英体育祭開催当日。
今か今かと観客やプロヒーロー達が会場内へと入り込んでいた。
何と言ってもやはり今年の目玉は1年生の部だろう。
ヴィラン侵入という災難に見舞われながらも、それでも全員が心折れずにこうして体育祭を迎えられた。
それだけで荒事の経験を積んだという箔がもうついているのだ。
それで普段なら3年生の方に集中する目線が1年生に集中するのは分からなくもない。
場所は変わって、生徒達選手控え室。
そこでは出久達みんながもうすぐ始まる行事に思いを馳せていた。
特に選手宣誓をする予定である出久は別の意味で緊張している。
出久は今日のためにある決断を抱えて今日まで過ごしてきたのだ。
その内容はもうクラスのみんなにも伝えてあるために今のところ一番の友達のお茶子が出久の手を握ってあげながら、
「デクちゃん……無理して言う必要はないからね? 普通の宣誓でもいいんだよ?」
「ありがとう麗日さん」
それから他の女子たちも、
「そうよ出久ちゃん。無理して全国が見ている前で言う必要はないのよ……?」と蛙吹。
「そうですわ。それでもし緑谷さんが変な目で見られでもしましたら私達も心苦しいですわ」と八百万。
「そうだよ緑谷。だから無理そうだったら言わないでいいんだからね?」と耳郎。
「もし変な事を観客が言ってきたら酸をぶっかけてやるんだから!」と芦戸。
「そうだよー! だからそんなに重く考えない方がいいよ?」と葉隠。
女子たちみんながそう言って出久に一声かけていく。
男性陣も出久のやる事を知っている為にただ何度も『頑張れ』と声をかけていった。
それで出久は少し心が軽くなった気持ちになって、
「ありがとうみんな。でも、もう言おうって決めているんだ。ここまで来れたのはみんなのおかげでもあるし、僕を鍛えてくれた人にも感謝の言葉を贈りたいから……」
ガチガチに緊張しながらもしっかりとそう言いきる出久に全員は関心をしていた。
そこに爆豪が声をかけてくる。
「おいデク……」
「かっちゃん……」
それで他のみんなは爆豪がまた出久に何か変な事を言わないか静かに見守っている中で、
「てめぇが決めた事だ。だからもう俺も何も言わねぇよ。だがやるって決めたからにはもう後戻りはできねぇって事だけは覚えておけよ?」
「わかってるよ、かっちゃん。大丈夫。みんなだけでも分かってくれているだけで僕はもうそれだけで満足だから……」
それでニッと笑みを浮かべる出久。
爆豪はそれだけ言いたかったのか「そうかよ……」ともう出久のこれからやる行いを止めることはしなかった。
そこに『選手達は入場してください!』とアナウンスが流れてくる。
よし、いくぞ!と出久は気合を入れてみんなとともに会場へと向かっていく。
会場内では実況役としてプレゼント・マイクが席について今か今かと待ち望んでいるヒーロー達に向けて話し始める。
『さーてついにやってきたぜ! 雄英体育祭一年生の部。どうせてめぇらのお目当てはこれだろう!? ヴィランの襲撃にあっても折れない精神で立ち向かっていく超新星達! ヒーロー科一年A組だろー!?』
その言葉とともに出久達が会場内に姿を現す。
それをテレビの前で見ていた母・引子は出久の話すことも知っている為に『どうか出久を信じてあげてください……』と祈りを捧げていた。
それからヒーロー科B組、普通科、サポート科、経営科と次々と入場していく。
A組以外の生徒達はどうせ引き立て役扱いだろうと顔を曇らせているが、これから聞かされる出久の選手宣誓で果たして何を思う事か……?
壇上に18禁ヒーロー、ミッドナイトが立って、
「それじゃまずは選手宣誓をしてもらうわよ! 1-A緑谷出久!!」
「はい!」
それで出久は壇上へと歩いていく。
それを心配そうに見守るクラスメイト達。
他のクラスの生徒はただただ壇上に上がっていく出久に対して嫉妬の目線を向けていた。
そしてそれを外のモニターで見ていたMt.レディは一年前に見た出久の姿を確認してあの時に一緒にいたデステゴロと話をしていた。
「デステゴロ! 見て! 一年前のあの子よ!」
「おー……あの時の性転換してしまった子か。確か、緑谷だったな。あの子が主席だとはな……この一年で頑張ったんだな」
「そうね。私はあの子の事を応援しているのよ。だからどんな宣誓をするのか楽しみだわ!」
二人が盛り上がっている中、出久は選手宣誓を行う。
「宣誓! 私達選手一同はヒーローシップにのっとり、正々堂々と戦うことをここに誓います!!」
と出だしはテンプレの様な内容で他の生徒達は、
「普通だな……」「普通だ……」「逆にスゲーと感じちまうな」
と、言葉を漏らしていた。
だが、まだ出久は言いたい事があるのか「それと話は変わりますが―――」と前置きをする。
それを聞いて1-A女子達はもう胸が張り裂けそうになるくらい緊張をした。
男性陣も女子ほどではないが、それでも緊張をしている。
特に爆豪はただ無言で聞いているだけだった。
「ご存知の方もいるかもしれませんが、僕こと緑谷出久は今はこんな姿になっていますが一年前までは無個性でさらに言わせてもらえば性別は男性でした」
その出久のカミングアウトに会場内はざわめきとともに静まり返る。
「とある事件をきっかけに遅咲きの個性が発動して今の姿となりました。ですがそれまで僕は無個性だと思い込んでいたためにオールマイトの様なカッコいいヒーローにはなれないと半ば諦めていた節もありました。
でも、こうして今ここに立っていられるのは性転換してしまってこんな姿になってしまった僕に以前と変わらずに接してくれる幼馴染の存在。そして家族達……」
それを聞いて爆豪の表情が少しだけ歪む。多少の恥ずかしさもあるがそれ以上に出久の覚悟の告白にある意味で関心をしていた。
「そして主席入学してここに立つに至るまで、『君はヒーローになれる!』と言って一生懸命僕を一から鍛えてくださったとある偉大な方の存在……」
それを聞いてオールマイトは表情を緩める。
君に決めてよかったとオールマイトは心の中で思う。
「他にも僕を支えてくださった人達の恩義に報いるためにも、この雄英体育祭はまたとない絶好の機会です。だから……僕はプルス・ウルトラの精神で1位になれるように精一杯頑張りたいと思います!! 以上、選手宣誓、緑谷出久でした!!」
出久は言いきった。
もう半分涙目だがそれでも最後まで言いきったのだ。
それを恥に感じる事などない。
出久は全国が見ている中で己のしたいことをやり切ったのだ。
だから、しばらく静かだった会場内は1-Aのみんなが拍手する音とともに次から次へと拍手が巻き起こった。
それを会場の外で警備しながらも聞いていたMt.レディももう「あの時の子がここまで立派になって……」と出久の成長に涙目になっていた。
『覚悟のあるカミングアウト! とてもよかったぜ緑谷! 頑張れよ! 事情を知っている教師陣は少なくともお前の味方だからな!!』
と、プレゼント・マイクが実況席で声を張り上げる。
他のクラスの生徒達も出久の言葉に感動したのか先ほどまで感じていた嫉妬などといった感情はほとんど消え失せていた。
無個性だった子がたった一年でここまで上り詰めてきたのだから自分達も頑張らないとな!という感情もある感じだった。
ミッドナイトはそんな会場の空気をなるべく変えないように、
「いきなりのサプライズだったけど、それじゃ興奮もやまない中でそろそろ第一種目に移らせてもらうわね!」
と、自然な感じで競技に入るように生徒達を誘導する。
その際に、出久は他のクラスの生徒達から「頑張ろうぜ!」「立派だったね」「私だったらきっと言えない……」と声をかけられていたために出久は受け入れてもらえて笑顔を浮かべていた。
こうして雄英体育祭は出久にとって最高のスタートダッシュとなって幕を上げたのであった。
後書き
少しだけやり切った感じですね……。
出久はオールマイトの事は話しませんがそれでも他の事だったら話せますからね。
明日は第一種目を書きたいと思います。
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