レーヴァティン
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第四十九話 八人目のことその八
「今御前何て言ったんだ」
「だからうちのお祖父ちゃんがね」
「よその奥さんに手を出したんじゃないのかよ」
「よそのご主人に手を出したんだよ、六十の時にね」
「御前の祖父さんホモだったのかよ」
「どっちでもいけて、その時はね」
「奥さんがいる若い男の人をかよ」
ようやく事情を理解した久志だった、それは他の面々もだったが誰もが心底引いてしまっている顔になっていた。
「お妾さんにして」
「愛人にしてね、その奥さんとお祖母ちゃんまで巻き込んで」
「修羅場だったんだな」
「そうだったんだ、お祖父ちゃん離婚されかけたよ」
「男同士でもそうなるんだな」
「お祖母ちゃんも激怒してね」
「男が女にか、何かな」
話が受け入れられなくてだ、首を傾げさせて言う久志だった。
「壮絶な話だな」
「そんなことになるの見てきたから」
「それでか」
「人妻、彼氏持ちの人にはね」
「手を出さない方がいいか」
「出会い系でもね」
淳二はあちらの世界の話をさらにした。
「しない方がいいよ」
「遊ぶなら普通の人か」
「そうそう、病気の持ってないね」
このことも話した淳二だった。
「そうした娘と遊ぶのが一番だよ」
「じゃあ娼館はいいんだな」
「一番いいんじゃない?」
遊ぶにはというのだ。
「何といってもね」
「それもあるからか」
久志はそうした時に使うそれをまた見つつ呟く様に言った。
「だからか」
「そうそう、何といってもね」
「それがあると病気の心配ないしな」
「妊娠の心配もないじゃない、リアルで言うとね」
淳二はこれまでの軽い調子を消して今は真剣な面持ちになり久志にも他の仲間達に対しても話した。
「娼館の女の子が妊娠したらね」
「その時は、だよな」
「知ってるよね」
「中絶するからね」
「そうだよな」
「そうしてるから」
「江戸時代の吉原でもそうだったな」
娼館で妊娠があるのは当然だ、そしてそうして妊娠があった場合どうなるかはあまり話されることはないがこうした事情があるのだ。
「出来たらな」
「そうなるからね」
「だからか」
「そう、それならね」
「最初からだな」
「そうだよ、病気も防げるしね」
このこともあってというのだ。
「この島の娼館では普通に使われてるよ」
「性病も防げて一石二鳥か」
「だからね」
「使ってるんだな、しかしな」
久志はそれから一旦目を離した、そうして淳二にあらためて言った。
「御前の爺さんの場合人妻とか彼氏持ちじゃなくてな」
「旦那さんだね」
「ああ、ホモだからな」
「うちのお祖父ちゃん女の人はお祖母ちゃんだけだって主義らしいけれどね」
「そっちはか」
「浮気じゃないって考えだったんで」
それでとだ、淳二は普段の明るい表情に戻って自分の祖父のことを話した。
「それでね」
「他所の奥さんの旦那さんにか」
「手を出したんだよ、愛人にしててね」
「凄いな、それで離婚したのかよ」
「いや、どっちも離婚しなかったよ」
彼の祖父の家も相手の家もというのだ。
「大騒ぎにはなったけれどね」
「それは何よりだな」
「そうだよね、とにかく相手がいる人には手を出さない」
「そして病気に注意か」
「こうした遊びはね」
「わかった、けれど俺は別にいいな」
久志はここで自分の考えを述べた。
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