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転生とらぶる

作者:青竹
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番外編073話 if ゲート編 09話

 山海楼で捕らえた、アメリカ、ロシア、中国の軍人達。
 それぞれの国の特殊部隊……つまり、精鋭と呼ぶに相応しい者達だったのだろうが、国として見れば、それらの軍人の喪失は痛い事は痛いが、それでも致命的なダメージという訳ではない。
 そんな訳で……当然のように、どの国からも、今回の件は全く知らない、分からないと言った風に言ってきたので、こちらも予定通りに行動を起こす事にした。
 まずやったのは、電波ジャック。
 いやまぁ、考えてみれば当然なのだが、この世界の日本……いや、地球というのは、IT……いわゆる情報技術の類が、発展してはいるのだが、シャドウミラーから見れば非常に甘い。
 ましてや、ネット関係という意味ではラピスやルリといった面々にしてみれば、まさにザル以外の何者でもない。
 それこそ、この世界にルリとラピス……いや、そのどちらかでもいて、その能力を十分に行かせるだけのコンピュータがあれば、世界を牛耳れる程度には。
 そんな訳で、まず真っ先にやって貰ったのは、ルリとラピスに世界中のコンピュータにハッキングし、電波ジャックし、捕らえた者達の詳細な情報……それこそどこで生まれて、小さい頃は何をしていて、どのような悪戯をして、何歳までおねしょをしていたのかといったものから、大きくなってからはどのような女に言い寄り、振られ、その結果どれだけヤケ酒を飲んだのか、もしくは赤ちゃんプレイが大好きな奴は、何故か残っていたそのシーンやら、SM好きなら以下略、軍事物資の横流しの証拠やら、恐喝の証拠やら、その他諸々が公表された。
 当然のようにどこの部隊に配属されたのか、上官は誰なのか、上官からどのような命令を貰ったのか……といったものまで事細かにネットやら電波ジャックをして放映した。
 ちなみにちょっとした細工がしてあって、今回の実働班に命令をした上官……の、そのまた上官、更に上官……といった風に辿れるようになっており、そうなれば最終的に行き着くのは当然のように大統領やら国家主席やらになる。
 当初はそれについて全くの出鱈目であり、欺瞞情報でしかないとアメリカ、ロシア、中国が言ってきたので、次の情報の拡散が始まる。

「さて、各国に潜入させているスパイの類を次々に世界中に知らされていって……どうなる事やら」

 俺はホワイトスターの中にある自分の家で、門世界の地球がどのような動きになるのか、フライドポテトを食べながら呟く。

「全く、意地悪な真似をするわね」

 シェリルが呆れたように言いながら、フライドポテトを1本だけ口に運ぶ。
 基本的に摂取カロリーよりも消費カロリーの方が多い生活をしているのだから、もう少し食べてもいいと思うんだが。
 ともあれ、映像モニタに映し出されている限りでは、地球はこれ以上ない程に混乱していた。
 最初は、そのスパイが本物かどうかというのを確認する為に、アメリカの警察が中国のスパイがいると思われる場所に向かい……そこで派手な銃撃戦となったのだ。
 もう逃げられないと判断しての行動だったのだろうが、それが自分がスパイだと……そしてシャドウミラーから流された情報が本物だという事を示し、それからは世界中でスパイとそれを捕らえる警察官やら軍人やら情報機関やらが大騒ぎを起こす事になる。
 ……スパイを取り締まる法律が存在しない日本ではちょっと違って、何人かの危機感のない一般人が、自分の家の近くにあるスパイの潜伏場所に向かい、銃で撃ち殺されて騒動になるという風な感じになっていたが。

「ラピス、次を頼む」

 俺の言葉に、ラピスは小さく頷くと、次の情報を流す。
 それは、自分達のやった事を全面的に認め、公的に謝罪して相応の賠償金を支払わない限り、国家機密の類を次々にネットやジャックした電波に流していくという事を告げる内容だ。
 そして手始めとして流されたのは、普通なら触れる事が出来ない、各国の国家機密。
 取りあえず開発中の兵器の秘密とか、そういうのは色々と遺恨を残しそうなので止めておいたが、世界的に悪影響にならないだろうと判断した国家機密は次々と広がっていく。
 もっとも、どこの国がどこの国に陰謀をしかけたり、開発した毒を使って亡命した人物を毒殺するように命じた指令書だったり、次にどこの国の領海を強引に埋め立てて基地を作ったり、他国と通じている高官を調べるように命じた命令書だったり。
 とにかく、そのような機密が時間が経つごとに順次公表されていっており……

「アクセル、日本政府から連絡が来てるわよ?」

 レモンが呆れた視線をこっちに向けて、言ってくる。
 まぁ、現在シャドウミラーと国交を持っている国は、あくまでも日本だけだ。
 俺の泊まっている宿を襲撃しようとした、アメリカ、中国、ロシアの国が俺と連絡を取るには、結局のところどうしたって日本を通すしかない。
 ……ちなみに、日本は日本でメギロートの件で大きな騒ぎになっている。
 まぁ、日本にしてみれば識別不明の機体がいきなり銀座に姿を現したのだから、それも当然だろう。
 門を守っている部隊にしろ、シャドウミラーに対して何が出来る訳でもないだろうし。
 しかも実際にメギロートが銀座に姿を現しても、スクランブルはなかなか行われなかったらしい。
 幸原だったか? 国会で俺を始めとした面々に質問をしてきた議員と、その議員が所属している政党が何やら騒いだとか何とかいう話だが……まぁ、結果的に見れば、それ程間違っている選択という訳でもない。
 戦闘機でメギロートに攻撃しても、間違いなく反撃されて撃破されるだろうし。
 ……そう考えれば、偶然の一致ではあっても、何気に日本の国益に沿うような行動になったのか?
 勿論向こうにはそんな事は関係なく、政治屋として自分の懐を潤したかったり、自分の影響力がこれだけあると、周囲に知らしめたかったりといった風にしたかっただけなんだろうが。

「そうだな、じゃあ、繋いでくれ」

 レモンが俺の言葉に頷き、次の瞬間には映像モニタに日本の総理大臣……本位だったか? その男が姿を現す。

『アルマー代表、即刻あの行為をやめて下さい』
「あの行為ってのは、どんな行為だ?」
『アメリカ、中国、ロシアの国家機密をネットやTVで流す行為です!』

 引き攣った顔の本位の言葉に、俺は首を傾げる。

「そう言ってもな。こっちに喧嘩を売ってきたのは向こうが先だぞ? いや、それを言うなら、日本の国内で他国の軍隊を好き勝手に動かすような真似をしていたのは日本の責任なんだろうが」
『そ、それは……しかし……』
「向こうの国のトップが自分達のやった事をきちんと認めて、それを公の場で認めて謝罪し、相応の慰謝料を寄越せば、こっちもそれに対応してもいいぞ」
『そんな無茶を言われても……その、せめて非公式で、というのは?』
「却下」
『なら……国のトップではなく、もっと下の人間で……』
「却下だ。一応俺は事前にその辺りでも認めるという意味で、捕虜の公表をしたが、他の国ではそれを認めなかった。つまり、こっちの譲歩を受け取らないと向こうが主張したんだから、こっちもそれに合わせて行動させて貰う」

 そう告げると、本位の表情が苦悩に変わる。
 まぁ、向こうが何を言いたいのかというのは分かるが、こっちはこれ以上譲歩するつもりはない。

『ですが、そのような対応が不可能である以上……戦争が起きるかもしれませんよ?』
「それならそれで構わない。ただ、一応言っておくがシャドウミラーにはフレイヤという、核兵器と同等、もしくはそれ以上の威力があって、それでいて汚染の類は一切ない広域破壊兵器が存在している、とだけ言っておくか」

 そう言うと、本位の顔が固まる。
 ちょっと前までであれば、俺の言葉を素直に受け止める事は出来なかっただろうが……メギロートという、今の日本では……いや、門世界の地球では到底作れないだけの技術力を持っているのを証明したからな。
 あれで、実はメギロートというのは量で押すための主力ではあっても、純粋な性能という意味ではシャドウミラーの中では雑魚中の雑魚なんです、と言ったらどう反応するんだろうか。
 まぁ、本当の意味でシャドウミラーの使用している兵器で一番弱いのは、バッタなんだが。
 あれ、シャドウミラーのメンバーなら、生身でも普通に倒せる程度の強さしかないし。
 それどころか、何の訓練もしていない一般人であっても、運転している車で思い切り轢けば倒せたりする程度の強さしかなかったりする。
 ああ、でも今のバッタはディストーションフィールドを装備しているから、一般人が倒すのはちょっと難しくなったか?
 攻撃という意味でも、ディストーションフィールドを使った体当たりや、ミサイル攻撃があるのを考えれば、そこそこ強いし。
 それ以外にも、広域破壊兵器の類は普通に持っている。
 それこそ、フレイヤという、核とは違って放射能汚染の類が心配いらず、それどころかしっかりと攻撃する範囲をこちらで決める事の出来る兵器が。
 ……まぁ、攻撃出来る範囲はこちらで決められるが、その空間が消失した事により、周辺の空気が猛烈な勢いで流入して二次的な被害も大きくなるのだが。
 それに、フレイヤ程ではないにしろ、S-11も威力的には核兵器に負けないだけのものがある。こちらも核のように放射能汚染の心配がない優れものだ。

『それは……本当ですか?』
「ああ、俺達にとっては幸いなことに、な」
『……では、一度どこかでそのフレイヤという兵器の威力を見せつけて貰えないでしょうか?』

 そう告げる本位の言葉に、俺は……いや、この話を聞いていた者達までもが、全員驚くのだった。





『……で、何で俺がやる必要があるんだよ?』

 不服そうに言ったのは、アウル。
 まぁ、アウルは今まで門世界の地球に関わっていなかったから、ぼやく気持ちが分からないでもない。分からないでもないが……

「模擬戦で負けた、お前が悪い」
『……ちぇ』

 不服そうにしながらも、アウルはそれ以上文句を言わずに通信を切る。
 本位からの要望にあった、フレイヤの威力を門世界の地球に見せつけるという行為。
 それを誰がやるのかを決めるのに、生身での模擬戦をやったのだが……それで一番黒星が多かったのが、アウルだった。
 アウルと仲の良いレイやスティングといった面々も黒星が多かったのだが、残念ながら最下位はアウルという事になり、こうして現在、アウルはシャドウに乗って目標の無人島の上空にいる。
 カブトムシ型の無人機であるメギロートを見ただけで、あれだけ驚いていた日本……そして地球各国だったが、今回はシャドウという人型機動兵器だ。
 勿論、シャドウを始めとした人型機動兵器がシャドウミラーで使われているというのは、シャドウミラーにやってきた役人を始めとして、伊丹達からも報告は上がっている筈だ。
 だが、それでも報告だけではなく、実際にその目で見るというのは、強烈な説得力がある。
 まさに、百聞は一見にしかずって奴だな。
 現在、この海域に集まってきている世界各国の船や潜水艦、上空の偵察衛星等では、しっかりとこの状況を見ているだろう。
 まぁ、それも無理はない。
 これから核兵器以上の威力を持ち、それでいて放射能汚染等も存在しない、クリーンな広域破壊兵器が、この世界では初のお披露目となるのだから。

「さて、そろそろ時間だけど、準備はいいか?」
『はい。海上自衛隊の方でも、既にそちらの海域に到着しています』

 本位が俺の言葉に頷く。
 ちなみに俺がいるのは、シャドウミラーで用意した船の上だ。
 もっとも、そこまで性能の高い船ではなく、今回普通に使えればそれでいいと判断して、技術班が適当に作った代物だが。
 ……その適当に作った代物であっても、この世界の技術力から考えれば、到底理解出来ないだけの能力を持っているんだから、ちょっと洒落にならない。
 ともあれ、俺はそんな船に乗って門世界の地球にある、どこの国の領海でもない無人島が見える位置にいた。
 その無人島の上にはシャドウが浮かんでおり、今からあの無人島を消滅させる事になる。
 フレイヤは本来ならシャドウの武装としては使われていないのだが、それは別にシャドウがフレイヤを使えないという訳ではない。
 ぶっちゃけ、使い捨てのミサイルポッドの類があれば、それで十分なのだから。

「よし、じゃあ始めるか」

 呟き、オープンチャンネルのスイッチを入れる。

「この海域にいる、全ての国の者達に告げる。これからシャドウミラーが保有する、核兵器ではない広域破壊兵器、フレイヤの公開実験を行う。このフレイヤは無人島を丸々消滅させて、周囲の空気を流入させるという二次的な被害を伴う。よって、船や潜水艦の操作には、くれぐれも注意して貰いたい。あくまでもここにいるのは自己責任であり、それが嫌なら、この海域から退避するように」

 そう言っても、レーダーに移っている船や潜水艦は全く動く気配がない。
 それを確認し……やがて再度口を開く。

「どうやら撤退する艦はいないようなので、これから実験を開始する」

 こうして、その無人島は地球上から消滅するのだった。 
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