おぢばにおかえり
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34部分:第六話 レポートその三
第六話 レポートその三
「いいわ。とりあえずレポートの都合もあるし」
「見ていくんだ」
「そうしないと駄目だから」
私はそれを答えに選びました。
「いいわね。けれど」
「けれど?」
じっと見据えてくると平気な顔で言い返してきました。
「肩とか手に触れてきたら。絶対に怒るから」
「寂しいなあ、それって」
「寂しくなんかないわよ」
私は別にです。そもそもどうして新一君なんかといつも一緒に。
「僕はいつも先輩と一緒にいたいのに」
「何でよ」
「内緒」
にこりと笑って言ってきました。
「言わないよ」
「何よ、急にそんなこと言って」
また変なこと言います。何か私に対してだけ変だっていうのが井本さんご夫婦のお話ですけれど。何故かそれを仰る時の井本さんご夫婦も笑っておられますけれど。
「変な子ね、全く」
「まあまあ。けれど二人になったんだし」
「肩とか持ったら駄目よ」
一応釘を刺しておきます。何するかわかりませんから。
「いいわね」
「わかってるよ。それよりさ」
新一君は釘にもめげずに言ってきます。
「これで二回目のデートだよね」
「二回目!?」
何か結構一緒に歩いてる気がしますけれど。それでも何か二回目になっています。
「だってこの前が最初だし」
「そういえばそうね」
言われて気付きます。何か何回も一緒に歩いていますけれどデートははじめてでした。考えたらかなり不思議な話なんですけれど。
「じゃあ。二回目ね」
「仕方ないわね」
この前デートしたばかりですけれど。それもいいでしょうか。
「それじゃあいいわ」
「先輩も素直になればいいのに」
「あのね」
今の言葉にはかなりりっぷくを覚えました。何、その台詞。
「何で私が素直になるのよ。違うでしょ」
「あれ、そうじゃないの?」
向こうも向こうで何で、って顔です。作ってるんじゃないでしょうか。
「先輩が素直じゃないから僕だって」
「新一君がどうしたっていうのかしら」
「ついつい勇んでしまうんだけれど」
「勝手に言いなさい」
何に勇んでいるんでしょう。かなりふざけています。
「とにかく。デートよね」
「うん」
それでも二人しかいないから仕方なくですけれど。何はともあれデートになります。
「コースは私に任せて」
「先輩が?」
「何回か来たことあるし。それに」
ここからが重要です。というより本題です。
「レポートのこともあるから見なくちゃいけないものが多いのよ」
「そういえばそうだったね」
「新一君と違って色々大変なのよ」
これは事実です。
「そこのところわかって欲しいものね」
「ふうん」
ふうん、て。本当にお気楽なんだから。
「それじゃあ。行くわよ」
「レポートって何処のことについてレポートするの?」
それは新一君には関係ない気がしますけれど。何か聞いてきました。
「よかったら教えてよ、先輩」
「古代中国史だけれど」
大体春秋時代のことです。
「そこについてね。少し」
「ああ、だったらさ」
「何かあるの?」
「うん」
にこりと笑って答えてきます。何かあるんでしょうか。
「ここもいいけれど別の場所も行くといいよ」
「別の場所!?」
そう言われて目を少しパチクリさせました。
「何処に?」
「やっぱりレポートでもいい点貰いたいよね」
「ええ、まあ」
これは当然です。合格してはいおめでとう、っていうのは今一つ好きじゃないんです。やっぱり完璧にやらないと。それで頭が硬いって言われることもありますが。
「だったらさ。図書館にも行くといいよ」
「天理図書館に!?」
「まああそこが一番いいかな」
新一君はほんの少し考えた後で答えてきました。
「絶対あるだろうしね」
「あるって何が?」
「図書館にあるのは本だよ」
新一君は笑って言います。
「だからさ。中国古代の本とか」
「それなら本屋さんとかに」
「違うんだって、先輩」
私の顔を見てにこりと笑います。
「古典があるんだよ、ちゃんと」
「古典っていうと」
そこからは私も知ってます。新一君が何を言いたいのかもわかります。
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