転生とらぶる
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番外編071話 if ゲート編 07話
結局日本に向かう事になったのは、伊丹達一行と俺、この世界のテュカ、レレイ、ロウリィ。
ここまでは予想通りだったのだが、何故か……そう、何故かピニャと金髪縦ロールの女……ボーゼスまでもが、一緒に来る事になってしまった。
いやまぁ、イタリカで見せたポチの一件を考えれば、伊丹の件は向こうにとって大きなマイナス要因になるのは間違いないし、帝都をポチの炎で焼きつくされるよりも前に、何とか弁明しておこうと、そう考えてるのは間違いない。
そんな訳で、日本に出て来たんだが……
「うん、まぁ、こんなもんだよな」
「あはは。アルマー代表にとっては、この光景はそんなに珍しくないでしょうね」
俺の様子を見て、栗林が笑みを浮かべながら言ってくる。
実際、ホワイトスターの中もこんな光景だし。
勿論ここまで建物が密集していたりはしないからな。
「よければ、後で日本の観光名所を案内しますけど、どうです?」
「そうだな、時間があればそうさせて貰うよ」
ムラタとの模擬戦から、栗林は俺へのアピールが強くなっている。
まぁ、強い相手が好みだって話だから、それも自然の流れかもしれないが。
もっとも、俺に恋人が10人以上いる事に関しては、どう納得したのか分からないが。
「アルマー代表、クリ、そろそろ行くからこっちに!」
伊丹の言葉に、俺達は政府の用意した車に――いつの間にか男が1人増えていたが――乗り、真っ先に向かったのは、何故かチェーン店の牛丼店。
「いやまぁ、別に俺もこういうジャンクな食べ物は嫌いじゃないから文句は言わないが、普通ならもっと高級店とかに連れて行くんじゃないか?」
「すいませんね、アルマー代表。出張で使われる料金は決まってるので」
「……そういうものか」
仮にも友好国――まだ同盟は結んでいないが――のトップと、敵対国とはいえ一国の皇女がやって来たんだから、どこぞの料亭……とまではいかないが、もう少し美味い物を食わせてもいいと思うんだが。
ともあれ、俺達は食事を終えると次に服を揃える。
もっとも、俺はエザリアから言われてマリューが用意した服を持って来ているので、特に新しく服を用意する必要はない。
ちなみに、俺は服の事が分からないんだが、栗林からこの服は似合うかとか、こっちの服はどうかとか……うん、まぁ、栗林も性格はともかく、外見だけで考えれば美人と呼ぶのに相応しい顔立ちだから、眼福ではあったけどな。
ともあれ、俺達はともかく布で包んでいるとはいえ、ハルバードを持っているロウリィや、ハイエルフのテュカは色んな意味で目立つ。
実際、服屋の店員も服を買うテュカをマジマジと見ていたしな。
そんな訳で服を買い終われば、俺達が向かうのは国会となる。
俺達の出番は午後3時かららしいんだから、ちょっと早いような気もする。
途中でピニャとボーゼスは車から降り……ん? あっちで待ってるのって、エザリアじゃないか?
まぁ、交渉とかをするんだから、シャドウミラーからエザリアが来てるのも当然か。
エザリアも俺に気が付いたのか、視線を向けると小さく頷いてくる。
それが何を意味しているのか、俺は知っている。
何でもこの国では政治家ではなく政治屋が非常に多く、アメリカや中国のペットのような奴も多いらしい。
また、シャドウミラーが民主主義を重視しない軍事国家という事で、何か勘違いして自分達の方が上だと思い込んでいる者も多いとか。
そういう意味で、シャドウミラーお得意の砲艦外交をするようにと、エザリアからは前もって言われている。
ようは、シャドウミラーを敵に回した場合、一体どうなるのかをしっかりと見せつけておく事が重要だという訳だ。
……さて、一体どうなるのか。それはそれで、結構楽しみではあるな。
そんな風に思いながら、俺は再び動き出した車が停まるのを待つのだった。
いや、予想はしてたけど、この国の政治家は凄いな。
というか、こういう連中が政治家で本当に国を動かせるのか?
こういう連中を見る限り、民主主義が進んだ政治だというのは、ちょっと疑問を抱く。
帝国軍との戦いで殺すのはやりすぎだとか、向こうから攻撃してきてもこっちからは攻撃しないで話し合いで解決するべきだとか……それ以外にも様々。
……テュカとロウリィの年齢で国会中が騒いだが、エヴァという存在を知っている俺にとっては、その辺りは別に気にする事ではない。
向こうの質問している議員……幸原みずきとかいう女は、自分の思い通りに話が進まないようで、見るからに苛々していた。
政治家がそんなに素直に感情を顔に出してもいいのか? と思わないでもないのだが、日本の政治家ならそれが普通なのだろう。
ともあれ、最後に質問されるのが俺になる訳だが……
「アクセル・アルマー代表。シャドウミラーという国が、軍事独裁政権であるというのは本当の事でしょうか?」
「独裁ってのはどうかと思うが、軍事国家であるというのは間違いないな」
「何故、軍事国家などという、野蛮な国家にしたのでしょう?」
「へぇ……野蛮、ね。それなら俺も聞きたいが、何故この日本という国はあんたみたいな役にも立たない政治家……いや、政治屋をわざわざ好き勝手に動かす衆愚政治の極みみたいな国家体制を敷いてるんだ?」
ピタリ、と。
俺の言葉に国会内が静まり……だが、次の瞬間には与党野党関係なく俺を野次ってくる。
そうして野次ってくる連中に向け、1人ずつ殺気を向ける。
当然政治屋の類に殺気を感じ取るような能力はないだろうが、それでも濃密な殺気を向けられれば、何かがおかしいと感じる程度には影響はあるのだろう。
1人、また1人といった具合に黙り込んでいく。
そうして、特に強い野次を飛ばしていた数人が黙ると、その周囲にいる者達も多少の影響を受けて黙り込み、次第に野次は小さくなっていく。
ロウリィは俺の方を見て興味深そうにし、テュカやレレイといった面々は不安そうな様子を見せたままだ。
伊丹の方は、何が起こってるのか全く分かっていないのだろうが、それでも野次が急速に収まっていったのは俺の仕業だと理解はしているのか、視線を俺に向けていた。
「……うん? どうかしたのか? 急に静かになったみたいだが?」
野次が静まり返った国会の中を見回しながら、言葉を続ける。
「まぁ、いい。どうやら静かになったようだし、話を続けようが。自衛に関してすら他国の下に入って半ば属国と化しているこの国と違って、シャドウミラーは歴とした一国家だ。それに、この世界では理解出来ないような事も何度となく起きている。この国はどうやら自衛隊という名の軍隊を持ってるようだが、それで銀座事件をどうにか出来たか? いや、どうにか出来はしたんだろうが、その過程で起きた被害はどれくらいに及ぶ? そんな事態が何度も起こったら、軍事優先になるのは当然だと思わないか?」
正確には、俺達部隊としてのシャドウミラーが対外上色々と問題があるからこそ国という形になっていったのだが、実際に色々な……本当に色々なトラブルに巻き込まれたというのは、嘘ではない。
世界規模どころか、銀河規模のバジュラの件とか。
勿論その世界に介入しないようにしていれば、その辺りはどうとでもなったのかもしれないが……俺達が介入した事により、恐らくは本来死ぬ筈だった者を少なからず助けたというのは、間違いのない事実だ。
もっとも、それは逆に俺達が敵対した勢力では大量の死者が出ただろうが。
ともあれ、この国の政治屋が俺の殺気に正面から対抗出来る筈もなく、俺に質問をしている政治屋も、結局それ以上は何も口にしないまま、だが自分は悪くないといった正当化だけはまだ捨てていない。
……ふむ、そうだな。今の一件だけでそれなりに向こうに対してこちらの力を見せた訳だが……殺気というのは、あくまでもここにいる者、それも俺に殺気を向けられた者だけが感じられるものだ。
つまり、この光景をTV中継等で見ている者にとっては、いきなり野次が消えたとしか見えないのだ。
にしても、仮にも一国の代表として選挙で選ばれた面々がああも野次を飛ばしてくるとはな。
これを見る限り、やはり民主制というのは衆愚政治以外のなにものでもない。
いや、制度としては優れたものなのかもしれないが、それはあくまでもきちんと能力のある政治家が多数を占める場合に有効なのであって、取りあえず政治屋が大多数を占めるこの日本という国に、民主制という制度は民度的に無理がある。
いや、今は日本の政治に関して何かを考えている場合ではなかったな。
それに、日本と付き合っていく事になるだろうシャドウミラーの代表としては、その付き合っている国の手足が有能であっても頭が無能であるというのは、取りあえず安心出来る要素だ。
まぁ、そういうのは使い捨てにする勢力ならという事であって、本当に信頼する同盟国という扱いには絶対に出来ない国だが。
ともあれ、今のこの国会の状況をTVで見ている面々に、シャドウミラーの力が理解出来るようにして貰う必要があるか。
かといって、PTとかの人型機動兵器を見せるのはちょっと面白くない。
いやまぁ、視察団の連中にもう見せているのだから、その辺りは今更って気もするが。
となると……
「そうだな、1つ面白いものを見せてやろう」
そう告げ、国会の中にいる政治屋達の視線が俺に集まっているのを感じながら、呪文を唱える。
『我と盟約を結びし者よ、契約に従いその姿を現せ!』
その言葉と共に、俺の後ろの空間からグリが姿を現す。
「ガアアアアァ?」
「っと、グリ。足下に気をつけろよ。下には餌にしか見えない奴がいるが、取りあえず踏んだりはしないでくれ」
「グルアアアア」
俺の言葉に、グリは短く鳴く。
足下に視線を向け、人を踏み殺さないように、そして椅子とかそういうのを壊さないようにと注意しているグリを見て、俺は再びマイクに向かって喋る。
「グリフィンドラゴン、という種族のモンスターだ。俺達はこういう奴がいる世界で普通に戦ったりしてる」
俺の言葉に、グリは無言で周囲を見回す。
グリにしてみれば、このような場所というのは初めて見るだけに、とても興味深いのだろう。
固まっている政治屋達には分からないだろうが、周囲を見ているグリの視線に好奇心が宿っているのは、俺にはすぐに理解出来た。
俺以外にも、ロウリィはそんなグリを興味深そうに眺めている。
……恐らく、ロウリィならグリを相手に互角に戦えるんだろうな。
何だかんだと、ロウリィは生身での戦いという条件が付くが、かなりの強さを持つ。
また、亜神ということで不死身性を持ち、銃弾とかを食らっても死ぬような事はない。
いやまぁ、少しの間行動不能にはなるらしいが。
「さて、俺達シャドウミラーがどのような国家なのか、それは理解して貰えたと思う。正直なところを言わせて貰えば、この国……どころか、この世界そのものと戦っても俺達が勝つと、そう断言出来るだけの力は持っている。……グリ」
その言葉に、グリは少しだけ残念そうに俺に顔を擦りつけると、そのまま姿を消す。
ネギま世界の魔法界に戻っていたのだ。
「そんな訳で……まぁ、この国にいる無能な政治屋に何を言っても無意味かもしれないが、俺達との賢明な付き合いを希望する」
そう言い、俺の話は終わるのだった。
……伊丹が、あちゃーといったように顔を覆っていたが、残念ながら俺は日本の為にここに来た訳ではなく、あくまでもシャドウミラーの為にここに来たのだから、その辺りは納得して貰うしかないだろう。
何人かの政治屋はこっちを憎悪に満ちた視線で見ているが……まぁ、シャドウミラーの力を見せつけるという意味では、これ以上のものはない筈だ。
もしこのまま日本がこっちとの関係を見直すなら、それはそれでいい。
もっとも、関係を見直すといっても、どのような関係にしようとするのかというのは、俺にも分からない。
それが良い方向であれ、悪い方向であれ、それを決めるのは俺の前にいる政治屋達で……そして、この政治屋達を選んだのは、この国の住民達なのだ。
であれば、政治家ではなく政治屋を選んだ自分達が望んだ結果なのだから、どのような結果があっても、それはこの国の住人の責任となる。
それが民主制というものなのだから、この国の住人達も、例え東京を始めとした各所にフレイヤが放たれても、大人しく国と命運を共にしてくれるだろう。
まぁ、伊丹のように気の合う人物くらいであれば、いざとなればシャドウミラーで匿ってもいいが。
そんな風に考え、俺達は国会を出るのだった。
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