おぢばにおかえり
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
16部分:第三話 高校生と大学生その八
第三話 高校生と大学生その八
「私これから授業なのよ。だから」
「あれ、意地悪だなあ」
「意地悪も何も講義出ないと何にもならないじゃない」
真面目に出ないといけませんよね。何か彼はあまり真面目に授業受けているようには見えないですけれど。本当に不真面目なんだから。
「そうでしょ」
「折角先輩に会いに来たのに」
「また来なさい」
あれ、何でこんな言葉。
「四時になったら詰所ね」
「あっ、四時に」
「それかここでね」
また何か勝手に。言葉が出ちゃいます。何でなんでしょう。
「待ち合わせでどう?それだと文句ないでしょう?」
「じゃあ大学の食堂の前で」
「じゃあそこでね」
また自然に言葉出ます。私こんなこと思ってもいないのに。
「付き合ってあげるから」
「じゃあ何処に行くの?やっぱりデートに」
「馬鹿言いなさい」
今度は思った言葉が出ました。
「新一君とデートなんて」
「あっ、千里」
「誰とお話してるの?」
後ろから友達が声をかけてきました。高校時代から、つまり寮でも一緒だった子達です。つまり新一君も知ってるんです。かなりまずいです。
「誰でもないわ」
慌てて言い繕います。
「誰でもないから」
「誰でもないからって。何だ」
「阿波野君じゃない」
「お久し振りです、先輩方」
新一君は軽い調子で彼女達に挨拶をします。
「どうしたの、ここに来て」
「あのですね」
新一君は彼女達にも話をします。私にとってかなりまずい流れです。
「実は中村先輩に会いに」
やっぱりこう言いました。
「来たんですけれど先輩が冷たくて」
「あら、ちっちもやるじゃない」
「そうよね。何も知らない顔して」
「ちょ、ちょっと」
慌てて反論します。
「それはないでしょ。私は呼んでもいないし」
「そうなんですよ。先輩冷たいから」
新一君はここぞとばかりに言います。しまった、って思いました。今ここで呼んでないって言っても意味ないんですよね。彼が勝手に来てるんですから。
「それで僕仕方なく」
「年下殺しね」
「やるわね、ちっち」
皆私の方を楽しげに見て言います。あからさまにからかってきています。
「来たんですけれど。それでですな」
「うんうん」
「どうしたの、それで」
まずいことに皆新一君の方にいっちゃってます。私完全に孤立無援です。彼の話になるといつもこうなるのが本当に嫌で不思議です。
「後で待ち合わせすることになりまして」
「でかしたっ」
「少年、お見事」
やっぱり新一君の肩を持っています。わかっていましたけれど。
「それで場所は?」
「時間は?」
「そこの大学の食堂の前で四時」
「わかったわ」
「その時間までにこの娘連れて来たらいいのね」
話は完全に新一君の望むふうです。私のことはもう皆聞いてもきません。
「じゃあお姉さん達も協力してあげるから」
「任せておきなさい」
「すいません」
すいませんじゃありません。これで完全に逃げられなくなりました。確かにあれですお、私逃げることは好きじゃないですし最初からそのつもりでしたけれどこうして外堀埋められると。何だか非常に嫌な気分になりますよね。そういうことです。
ページ上へ戻る