【完結】猫娘と化した緑谷出久
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猫娘と入学編
NO.005 雄英試験
前書き
今日最後の更新。
出久はついに雄英試験会場へと足を運んでいたのである。
オールマイトからは個性もまだフルカウルは10%しか会得していないから大丈夫かと相談してみたけど、むしろ『君を超す子は少ないんじゃないかなぁ……?』と太鼓判を押されてしまった始末だった。
そして、『頑張って来なさい!』と言われたので頑張る以外の選択肢なんて度外視だ。
「よし! 頑張ろ―――……」
「どけデク!!」
気合を込めようとした矢先に背後から爆豪が歩いてきた。
睨みを出久に利かせながら、
「俺の前に立つな、殺すぞ!」
とまで言われて出久はなんとか「お互いにガンバロウネ」と片言で返したけどそのまま先へと言ってしまった。
周りからはそんな爆豪の出久に対する態度に、
「前にテレビで見たけど女子に対して感じ悪いよね」「あの子も災難だな……」「あんなに可愛いのにな。なんであんな言葉を吐けるのか」
と殆どが出久を擁護する言葉ばかりだったので出久もどこか悲しくなった。
でも、いつまでもじっとしていられない。
そう思い出久は少し走り出そうとして、しかし途端に地面に足を取られて倒れそうになる。
だけどそこで自分の体が浮いている感覚を味わって、
「大丈夫? ごめんね、うちの個性で助けちゃった。やっぱり転ぶなんて縁起悪いもんね?」
「あ、ありがと……その」
「それよりお互い頑張ろうね!」
そう言って助けてくれた少女はその場を立ち去っていった。
それで出久は「女子と喋っちゃった!」と少しの嬉しい気持ちとすぐに「自分も女子だったんだ……」と猫耳と二股の尻尾を垂らして落ち込む。
でも気を取り直して受験席に座る出久。
でもなぜか隣が爆豪で己の不幸を呪うばかりである。
雄英の試験は倍率が300を優に超えている。
そして試験会場には雄英に入るため多くの受験生が受けに来ていた。
その中で爆豪と隣席に座るというのは何という確率か。
「(ま、あまぁなんとかなるよね?)」
それから筆記試験も終えて手応えを感じたまま実技試験の説明に入る。
実技試験の説明にはプロヒーローであるプレゼント・マイクがその任を預かっていた。
『今日は俺のライブへようこそ!エヴィバディセイヘイ!』
プレゼント・マイクの叫び声に、しかし試験前ともあり応えるものはいない。
このような場所でなければ出久は素直に叫んでいただろう。それくらいの自制心はあるのだ。
『こいつぁシヴィ―――!!! 受験生のリスナー! 実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!! アーユーレディ!?』
出久は返したい精神を何とか耐えた。
しかしもうすでに感動に打ち震えている。
いつもの癖でぼそぼそと小言を話してしまうので隣の爆豪に「うるせぇ」と言われる始末。
『入試要項通り! リスナーにはこの後! 10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ! 持ち込みは自由! プレゼン後は各自指定の演習会場に向かってくれよな!』
その説明を受けて爆豪が言った。
「同校同士で協力させねぇって事か。それじゃてめぇを潰せねぇじゃねーか?」
「怖いよかっちゃん……」
その間にも説明は続いていく。
『演習場には仮想敵を三種、多数配置してありそれぞれ『攻略難易度』に応じてポイントを設けてある! 各々なりの“個性”で“仮想敵”を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが君達リスナーの目的だ! もちろん、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?』
プレゼント・マイクの説明に、しかし横槍を入れる眼鏡の青年が立ち上がった。
「質問よろしいでしょうか? プリントには四種の敵が記載されています! 誤載であれば日本最高峰の恥ずべき痴態です! 我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」
ご尤もな意見だと出久は思った。
確かにプリントを見れば四種と書かれているのが見て取れる。
だけどプリントを見ていた出久に対して眼鏡の少年が「ついでにそこのポニーテールの猫種の女子!」と声を荒げて、
「説明中にさっきからブツブツとうるさいぞ! 物見遊山で来たのならすぐにここから帰りたまえ!」
「うっ……」
それで周りの視線もあって涙目になる出久。
その反応に眼鏡の少年は慌てたようで、
「す、すまない! だがここはもう試験会場なのだ。だから静かにしてくれると助かるのだが……」
「すみません……」
「わかってくれたのならいいんだ」
なんとか沈静化したのを確認したプレゼント・マイクは、
『痴話喧嘩ならいつでもできるぜー!? 今は試験に集中しな。まぁそうだな。受験番号7111くん。ナイスなお便りサンキューな! 四種目の敵は0P! そいつはいわばお邪魔虫だ! 各会場に一体! 所狭しと大暴れするよう『ギミック』よ! 戦わず逃げることをお勧めするぜ!」
「ありがとうございました!失礼いたしました!」
それで着席する眼鏡の少年。
『俺からは以上だ!! 最後にリスナーへ我が校の校訓をプレゼントしよう。
かの英雄ナポレオン=ポナパルトは言った!『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』と!!
更に向こうへ!”Pius Ultra!!”それではよい受難を!!』
それから試験会場の場所へと移動していく一同。
その中を出久は歩いていきながら、
「(大丈夫……オールマイトとの特訓の成果を出し切ればいいんじゃないか。僕は出来る!)」
その中で先ほどの眼鏡の少年と助けてくれた女の子の姿も確認できたけど、さっきのように注意されないようにと出久は我慢した。
その時だった。
『スタートだ! イエーーーーーイ!!』
いきなりのプレゼント・マイクの叫びに頭が一瞬で戦闘モードへと移行した出久は、
「(脚力強化!!)いくぞ! 高速移動!!」
出久はそれぞれが走り出す中で誰よりも先行して前を走っていた。
「なっ!? あの子、さっきのドジっ子じゃないのか!?」「速すぎる!!」「この俺よりも速いだと!?」
各々の声を置き去りにしてさっそく現れた1ポイントの仮想ヴィランに出久は爪を伸ばし硬化させて一瞬の間に引き裂いた。
「脆いな……でもこれならやれる!!」
そして出久は普段は使用していない猫耳に神経を集中させて機械的な足音を頼りに次々と仮想ヴィランを見つけて引き裂いていった。
残り時間は5分と告げられて「この調子なら平気そうかな……?」と安心している時だった。
ビルとビルの間を圧潰させるように0ポイントの仮想ヴィランが出現したのだ。
「あれが0ポイントの仮想ヴィラン……」
出久の周りの受験者達はあれよあれよという間に逃げ出してしまっていた。
それで出久も一瞬の判断を迫られた時だった。
「いったぁ……」
先程崩れた瓦礫の影響で出久を助けてくれた女の子が倒れてしまっていたのだ。
「助けなきゃ!!」
出久は迷いもなく少女のもとへと高速で移動した。
「大丈夫……?」
「あ、うん。その、うち……」
「待って。安全な場所に移動させるから!」
そしてすぐさま受験者達が避難している場所へと女の子を運んだ後、
「0ポイントでも仮想ヴィランだ。放っておくわけにはいかない!」
向かっていこうとする出久に、だが背後であの眼鏡の少年が大声を上げてきた。
「君! 待ちたまえ! あれは別に倒さなくてもよいものなのだから……!!」
そう言われて出久は眼鏡の少年に笑顔を浮かばせながらも振り向いて、
「それでも、あれを放っておくと町が壊されちゃうでしょ? だから僕は行くよ!」
走っていく出久の姿を眼鏡の少年はただ頬を赤くさせたまま見送るだけであった。
少年の心に芽生えた気持ちはなにかななにかな……?
そんな事は知らない出久は、左手の爪を最大限まで伸ばして現状で最高の硬化をさせ、ワン・フォー・オールを全身に巡らせて右手を強く握る。
そして最後に高速移動をして0ポイント仮想ヴィランの前まで来ると、脚力強化をして頭上まで飛び上がり、体を捻り重力に任せて降下し一気に爪を振り下ろした。
結果、0ポイントヴィランは身体上半分まで引き裂かれた。
「(チッ……浅かったか。)でも! スマーーーーッシュ!!」
溜めていた右の拳を一気に振り抜いて今度こそ0ポイント仮想ヴィランは粉々に砕け散った。
『試験終了ーーーー!』
終了のアナウンスが流れ、これにて雄英試験は終わったのであった。
出久は帰り道に猫耳をぴょこぴょこと動かしながら喜びを表現していた。
「これならオールマイトにも認められるくらいの出来だったかな……?」
「あ、あの……ッ!」
そこで背後から出久が助けた女の子が走ってきて、
「その、さっきはうちのこと助けてくれてありがとう!」
「うん。ケガとかない?」
「うん。リカバリーガールって人に捻挫も治してもらったんよ」
「そっか。よかった」
「はわー……」
女の子は出久の表情に見惚れていた。同じ女の子だというのに。
「じゃなくって! 自己紹介しよう! うちの名前は麗日お茶子です!」
「わかった。僕は出久。緑谷出久っていうんだ」
「出久ちゃんか。もし、受かったら高校生活をよろしくね!」
「あはは。まだ気持ちが早いよ。受かってるか分からないのに」
「いんや、出久ちゃんは絶対受かっとるよ!」
「そう、かな……?」
「うん!」
それから二人は軽く会話をした後に握手をして別れた。
お互いに結果が楽しみだねと言って。
後書き
ちょっと強くしすぎましたかね?
レスキューポイントもしっかり稼いでいるのでばっちしですね。
ちなみに出久は髪をポニーテールにしています。
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