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【完結】猫娘と化した緑谷出久

作者:炎の剣製
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猫娘と入学編
  NO.002 猫娘

 
前書き
二話更新。 

 


出久が次に目を覚ましたのは事件が解決した後だった。
見れば爆豪はヒーロー達に「すごいタフネスだ! それにその個性!」「プロになったらぜひ事務所(うち)相棒(サイドキック)に!」と称賛の言葉を贈られていた。
だけど出久が目を覚ましたのに気付いたのか、一人のヒーローが近づいてきて、

「少年……いや、今は少女なのか? とにかく君を個性無断使用の疑いで一回警察まで送らないといけない。着いてきてもらっても構わないかね?」
「……え? 個性? そんなはずは……僕は無個性ですよ?」
「は? そんなまさか……だってしっかりと個性が出ているじゃないか」

ヒーローにそう言われて出久は困惑した。
だけどさらにそこに爆豪が出久に掴みかかってきて、

「おい、デク!! お前無個性じゃなかったのかよ!? 今まで俺の事を騙していたのかよ!!?」
「ちょ、待って待ってかっちゃん! かっちゃんが知っている通り僕は無個性だよ!?」
「だったらこれはなんなんだ!?」

爆豪は思わず出久のある部分を掴んでいた。

「痛い痛い痛い!? かっちゃん、どこを掴んでるのさ!?」
「どこってお前……はっ? マジで気づいていねぇのか?」

爆豪のどこか抜けた声にさらに困惑の色を強める出久。
そこに状況を見守っていたヒーローがまた声を出して、

「爆豪君、一つ聞くが……本当にこの少年?は無個性なのかね?」
「……ああ。医者にもそう言われたはずだ。デクから聞いたからな」
「ふぅむ……(おそ)咲きの個性という事かな?」
「あ、あのー……本当に僕は無個性ですよ?」
「そうか。しかしこれでは埒があかないな。Mtレディ、いるか?」
「なにかしら……?」

そこに通常のサイズに戻っていたMtレディがやってきた。

「なにか手鏡か映し台みたいなものは持っているか?」
「あるわ。少し待っていてね」

しばらくしてMtレディが人一人分が映る鏡を持ってきた。

「それじゃ……えっと、あなたのお名前は?」
「み、緑谷出久です」
「出久ちゃんね」
「出久ちゃん!?」

いきなりのちゃん付けにさらに戸惑う出久。

「とにかくこの鏡を見てちょうだい。その訳が分かるから」
「わ、わかりました……」

それで恐る恐る出久は鏡を見た。
そこには頭に猫耳を生やしていてお尻の方からは二股に分かれた尻尾が生えていた。
指の爪は鉤爪のように鋭く尖っている。
なにより大きな変化は自身の性別は男のはずなのに腰まで伸びた癖のある髪。盛り上がった胸。くびれた腰。細い手足。
目つきなんて少し猫のように丸くなっていて従来の地味さが減って可愛くなってしまっていた。そばかすが残っているのは唯一の救いといえば救いか……?
冷静になってきて気づけば声も高くなってしまっているではないか。

「な、なぁぁぁぁああああ!!!!????」

その大きすぎる変化に出久は思わず女性の様な大声を上げて叫んでしまった。
だけどすぐに意識を別の物に置き換えて即座にとある部分を触ってみた。

「……な、ない……」

そう、男の大事なものが消えてしまっていたのだ。
それにはさすがのMtレディも気の毒そうな表情をしながらも、

「個性の開花とともに性別まで反転してしまったのね……可哀想に」

気が遠くなるような気持ちでそのまま出久は警察ではなく病院へと連行された。
そして診断結果は、

「……ふむ。緑谷出久君の個性は『雌猫』だね」
「め、雌猫……」

その診断結果に出久はシュンッ……と猫耳が垂れ下がってしまっていた。
そして、今回は突発的な個性の発動という事で警察沙汰にはならずに釈放された。





出久は半ば放心状態のまま家までの帰り道を歩いていた。
だけど背後から聞こえてくる「おいっ!!」という怒声。
見ればそこには少し息が上がっている爆豪の姿があった。

「かっちゃん……待っててくれたの?」
「ふざけんなクソナードが! 俺は言いたい事があっただけだ!」

そう言ってデクの胸倉を掴みながら、

「運よく個性が発動したからってな! 調子に乗んなよ! てめぇは昔も今もクソナードに変わりはねぇんだ! それに誰がてめぇなんかに助けを求めたよ!?」

それから一方的に愚痴を零しまくる爆豪に、でも出久は別の思いを抱いていた。

「ありがとう、かっちゃん……」
「あぁん!!?」
「こんなに見た目が変わっちゃったのに今までと変わらず僕に接してくれて……」
「クソデクはクソデクだ! 男だろうが女だろうがてめぇはてめぇだろうが!!」
「うん……」

それだけで出久はどこか救われる気持ちになった。

「あぁ、ったく……調子が狂うぜ。いいか!? 個性が発動したからって所詮は訓練もろくにしてねぇ付け焼刃なんだから雄英なんざ受けるんじゃねーぞ!? それだけ言いたかったんだ。じゃあな」

最後まで爆豪は爆豪のままだった。そのまま帰っていく彼を見ながらも、だけど、出久はそれで思い至った。

「そうだ…………個性が出たって事は、僕はヒーローを目指せるって事?」


―――その通りだ緑谷少年!



それに反応が返ってきて振り向けばそこにはオールマイトの姿があった。

「オールマイト!?」
「うむ。それよりありがとう緑谷少年。いや、今は少女か? まぁいい。君の身の上と示した行動がなければ私は惨めなニセ筋になるところだったよ」
「それって……でも、僕は個性が発動するまではただの無個性だった……ヒーロー達の邪魔をしてしまって……」
「そうさ! あの時、今は個性が発動したからよかったが無個性だと思い込んでいた小心者の君だったから! 私は突き動かされた!」

オールマイトは語る。

「トップヒーローは学生の頃から逸話を残している。彼らの多くが話をこう結ぶ……『考えるより先に体が動いていた』と……」

それを聞いて思い出す過去の出来事。

『ゴメンねぇ出久ごめんね』という母の言葉。

そしてもう一つは無謀だろうと、血だらけになろうと助けたいと思ったあの時……。
その思いが今、ここに集約されようとしていた。

「君はヒーローになれる!!」

オールマイトのその言葉に出久は盛大に涙を流した。







これは、様々な数奇な運命の巡り合わせによって緑谷出久が最高のヒーローになるまでの物語である。

 
 

 
後書き
うーん……まだまだかもですね。
文字数稼げないのはしょうがない。

これで行こうと思います。 
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