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おぢばにおかえり

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12部分:第三話 高校生と大学生その四


第三話 高校生と大学生その四

「本当に困った子ですよね」
「あら、そうかしら」
 奥さんは御主人と一緒に私の言葉に笑って返します。何でなんでしょう。
「私は別にそうは思わないけれど」
「僕もだね、それは」
 御主人もそう言われます。
「いい子じゃない。詰所に来てひのきしん手伝ってくれてるし」
「本当は真面目な子だよ」
「そうでしょうか」
 その言葉には思い切り懐疑的になりました。首を捻らずにはいられません。
「私は全然思えないんですけれど」
「まあ彼は素直じゃないからね」
 御主人はまた笑って言われます。
「そういうところは」
「素直じゃないんですか?」
「そう思わない?」
「ちょっと」
 首を傾げて答えます。
「そうは思わないですけど」
「気付かないかしら」
 奥さんはふと言ってきました。
「あの子のそうしたところ」
「素直じゃないっていうかやんちゃです」
 私はそう思います。
「もっと言うと子供です」
「ふふふ。そう思うの」
 奥さんは私の言葉を聞いてわた笑います。
「千里ちゃんは」
「そうじゃないんですか?」
「あれで結構大人よ」
 奥さんの言葉の意味がわかりません。何処がそうなのか。
「はあ」
「よく見ればわかるんじゃないかしら」
「そうは思わないんですけれど、どうしても」
「まあよく見てね」
 奥さんはまた仰います。御主人も私の顔を見て笑ってます。何故なんでしょう。
「そこのところは」
「一年ずっと見せられてますけれど」
 高校三年からずっとです。入学式でいきなり出会って。その時からあんなのだったんですよ。所属が同じ大教会だってわかった時は凄く嫌でした。
「ああしたところばかり」
「ほら、鏡」
 奥さんがふと仰います。
「ここは何て呼ばれてるかしら」
「鏡屋敷ですよね」
「そうよ」
 よく言われることですがいぢばは鏡屋敷です。自分の心やいんねんを映し出す場所だって言われています。そういえば私も怒りっぽいところをよく見せられているような。新一君のああしたいい加減なところばかり見せられて。
「だから。色々と鏡を見て」
「ええと、この場合は」
 自分を見るんじゃなくて。
「彼の色々なところを見てね」
「ううん」
 思わず首を捻ります。そういえば何となく思うところですけれど。
「おみちについては真面目でしょうか」
「そう。わかったわね」
 そういえばひのきしんは真面目にしています。それどころか急に志願してきてすっごく頑張ったりします。かなり気紛れに出て来ますけれど。
「そういうところとか」
「けど私にだけ」
 からかってくるんですよね。それもしょっちゅう。
「それはそれで」
「はあ」
「よく見ていればいいから」
「何かあれですね」
 そこまで聞いてまた思うことです。こう思うのって嫌なんですけれど。
「新一君私の弟みたいですね」
「あはは、そうね」
 奥さんはそれを聞いて笑われます。
「やんちゃだしいい加減だし」
「あまり気持ちのいい考えじゃないですけれど」
 本当にそうです。よく言われるんでその度に本当に嫌な想いをします。
「確か千里ちゃんはご兄弟は」
「妹が二人です」
 一回中村って苗字で三人姉妹なんで中村紀洋さんのお子さんと同じだって言われました。それを言ったのはあの新一君なんですが。
「じゃあ男の子は」
「いないです」
 何故かわからないですけれど親戚で女の子ばかりって私のところだけなんです。これもいんねんなんでしょうか。いんねんは色々あるんです。いいのは白いんねん、悪いのは悪いんねんって呼ばれています。
「じゃあ丁度いいじゃない」
「そうそう」
「よくないです」
 俯いて言いました。
 
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