おぢばにおかえり
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119部分:第十六話 色々と大変ですその六
第十六話 色々と大変ですその六
「背は欲しいのだけれど」
「背がですか」
「そうなのよ。小さい小さいってずっと言われていたし」
「それってやっぱり嫌ですよね」
「勿論よ」
ここでの先輩と私の意見は完全に同じでした。先輩も背が低くてそれをコンプレックスにしておられます。ただ先輩は顔が可愛いんでそれが私との大きな違いです。
「あと十センチは欲しいのだけれど」
「十センチですか」
「そうすれば一六二センチだから」
つまり先輩は一五二センチです。私より二センチ高いということになります。
「凄い高いわよね」
こう私に言ってこられます。
「どうかしら」
「一六二センチですか」
確か深田恭子さんがそれ位だったような。あの人も最初と今では雰囲気が全然違うように思えます。好きな女優さんではありますけれど。
「普通じゃないんですか?」
「普通かしら」
「はい、世の中だと多分」
つまり私達が低過ぎるわけで。自覚せざるを得ません。
「そうなんじゃないかなって思うんですけれど」
「そうかも。けれど認めるのは」
認めたらそれこそチビだってことですから。それはやっぱり。
「江戸時代じゃ私の背が男の人の背だったらしいのだけれどね」
「えっ、そんなに小さかったんですか」
「そうらしいわ」
それはまた随分と小さかったんだと。お話を聞いてびっくりです。ということはです。立教が天保九年十月二十六日ですからその時の方々は。
「だとすると秀司やこかん様は」
御二人とも教祖のお子様です。教祖伝では物凄い色々と活躍されているお姿が書き残されています。私はこかん様がとても大好きです。
「今の人から見たら小さかったのだと思うわ」
「そうなんですか」
「時代によって人の背って変わるそうだし」
初耳です。というか考えたことなかったです。
「昔は一六〇あったら女の人じゃかなり高かったそうよ」
「へえ」
「私やちっちでも高かったそうだから」
「私がですか」
何か夢みたいな言葉です。
「そこだけ昔になりたいわよね」
「そうですね。私が大きいって」
「ちっちってあれ?」
ここで私に話を振ってこられました。
「はい?」
「子供の頃から一番前だったのかしら」
「そうです」
答える時に俯いてしまいました。
「伸びないんです、本当に」
「私もなのよね。幼稚園の頃から一番前で」
「ですか」
「それで今も。伸びないままなのよ」
「大きくなったら背も伸びるって言われませんでした?」
「お父さんとお母さんに言われたわ」
やっぱりそうでした。ちなみに先輩は八人兄弟だそうです。それで皆美男美女だとか。確かに先輩も可愛いですし。もてない筈がないと思うんですけれど。
「それでもね。広島弁はかなりなおっても」
「背はですか」
「何食べたらよかったのかしら」
またしてもここで食べ物の話です。
「背が伸びるには」
「私もそれ知りたいです」
紛れもない私の本音です。
「伸びなくて、本当に」
「わかってれば私も大きくなっていると思わない?」
「うっ・・・・・・」
それを言われると。
「この話止めない?絶対に答えでないわよ」
「そうですね。それじゃあ」
「そういうこと。それにしても東寮に来た時ねえ」
「何かあったんですか?」
「正直方言が凄かったのよ」
広島弁ですね、それってやっぱり。
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