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おぢばにおかえり

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111部分:第十五話 中間テストその五


第十五話 中間テストその五

「そうでしょ」
「何かお母さんみたいな言葉ね」
「それは言わないでよ」
 どういうわけかこう言われると困った顔を見せてきました。
「よくおばちゃん顔って言われるし」
「そうなの」
「そうなのよ。それこそ子供の頃からよ」
 あらあらそれは、聞いていてかなりのものだと思いました。
「それで困ってるのよ」
「そんなふうには見えないけれど」
「ちっちとは違うのよ」
 私は童顔だって言われます。小柄なせいで余計にそう言われるんです。
「私背も高かったし」
「高かったのね」
「そう、高かったの」
 今は普通なんです。女の子って背が伸びてもすぐに止まったりしますよね。私は小学校どころか幼稚園の頃からずっとクラスで一番前でしたけれど。
「今はこんなのだけれどね」
「背って伸びないのよね」
「ちっちは特にね」
「否定できないわね」
 凄く残念なことに。それにしても高校に入ってからずっと背のことばかり考えて話しているような。気のせいじゃなくて本当に。自分でも困ったことです。
「それは」
「低いのは事実だしね」
「そうなのよ。おみちの女の人ってそういう人が多いし」
「背の高い人は少数派?」
「多分そうよね」
 私の家なんてお母さんもお婆ちゃんも叔母さん達も妹達も。皆が皆背が低いんです。私が一番低いらしいんですけれど。これは一族の皆から言われます。
「修養科の人達を見ても」
「元々日本人って背は低いんだけれど」
「最近高くなったし」
 天理高校では男の子は何か結構大きいんですけれど。何で女の子はそれで低い娘が多いの?っていうのは不思議なんですけれど。
 考えれば考える程わからないところがあります。
「私なんて牛乳飲んだり必死に頑張ってるのよ」
「それでも伸びないのね」
「全然よ」
 遺伝なんでしょうか。
「一五五は欲しいのに」
「あまり高い望みじゃないわね」
「高望みはしないの」
 これは私の考えです。そういうのは好きじゃないんです。
「特に背のことは」
「そうなの」
「そうなの。それでもあと五センチだけでも」
「やれやれ。ちっちもコンプレックスあるのね」
「ない人なんているのかしら」
 私は背のことで。他にも色々なことでコンプレックスを持っていますよね。そうしたことでお父さんやお母さんのところに来る人も多いんでそれは知っています。
「正直なところ」
「いないんじゃないの?」
 実に正直な返事でした。
「そんなのって」
「そうでしょ?だったら私だって」
 私自身のことを肯定します。背が低いのだって。
「別にいいじゃない」
「そうよね。もてる材料にもなるし」
「えっ!?」
 今の言葉には思わず声をあげました。
「もてるって?」
「だから。小柄な女の子ももてるのよ」
 そう言われました。これもよく言われることですけれど。
「ちっちなんかは特にそうかもね」
「小さい小さいってよく言われるけれど」
 それも何ていうか。言われる度に困った顔になっちゃいます。
「それでもそれは」
「まあまあ。それにちっちは確かに小さいけれど」
「否定しないじゃない」
「けれどいいじゃない。可愛いんだし」
「そうかしら」
 ブスって面と向かって言われたことがあります。子供の時ですけれど言われた瞬間に大泣きしてそれでその日は一日中泣いていました。
「可愛いわよ。それこそアイドルになれる位ね」
「お世辞言っても回転焼きも鯛焼きも出ないわよ」
「それは月次祭にはお父さんとお母さんがいつも買ってくれるからいいわ」
「じゃあ天津甘栗も出ないわよ」
 少しムキになって言い返しました。月次祭になると商店街に出店が並んでそこに鯛焼きだのが売られるんです。私もよく買ってもらいました。
 
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