FAIRY TAIL~水の滅竜魔導士~
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もう一度
前書き
昨日から暁に繋がらない時がありちょっと更新が遅れちゃいました(*^-^*)エヘ
いよいよカウントダウンも終盤。果たしてレオンは天海を倒すことができるのか!?
光輝く少年の体。そこから発せられる魔力はあまりにも大きく戦場の気温がどんどん下がっていく。
「なぜ・・・貴様がそれを使えるんだ?」
全身が光輝くレオンを見て目を見開く天海。彼は覚醒した少年を見て驚愕し、立ち尽くしていた。だが、彼はすぐに笑みを浮かべ、少年に向き直る。
「あいつ以外にもそれを使える奴がいたとは・・・面白そうだ」
実に彼は楽しそうに、嬉しそうに笑っていた。一方のレオンには一切笑みはない。金色に輝く彼は、鋭い眼光を光らせ敵を見据えていた。
「待てレオン!!それを使っちゃいけない!!」
すると、突然蛇姫の鱗のマスター、オーバが叫びだした。
「ごめんオババ様。もう決めたんだ」
その声に彼はそんな解答をすると、天海めがけて加速する。彼は敵の懐に入り込むと、魔力を纏わせていない拳を叩き込んだ。
「ぐっ!!」
本気ではなかったであろう一撃。それなのに天海の大きな体は宙に浮いた。続けて攻撃を与えようと飛び上がるレオン。しかし、天海はそれに気付くと、彼の頭を踏み台にしてさらに高くジャンプする。
「てめ・・・ざけんな!!」
踏み台にされたことにより地上に舞い戻ったレオンは再度飛び上がろうと着地してジャンプに動き出そうとしたが、天海はその隙を与えない。
「フンッ!!」
高い位置から体を回転させて蹴りを打ち込む。痛烈な一打となるはずだった攻撃。だが、レオンはギリギリのところでそれを受け止めていた。
「調子に・・・乗るな!!」
「っお!!」
掴んだ足を投げ飛ばす。天海は体を回転させながら地面に着地すると、笑いが止まらないようで表情が緩みっぱなしだった。
「いいぞ、これだ・・・これを待っていたんだ」
そう言って次から次へと体術を繰り出す天海。だが、レオンはそれを全て受け流し、逆にカウンターを繰り出していく。
「そうだ!!もっともっと俺を楽しませてくれ!!」
その真価を見せたレオンの力に天海は興奮していた。ようやく現れた自らと互角に渡り合える相手。どれだけ長い間待っていたのか思い出せない。それほどまでに彼はこの瞬間を待ち焦がれていた。
「楽しんでる余裕なんか、すぐに無くしてやる!!」
それに対しレオンはますます速度を上げていく。負けたくない想い、友の頑張りを無駄に・・・いや、これ以上の犠牲を出さないためにも、彼は攻撃の手を緩めることはできなかった。
「やめろ・・・やめてくれレオン・・・」
形勢逆転・・・とまではいかないが、確実に状況が変わっているはずのハルジオン港。それなのに、オーバの顔色は優れなかった。彼女はさらに加速していき、天海を押し始めているレオンの姿を見て、涙が止まらなくなっている。
「オババ!!どうしたんだ!?」
なぜ彼女がそんな風になっているのか訳がわからないリオンが問いかける。すると、オーバは砂を握り締めながらその理由を語り始めた。
「神の領域・・・別名“死への扉”とも言われている」
「死への・・・扉?」
不吉すぎるその名前に、話を聞いていた全ての者の顔が強張った。オーバはもう立ち上がることもできない自らの無力さを悔やみながら、話を続ける。
「通常の魔導士は体内を覆うように魔力を高めることでその力を最大限に発揮している。だが、これはロスが大きい。なんといっても体外に常に魔力が放出されている状態を自ら作っているわけだからな。
一方の神の領域はそのロスが一切ない。体内で作られる魔力を全て自らの体に留まらせているのだから。
でもなぁ・・・それゆえに大きすぎる弱点がある」
「弱点・・・ですか?」
小さくうなずくオーバ。シリルは最悪の事態が脳裏を過り、体を起こそうと痛む体にムチを打ちながら、その話に耳を傾ける。
「神の領域の最大の弱点・・・それは体温が極端に上がりやすいということだ。
人間の体温はある一定ラインを越えると、タンパク質が変性され、凝固してしまう。だが神の領域はそれだけじゃ済まない。本来なら体内に留めておくことができない大きすぎる魔力を体内に無理やり留めさせている・・・そうなれば体温の上昇は著しく、脳まで溶けてしまうと言われている」
「脳まで溶ける・・・だと?」
ただ、そこまでなってしまった人間を彼女は見たことはないという。その理由は、脳が溶けるよりも早く魔力が尽き、動くことができなくなるからだそうだ。
だがこの魔法は危険ゆえに古に忘れ去られた魔法。その存在を知るものは今ではほとんどいない・・・つまり、本当に脳が溶ける前に魔力が尽きるのかわからないのだ。
「いや・・・確かに今までは誰もその限界値までたどり着かなかったかもしれない。でも、あの子はその他大勢とは違う!!レオンの持ってる魔力なら、最悪の事態だってあり得るんだよ!!」
それがわかっているからこそ、止めたかった。ギルドのマスターとして、その危険性を唯一認識していた存在として、彼の育ての親として・・・その身を呈してでも止めなければならないのはわかっていた・・・
「なんで・・・こんな時に動かないんだい・・・」
天海の攻撃力の前にピクリとも動かない自身の体。誰かが止めようにも、他の者たちも既に満身創痍・・・動けるものなど一人もいない。
「こうなってしまっては・・・あたしらにできるのは一つだけだよ」
そう言うと彼女は両手を握り合わせた。そしてさらに輝きを増していく彼を見ながら、血が滲み出るほどに奥歯を噛み締める。
「この戦いが一秒でも早く、終わることを祈るんだ」
(やべぇ・・・身体中がいてぇ・・・)
地面に亀裂が入るほどの激しいぶつかり合い。それを演じている氷の神は、なおも上がり続ける自身の速度と、激痛に襲われている節々に顔を歪ませていた。
(もう・・・自分の攻撃すら見えなくなってきた・・・なんだこれ?おもしれぇぞ)
自分の意志で体を動かしているはずなのに、目がそれを追いきれない。それどころか、次第に彼の体は自分の力で動かしているという感覚すら失われてきていた。
(痛みすら感じなくなってきた・・・これって限界が近いってことなのか?)
激しく乱れる呼吸。あまりの息苦しさに動きが止まりそうになる。だが、彼は歯を食い縛り懸命に攻撃を繰り出し続ける。
「氷神・永久凍土!!」
黒い冷気を纏った拳が天海の顔面に突き刺さる。今までどれだけの攻撃を打ち込んでも決して倒れなかった強敵。しかし、今は違う。神の領域を解放したレオンの重たすぎる拳に地面を転がると、四つん這いになり苦悶の表情を浮かべていた。
「まだ上がるのか・・・だが・・・」
口元の血痕を拭い立ち上がろうとした彼に飛び蹴りを放つ。見事に命中したそれの威力は絶大で、天海は地面にめり込んでいた。
「いい・・・そうでなくてはつまらない!!」
そう叫んだ彼はなおも輝きが増していく少年に向かっていく。まだまだ底が見えない氷の神。しかし、そんな彼も自らの魔法の代償により、時おり動きが鈍くなる時があった。
ゴッ
「ぐっ・・・」
頬に受けた痛みにより体がふらつく。倒れるのを必死に答えるが、少年の視界は徐々に狭くなってきており、敵を完全に捉えることができない。
「クソッ!!」
脳に行き渡る酸素の量が足りない。胸が苦しく筋肉の疲労も激しい。それでも彼の目は決して閉ざされることはない。
「この高揚感・・・やはりお前は・・・」
何かを言おうとしている天海の口を塞ぐように氷のつぶてを降らせる。これまでそれを避けるのは造作もなかったはずの天海も、レオンの攻撃によりダメージが蓄積してきたのか、動きが鈍く、もろにそれを食らっていた。
「くっ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
痛みに顔を歪ませたのはほんの一瞬のみ。しかし、これまで戦うことに喜びを感じていたはずのこの男の顔に、笑顔はなくなっていた。
「悪いが、俺はここで負けるわけにはいかん」
「奇遇だな、俺もだよ」
ぶつかり合う二人の闘志。そこには笑みなど一切ない。両者の目は疲労の色を濃く映し、全身には痛々しい傷が数えきれないほど付いていた。
「レオン!!」
死闘を繰り広げる二人に嫌な予感を感じたシェリアは大切な幼馴染みの名前を叫んだ。レオンはそれに返答せず、天海に突進する。
(そう心配しないでくれ、シェリア)
自らの命と引き換えにしてでも敵を倒そうとしているように周りからは見えているだろう。そのことは彼自身が一番よくわかっている。
(でも、俺はこんなところで死ぬ気はねぇ)
歯を食い縛り懸命に蹴りを、拳を放つ。天海はそれをガードすることはできない。いや、しないのだ。彼も防御を取ろうとしない敵に負けじと攻撃を繰り出し続けているのだから。
(ここで俺が死んだら、シェリアの判断は間違いだったことになる)
皆を守るために魔法を失う判断を下したシェリア。もしここで自分が死んでしまっては、彼女の決死の判断が水の泡になるのはわかっていた。
もう取り返しがつかないレベルなのはよくわかっている。それでも、不器用な彼にできることは一つしかない。
「生きて勝つ!!あいつのためにも!!」
ブチッ
足を踏み出した瞬間、ガクッと速度が落ちたのを感じた。その理由は明白だった。
「動け・・・足ぃ・・・」
限界を越えてもなおも速度を上げようとする彼の意志に体がついてこない。未成熟な体は脆く、足の筋が切れている箇所が出てき始めているのだ。
「限界のようだな、お互いに」
両手を伸ばして羽交い締めにしようとするその手を受け止める。その相手の足が、腕が震えているのを少年は感じ取った。
「これ以上の戦いは俺にはできん。だからこそ、最後に貴様に勝つ。勝ってみせる」
天海の体もピークをとっくに越えていた。靭帯が、関節が、もはや正常に機能することはない。それほどまでのダメージを受けているにも関わらず、彼は力を込め、レオンを押していく。
「悪ぃけど、俺はこれが最後なんて思ってねぇぞ?」
最後の戦いと覚悟を決めて挑んでくる天海に対し、レオンは逆の意味での覚悟を決めていた。
もしここで勝ったとしても、自分が後遺症を受けるほどのダメージが残っていては意味がない。それではシェリアの心が持たなくなってしまう。
彼に必要なのは勝利と、これまで通りに過ごすことができる肉体。そのためには、ここで大きなダメージを受けることなど許されない。
「っ!!おおおおお!!」
押してくる敵を払い除ける。バランスの崩れた天海はよろけるようにして後方へと下がると、頬を膨らませる少年が視界に入る。
「氷神の怒号!!」
広範囲への威力のあるブレスを避けることなどできるはずもなく、瞬く間に吹き飛ばされる天海。その顔には戦闘を楽しむ狂戦士の面影は見られなかった。
「ハァ・・・ハァ・・・」
目から光が消え始めている天海。生気が感じられないほどに疲労している顔は、長期戦のせいで頬が痩けていた。
「ふっ!!」
それでも戦うことを彼がやめることはない。体幹に力を入れて少年に攻撃を食らわせる。
「ゴフッ・・・」
ここでの一撃は非常に大きかった。しぶきのように口から飛び出す血液。その瞬間、少年の肉体から放たれる輝きが弱まっていくのに皆気付いた。
「魔力が・・・尽き始めているのか?」
魔力はもちろん、体を動かすために必要な体力が底を尽き始めていた。体へ酸素が行き渡らず何度も何度も深く呼吸をする両者。
「まだだ・・・俺は・・・」
少年を中心に風が舞い起こった。その瞬間、消えかけていた少年の輝きが再熱する。
「レオン・・・さすがは俺の家族だ」
すでに限界を越えているのは誰の目から見てもわかること。それなのに、少年は諦めることを知らない。彼のポテンシャルの高さに皆が感心した。
「バカな・・・貴様のどこにそんな力が残っているんだ・・・」
相手が強くなればなるほど勝負への威力が上がっていたはずの天海も、彼のここでのさらなる成長に唖然とせざるを得ない。彼は向かってくる敵に対し、ある感情を抱いていた。
(体が震えている・・・この感覚、奴と初めて出会った時に似ている)
『やぁ、やっと会えたね、天海』
多くの血が流れる戦場。そこに一人立っている血まみれの男。そんな彼に語りかけたのは、腰元まであるような長い髪をした、少年のような人物。
(似ている・・・やはりこいつは・・・)
氷を纏いし拳が顔面に突き刺さる。強烈な一撃だった。だが、天海の体は倒れようとはしない。
「ティオス・・・お前ともう一度戦ってみたかった」
そう呟いた瞬間、彼の顔つきが変わった。追撃を食らわせようとしていたレオンも背筋が凍るほどの目をしていた。
「ハァァァァァァ!!」
これまで最小限の動きで攻撃も回避も行ってきていたはずの天海が初めて見せた戦法。闇雲にぶつかって来ているようにしか見えないそれをレオンは受け流そうと・・・
「なっ・・・」
懸命に見切ろうとしていたが、徐々に上がってくる相手の速度に押し込まれ始めた。
「マジかよテメェ・・・」
まだまだ上がっていく天海の速度にダメージを受け始めるレオン。再熱したはずの魔力が、どんどん薄れていく。
「レオン!!負けんな!!」
その叫びを聞いた瞬間、彼の脳裏にある約束が思い出される。
『俺はいつか絶対にレオンを越える。だから・・・その時は本気で俺と戦ってほしい』
生まれて初めてした約束。ここでそんなことを思い出すとはと、少年は己の未熟さを痛感した。
(今思い出す必要ねぇだろ・・・それじゃあまるで・・・)
相手の拳を掻い潜るようにカウンターを叩き込むレオン。
「俺が死ぬみたいだろうが!!」
後方へと押されながらもなおも体勢を整え向かってくる天海。レオンは神の領域の限界時間がまもなくであることを、体で感じていた。
(こうなったら、一か八か行かせてもらうぜ!!)
黒い冷気を渦のように左腕に纏わせジャンプする。神をも滅するとされる滅神魔法の、最強の魔法。
「絶対零度!!」
二人の髪が凍りつくほどの冷気。その強烈な一撃は、天海の体を貫いた。
「「「「「あ・・・」」」」」
しかしそれと同時に、天海の腕もレオンの体を貫いていた。
後書き
いかがだったでしょうか。
9から始まったカウントダウンも終了し、次は何に向けてのカウントダウンだったのかが明かされます。結構頑張って引き伸ばした感はあると思うので、期待しててもらってもいい・・・かな?
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