エアツェルング・フォン・ザイン
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そのじゅうさん
月光を取り入れる為と思われる天窓。
ドアと天窓以外、道は無い。
そんな部屋に居たのは…
「貴方はだぁれ?新しいおもちゃ?」
フランドール・スカーレット…!
悪魔の妹、破壊する程度の能力の持ち主…
俺が好きな東方キャラNo1…それは今は関係無いか…
「いや、おもちゃじゃぁないよ。俺はザイン。通りすがりの妖精さ」
自分で言って置いてアレだが…クサいな…
「ねぇ!ザイン!私とっても暇なの!貴方は外から来たのでしょう?外の話を聞かせて?」
うーん…外の話…幻想郷の話か…
一年近く住んでるけどあんまり知らないんだよな…
「済まないな、俺もあまり外に出ないからわからんのだ」
「えー!残念…」
本当に残念そうだ…
寺子屋講師の俺としてはこんな娘を放って置けない…
「あー…代わりと言っては何だが…面白い御伽噺を聞かせて上げよう」
「御伽噺?」
「ああ、そうだ」
「聞かせて聞かせて!」
「じゃぁ座っていいかい?」
「うん!ここ!」
そう言ってフランドールは自分が座っていたベッド隣を叩く。
俺はそこに座った。
フランドールの隣だ。
まぁ、読み聞かせなら近い方がいいか。
「話してあげよう、とある英雄のお話を。
黒の英雄と呼ばれ、やがて宇宙に平和をもたらした。
偉大なる男の噺を」
まぁ、要するにキリトの話だ。
「あるところに悪い魔法使いがいました」
あのクソメガネなんて悪の魔法使いで十分だ。
「その魔法使いは優秀な使い魔を作るために、禁忌を犯しました」
プロジェクト・アリシゼーション…ヒトの神秘を犯す外法の業…
「その禁忌とは、赤子の魂を箱庭に閉じ込める事でした」
アーキタイプ…全ての人間のコアプログラム…
「その箱庭は一つの宇宙でした」
カルディナ…アドミナ…それを包む大宇宙…
「しかしある時、とある少年が箱庭の中に入ってしまったのです……
そして少女は魔女に言いました
『私はあなた方に向けて差し出す右手は持っています。
しかし、地に突く膝と、平伏する額は持っていない。
何故なら私は、人間だからです』と…」
「ねぇねぇ!その後その子はどうなったの!」
「彼女は悪い魔法使いを改心させたんだ。
悪い魔法使いは彼女を解放して、自由に生きるように言った。
そして彼女は自由の身になった。
だけど彼女は再び箱庭に戻っていった…」
「どうして?」
「箱庭は偽物だ。だけど、そこに住まう人々は本物だった。
魔女を改心させ、自由になった彼女は、
自分が好きだった人々を守るため、箱庭に戻ったんだ」
「それでそれで!」
「彼女は星王と星王妃を支え、共に歩み、その生を全うした…
おしまい…」
あー、長かった。
所々はしょったけど長かった…
俺を登場させずに語るのは苦労したが…まぁ概ねこんな感じか。
コレ本にしたら売れるんじゃね?
さて…結構な時間話してたな…
そろそろ帰るか…
にしてもあの二人をどうやり過ごすか…
「どうしたのザイン?」
「ああ、そろそろ帰らないと」
「やだ!」
「やだってあーたねぇ…」
「ヤダよ…一人にしないでよ…」
あ…泣かないで…泣かれたらオジサンこまっちゃう…
「また来るから、ね?」
あやすように言ってみる。
「やだやだやだ!」
「いや、帰らないと心配されるし…」
「かえっちゃうの?」
「うん、でもまた来るよ」
「かえっちゃうんでしょう?」
「大丈夫、また来るって」
「じゃぁ…アナタヲコロセバズットイッショニイラレルネ…」
え?
「キュッとして…」
ナニカが…大切なナニカが握られる感触…
これは…フランドールの能力…?
マズイ!
「ドカーン!」
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