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夢幻水滸伝

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第四十五話 神戸の大工その十

「そうしてや」
「銀も金も手に入れてるか」
「そういうことや、強盗とか殺人とかしてた連中や」
「そうした扱いしてもやな」
「ええやろ、さぼったら容赦なくや」
 見れば監視役の者が鞭ではなく雷が流れる棒で打ち据えている、あらゆる種族の者達がそうして打たれつつ働かされている。
「ああなる、それで十時間な」
「一日の半分近くか」
「働かせてるんや」
「重罪人には容赦せんな」
「どの勢力でもそや、特に太宰はそうした奴に厳しい」
「それでやな」
「徹底的に働かせてるんや」
 そうしているというののだ。
「それでや」
「ここでもやな」
「銀がよおさん採れるんや」
「そういうことやな」
「まあ所詮極悪人共や」
 この銀山で重労働を強制されている者達はというのだ。
「何してもええわ」
「犯した罪に相応しい報いを受けさせるんやな」
「十倍のな、例えばこいつや」
 如何にも柄の悪そうな十代の人間の男を指差して言った芥川だった。
「いじめで人を自殺未遂にまで追い込んだ」
「ほお、そんな奴か」
「それでここに放り込まれたんや」
「それでやな」
「文字通り死ぬまで働かせられるんや」
「刑期は無期か」
「くたばったら魂ごと潰されて地獄送りや」
 そうした処罰が決まっているというのだ。
「もうこっから絶対に出られん」
「自業自得やな」
「いじめでそこまでした奴が報い受けんとかな」
 それこそと言う芥川だった。
「世の中おかしいやろ」
「それはその通りや、そんな屑はな」
「こうしてや」
「徹底的に報いを受けさせるんやな」
「関西でもそや、これがロシアやインドやとや」
 女帝、雷帝が治めるこうした国々はというと。
「こんなもんやないで」
「シベリアとかそうした場所でやな」
「飯も碌に与えられへんで一日十六時間労働や」
「ここはまだ飯を食ってるか」
「そや、しかしや」
 それでもというのだ。
「ロシアやインドはちゃう、他には最前線で人間の盾にしたりあらゆる死にそうな仕事に放り込んでいく」
「ここよりもきついとこにやな」
「ずっとな、ここはまだましや」
 関西はというのだ。
「例え死ぬまでこき使ってもな」
「そのこき使い方と場所が問題か」
「その通りや、太宰もあの女帝や雷帝程鬼やないからな」
 厳しいことは厳しいがというのだ。
「ずっとな、ほな今からな」
「そいつに会うか」
「そうするで」
 ここにいる星の者にというのだ、そうしてだった。
 そのいじめで人を自殺未遂まで追い込んだ屑にだ、芥川は声をかけた。見れば小柄で蛸坊主の様な顔をしている。眉は太めで目つきが異常に悪い。
「おい、屑」
「何ですか?」
「ここにおる星のモン何処や」
 こうその屑に問うた。
「今何処におる」
「発掘場の中にいます」
 屑は卑屈そのものの態度で芥川に答えた、芥川は屑に礼を言うと狐と共にその発掘場に向かった。その途中の道で狐は芥川に話した。
「あいつはな」
「わかったやろ」
「ああ、強いモンに弱くて弱い奴に強い」
「そういう奴でな」
「弱いものいじめが大好きでか」
「嘘は吐く、捏造した告げ口は強い奴に吹き込む、そんな奴でな」
 それでというのだ。 
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