真田十勇士
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巻ノ百三十 三日その十
「この流れでは今すぐにうって出るべきですぞ」
「それでは」
「はい、今からでも茶々様にお話しましょう」
「それがしも同じ考えです」
大野と同じく豊臣家譜代の木村も後藤達と同じ考えだった、それだけにその言葉は切実なものだった。
「修理殿、今からでも遅くありませぬ」
「茶々様にまた申し出てか」
「はい、攻めましょうぞ」
こう言うのだった。
「そうしましょうぞ」
「兄上、それがしからもお願いします」
「それがしもです」
治房と治胤も兄に言ってきた。
「うって出ましょう」
「是非共」
「それも今すぐに」
「茶々様にお許し頂いて」
「三日の間にですぞ」
幸村もここで口を開いた。
「幕府が仕掛けてくれば」
「大砲をですか」
「撃って来るやも知れませぬ」
「それでは」
「一刻も早くうって出ましょうぞ、もう用意は出来ております」
「どの方もうって出る用意は出来ていますか」
大野は諸将にあらためて尋ねた。
「それは」
「はい」
皆異口同音の返事をしてきた。
「それは、ですから」
「もう攻めましょうぞ」
「今が機です」
「三日と待たずにです」
「機を逃してはなりませぬ」
「絶対に」
「ここは」
「それでは」
大野は諸将に強く言われてそしてだった、彼等と共に再び茶々に申し出ることにした。だがその彼等が本丸のところに来た時にだ。
有楽が彼等のところに来てだ、笑って言ってきた。
「茶々様のところに行かれるのですか」
「左様ですが」
大野が有楽に答えた。
「それが何か」
「それは残念ですな、茶々様はもうお休みになられました」
「まだ夕食のすぐ後ですが」
茶々が寝る時間ではないとだ、大野は有楽に怪訝な顔で返した。
「もうですか」
「それがしがお勧めしまして」
したり顔でだ、有楽は大野に言った。
「そうして頂きました」
「それは何故」
「何故とは。お疲れに見えたので」
「だからですか」
「はい、お酒を多くお勧めして」
そうしてというのだ。
「休んで頂きました」
「しかしです」
大野は有楽に怪訝な顔のまま言った。
「我等はこれよりです」
「茶々様にですか」
「お話があります」
「いえ、ですが」
「茶々様はですか」
「もう休まれています」
やはりしたり顔で言う有楽だった。
「ですから」
「お会い出来ぬと」
「はい、右大臣様は起きられていますが」
秀頼はというのだ。
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