NEIGHBOR EATER
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EATING 9
あれから…大規模侵攻から一月が経った。
ボーダーはそのオーバーテクノロジーで街の復興を進めていた。
既にガレキの八割は撤去されている。
更にベースキャンプを市中心に移し拠点を建設中…
まるで魔法だ…いや…図書室の本にあったな…『十分に発達した科学は魔法と見分けが付かない』……
いや、違うか。ボーダーのやってる事は広義の魔法と言えなくもない…
この一月、迅や小波、林道さんにボーダー、ネイバー、トリガーに関する様々な事を教えて貰った。
玄界(ミデン)と近界(ネイバーフッド)の関係性。
トリオンとは何であるか。
トリガーとは如何なる物か。
トリオンを操作する技術は地球にも存在するらしい。
しかしその操作技術は、地球では俗にオカルトと呼ばれる。
つまりトリオンとは『魔力』とか『マナ』とか『気』と呼ばれる物…らしい。
でだ…クズな育て親はネイバーにバッサリ殺られてくれていたので俺は今既に五割できているボーダーの拠点に部屋を貰っているのだが…
「なにこれ?」
「天使ちゃんのトリガーの考察」
訪ねてきた迅に渡された紙、そこには俺のトリガーに関する事柄が書いてあった。
『<ネイバーイーター>清輝翼が所有するブラックトリガーに関する考察。
以後、清輝翼の所有するブラックトリガーを<死与の天翼(フリューゲル)>と呼称する。
死与の天翼
来歴
清輝翼の証言から捕獲用ネイバーに捕獲された何者かが残したと思われるブラックトリガー。
能力
使用者に飛翔能力とトリオン操作能力を与える物と推測される。
しかし飛翔能力、トリオン操作能力共に強引な物であり莫大なトリオンを必要とされる。
なお起動その物も莫大なトリオンを必要とすると思われる。
外見
使用者には翼と光輪が現れ、頭髪が変色する。
しかし飛翔中に翼が動く事はない。
また光輪の効果は不明。
備考
所有者である清輝翼と完全に同化している為、詳細は不明である。
また所有者である清輝翼の頭髪及び翼からは常にトリオンが放出されているがそれが死与の天翼によるものかネイバーイーターによるものかは不明。
界境防衛機関技術開発部』
いや…だからさ…
「この『ネイバーイーター』ってなに?」
「カッコいいだろ?俺と林道さんで考えたんだ」
「厨二病?」
「いやいや、まだマシな方だよ途中で入ってきた他のメンバーが考えたのはほとんどネタだったしな」
あ、そうなのか…
「ていうかこのフリューゲルって何?」
「flugel…ドイツ語で翼を意味する単語さ」
「ていうか…これだけ?コレだけなら俺だってわかってるよ」
て言うか大規模侵攻の時の事しか書かれてない。
「ブラックトリガーの事がわかるかもって思ったのに」
調べたのは4日前だ、先に完成した技術開発室で諸々調べたのだ。
「死与の天翼を詳しく調べるのは不可能なんだから仕方がないだろう」
それは聞いたけどさ…
「俺からブラックトリガー……フリューゲルを抜いたら死ぬって本当なの?」
「ああ、その可能性は高い。しかも仮に天使ちゃんから死与の天翼を抜き出せても他の隊員じゃぁ起動できないらしい」
「『起動その物も莫大なトリオンを必要とすると思われる』ねぇ………」
要するに…
「<ネイバーイーター>にしか使えないだって?
俺がフリューゲルを呑んだ時は体が吹っ飛ぶと思うくらいだったけどな」
あれは…フリューゲルによって喰らったトリオン器官が活性化ないし暴走したと思ったのだが…
「確かにブラックトリガーは使用者のトリオン能力を劇的に上昇させる」
へぇ…
「『上昇させる』?言い切ったね…ボーダーには他にブラックトリガーが有るの?」
迅はしまったと言わんばかりに顔をしかめた。
「マズイ事聞いたか?」
「いや…構わない。近々こちらに移動される…
大規模侵攻には投入されなかったが確かにボーダーはフリューゲル以外のブラックトリガーを所有している」
「ふぅん…何で大規模侵攻には投入されなかったの?」
「ブラックトリガーは…ネイバーフッドでは基本的に重要拠点の防衛に使われる。
ボーダーもそれに倣っているのさ」
そう話したら迅はつらそうにしていた。
そのブラックトリガーはボーダー隊員の誰かが遺した物なのだろう
「そう…」
「話を戻すが…ブラックトリガーがトリオン能力を上昇させるのは起動中のみだ。
もちろん起動する為にもトリオンは使われるんだ。
ボーダーが所有するブラックトリガーはその能力も強力だが起動トリオンも大きい。
サンプルが一つしかないが…おそらく死与の天翼もそうだろう」
そうか…それにしても…
「『強引な物であり莫大なトリオンを必要とする』…そんな事ないしな…
しかも翼は飛ぶ為だけじゃないのに…」
「なに?」
あれ?
「トリオンは周りから集めたりも出来るよ。
あと翼は何て言うか…世界と繋がる為の物なんだ。
言ってなかったっけ?」
「初耳なんだけど…」
あ、そっか。俺が自分で調べたのって三日前じゃん。
「なんていうかね…うん…こう…空間にもトリオンが有るんだ」
「マジで!?」
「それを集める事も出来るよ、でも今はだめ。
基地のトリオンを使っちゃうから」
「あ、あぁ…そうだね天使ちゃん」
「あと地球その物にもトリオンがある。
そっちのトリオンを汲み取る時に翼を使うんだ。」
俺は空間からではなく…地下からトリオンを吸い上げる。
「ほらね?」
俺の純白である筈の翼に電子基盤のような幾何学的な線が浮かび上がる。
吸い上げたトリオンは鳥の形にして飛ばした。
「すごいな…どれくらい制御できるんだ?」
制御ねぇ…
「試した事無いからわかんない…ああ、でも」
飛んでいる鳥を魚に変えて泳がせる。
「コレくらいはできるよ。」
「ふぅん……あ、あと今から新生ボーダー第一期入隊者の面接有るから天使ちゃんも来てね」
「ん、わかっ………は?」
今コイツなんて言った?
「いや、天使ちゃんに面接官をやれって訳じゃない。
マジックミラーの中から見るだけさ」
いや、そうじゃなくて
「俺がそれをやる理由は?」
「んー?林道さんが言い出したとしか聞いてないからな…」
あんのメガネオヤジ…
「まぁ…別にいいけどね」
だって暇だし。
「この髪と羽のせいで気軽に外に出られやしない」
オミテッドトリガーは許可が降りないし…
「開発室で天使ちゃん専用トリガーを開発中だから我慢してくれ」
「はいはい」
俺は気だるげに返事をして件の面接室へ向かった。
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