豆狸
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第四章
「それでもいいの」
「大学は合格したし」
「それでも未成年よ」
そこを言うのだった、あくまで。
「それでもなの」
「ええ、内緒でね」
「飲んでいいの」
「まあこうした時は」
「それじゃあ」
「私もいいのね」
今度はちるが言ってきた。
「中学三年でも」
「高校合格したでしょ」
「ええ、それはね」
市内の公立の進学校に合格が決まっている、実はちるは成績優秀なのだ。蒔絵も市立大学に合格して進学が決定している。
「そうだけれど」
「それじゃあね」
「合格祝いで?」
「内緒よ。煙草やシンナーや麻薬は絶対に駄目だけれど」
「後の二つしたら人間として終わるから」
「絶対にしないわよ」
シンナー、麻薬についてはだ。蒔絵もちるも全否定だった。
「あんなのは」
「自殺と同じだから」
「けれどお酒はね」
こちらはと言うあやめだった。
「まあ多少位ならね、お母さんも好きだし」
「そういえば結構飲んでたわね」
「そうよね」
二人は三人で暮らしていた頃のことを思い出した、大人しく優しいあやめだが実は結構な酒飲みなのだ。
「ウイスキーをストレートで一本とか」
「普通に空けるし」
「それが限界だけれどね」
こう返したあやめだった。
「お母さんも」
「それだけ飲めれば充分なんじゃ」
「そうよね」
姉妹はウイスキーのアルコール度から話した。
「ウイスキーボトル一本空けるとか」
「凄いと思うわ」
「お母さんも飲むつもりだし」
三樹夫と話す時はというのだ。
「だから貴女達もね」
「義兄さんとお話する時は」
「飲めっていうの」
「ビールでいい?」
あやめが二人に進める酒はこちらだった。
「それで」
「ええ、じゃあ」
「内緒でね」
二人も頷いてだ、そしてだった。
三人はウイスキーやビールも買ってだった、そのうえで。
三樹夫の帰宅を待った、三樹夫はこの日は九時と三人が来てからの彼にしては早く帰ったがその彼にだ。
あやめはいつもの様子でこう声をかけた。
「お酒あるけれど」
「お酒?」
酒と聞いてだ、即座にだった。
三樹夫は動きを止めてだ、あやめに問い返した。
「お酒ですか」
「近所のお酒屋さんで買ったけれど」
「あの狸のですか」
三樹夫もこのことは知っていたので思わず言った、
「あそこのお酒を」
「日本酒をね」
「飲んでいいですか?」
三樹夫はぐい、と前に出てあやめに尋ねた。
「これから」
「ええ、それじゃあ出すわね」
「はい、肴は」
「梅干しがあるけれど」
こちらは実はあやめも考えておらず冷蔵庫にあったものを適当に話に出したのだ。
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